守田です(20240725 12:00)
● 三田茂医師講演を動画をご覧下さい
岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの3回目をお届けします。まずは動画をご紹介します。
今回は37分18秒から56分37秒までを掲載します。
なお今回の部分は、三田さんが『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』(京都「被爆二世・三世の会」作成)を手に読み解きを行って下さっていますので、これが手元にあった方が理解しやすいです。以下から入手できます。
『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』
ダウンロード申し込みフォーム
https://forms.gle/UdeTXoGjschrT7cN9
冊子版申し込みフォーム
https://forms.gle/24hHZXjvKUbhfTzf9
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三田茂医師講演 「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性、共通性ー被爆・被曝の新しい理解・病悩の解決の可能性 全文文字起こし その3
◯読み解き『被爆二世三世健康調査アンケート結果報告書』
それで、本日のメインイベントになるかな。
『被爆二世三世健康調査アンケート結果報告書』。みなさん、お持ちですよね。ここを一緒に読み解いていきたいと思います。
まず4ページを見ていただこうかな。ブッ飛ばしますからついてきてくださいね。
4ページの真ん中あたり、3の①、この調査は大体102名の方の調査だとあります。ずいぶん数が多いようだけど、統計的なことまで言うのにはちょっと物足りないという感じでしょうか。
③ね。平均年齢は66歳、ですから、若い人ではなくてちょっと高齢の人たちの聞き取りだという事ですね。それではこの報告書なのですけれども、32ページまで前半が、アンケートをまとめて頂いたもの、だから「こういうことが書いてあるのではないか」というまとめ。
後半33ページからが、取りまとめのもとになった二世・三世のみなさんの、具体的な回答内容について書いてあります。ですから前半32ページまでを読みながら、ちょっと補足するような感じで33ページ以降も及んで行こうかなと思っています。大丈夫ですか?
9ページに行きます。①から⑳と書いてあります。これはこちらのアンケートをまとめる時に、二世の仲間たちの生の声を特徴毎にまとめた20項目を書いてくれているわけです。
医者として、医学的にどう思うかっていう事だけなんですけど、ちょっと僕は違う分類に行きたいなと思いますので、スライドを見てください。
三田分類と『能力減退症』について
まず「三田の分類」の①、これが「健康異常なし」。或いは「健康異常を自覚していない」。これが大体30パーセントぐらい。
それから②、「生下時の異常、奇形、明らかな遺伝病」、これが結構少ないなと思いました。二世の方ね。
③が「白血病を含むガン」。白血病は実は医学的に言うとガンでないので、白血病を含むガン、これも意外と少ないのだなと思いました。このアンケートの結果を見てということですからね、あくまでもね。
④、「医学的な病名のつく状態」。ですからここにいろいろ書いてあるんですけれども、病名がついている状態なんです。副鼻腔炎がどうです、気管支喘息がどうです、など。そういう状態。
これは平均年齢が66歳の人たちの聞き取りであるということを考えなきゃいけないですよね。小児の聞き取りではないということ。
病名が付くという事は、そんなに特殊なことが起こってないということです。その起き方には異常があるかもしれないですよ。変なふうに早く起きちゃったかもしれないし、数がすごく多いのかもしれないけれども、病名が付いていれば、だいたい治療が可能だっていう事です。治療で対応ができる。だからどういうふうに、今までのその学問というかな、知識で対応して病名を付けるか。付けられるものにはちゃんと病名を付けて治療にもっていきたいというのが僕の考えです。医者としての考えです。
最後に⑤、「医学的な診断名が付かない状態」。今までの診断学に乗って来ない。こういう状態がありますけれども、この報告書を見て、こういう状態が8~9割だと思う。だから困るんですよね。それで、これは医学的な病名ではないのですが「原爆ぶらぶら病」的な状態。それから体質が虚弱、あと過敏性が非常に高かったり、体調が悪かったりとしか言いようがない。そういうような状態が入ってきて、それはこのアンケートの8割、9割にあります。
僕は『新ヒバクシャ』を診てきて、二世の話ではないし、原爆の被爆者も実際に診察したことは1回もありませんし、チェルノブイリの人の診察もしたことがないのだけれど、『新ヒバクシャ』に関して、いろいろと調査をして研究をして『能力減退症』と言う名前が、適当な診断名だと思うわけです。
医学で認められていないです。医者は誰も使ってくれないけれども、能力が減退する症候群であるというこの『能力減退症』が、三田の言う診断名です。
さらに言うと、『放射能敏感症』という、こういう考えもいれていかないと、被曝した人たちの説明がつかない。一般の人たちと同じことのように説明がつかないと思うということです。
「健康障害を経験してこなかった人たち」について
5ページに戻ってください。「1」「健康障害を経験してこなかった人たち」というのね。これが①ですね。
健康異常がない人たちが31.3%あったと書いてあります。前回2015年の調査も見させてもらったのですが、この時にこの①の人は60%ぐらいいたのです。それで「聞き方なんかにもうちょっと工夫が必要なのではないか」という事を言って、今回すごく工夫してくれて、半分に減ったのですよね。ここにも「もうちょっとこうした方が良いのではないか」という反省まで書いてあるから、これを進めて行くと、実は健康に異常のない人って、あまりいないのではないかとも思う。それが一つですね。
「1」体が弱く、疲れやすく、さまざまなトラブルに見舞われてきた
今度10ぺージに行って下さい。10ページ、「1」。一番上ですね。
「体が弱く、疲れやすく、さまざまなトラブルに見舞われてきた」。一行飛ばして、「体が弱く疲れやすく、怪我や風邪などにかかりやすかった」。その次の行、「治りにくかった」というね。これは⑤ですね。僕は典型的な『能力減退症』の訴えで、よろしいのではないかと思います。
「2」疲れて寝ることが多かった、休んでいたことが多かった
それから、次「2」、「疲れて寝ることが多かった、休んでいたことが多かった」。
一行飛ばして「子どものころ保育園に通ったのは半年ぐらい、残りは休んでいた」。次の行。「家で弟3歳年下と枕を並べて寝ていることが多かった」。3行飛ばして「今でも、すごく寝る。忙しくて睡眠を削るとたちまち倒れる」。こういう、「睡眠を削って倒れる」というのは、もう『能力減退症』で僕が言ってきたこととまるっきり同じです。
「風邪ばかりで年中寝込み、疲れやすく保険室にしょっちゅう行っていた」。一行飛ばした下の行。「他の子よりも疲れやすく横になって休むことが多かった」。
一行飛ばして「学校から帰るなり倒れこむように寝る」。この学校から帰るなり倒れこむように寝るっていうのも、311『新ヒバクシャ』の『能力減退症』の典型的な表現ですね。子どもが学校も辛いんです、具合の悪い子が。だけどなんとか学校から帰ってくるとランドセルも下すことが出来ずに、玄関で倒れるように寝てしまう。名前を呼んでも起きない。ようやっと起きてご飯が食べられても、お風呂に入れない。そういう訴えがすごく多かったので、「全く同じなんだろうな」ってね、思いました。
一番下から2行目の項、「とにかく、だるい、しんどいそれが普通だからと大事と捉えてなかった」。まあ、子どもの頃から具合が悪くて育ってくるとそんなもんだと思っちゃうのかな。
11ページ上。「疲れるととにかく寝てしまう。それも気を失ったように寝る」。その下、「根気が続かない」。これも僕は『能力減退症』というのものを考えるに至った訴えです。
大体患者さんと言うのは、言葉で表現する、それからジェスチャーで表現する時に、同じ病気はだいたい同じように言うものです。
例えば、胸が痛いと言った時にこうするのか、こうするのか、こうするのか(注、どこをどのようにさするのか)で、もう診断学としてそもそも想定する(病気の)順位が変わってきます。これが、人が違ってもだいたい生き物ってそうするものなのですよね。具合の悪さも言う事が大体似てくる。同じ具合の悪さが。具合の悪さが違ったら言う事が違う。だから、問診することでかなりいけると言うことです。
11ページの真ん中あたり。「こうした症状はストレスがたまると起きると言われている」。
1行おいて「急に身体のバランスが崩れたり、体調が悪くなったりする」。⑤的ですね。本当に⑤的。3行「2日ぐらい体を休めると治る、元気になる」。1日では治らないということですね。普通は疲れても1日休むと治るのだけれど、2日は休まないと治らない。その次の行の後半には「土日の休養だけでは回復しない」とある。この人は2日休んでも治らないということです。
こういう病名が付かない、だから「◯◯病だからあなたはどれくらい入院しないといけない」とかね、家で安静にしなければいけないという状態ではないのだけれど、ともかく治っていかないっていうのが⑤の特徴です。
一番下の段落にいくと「このような特有な疲れやすさ、こんこんと眠ってしまうことなどは、広島・長崎では「原爆ぶらぶら病」と呼ばれました」と。下から2行目。「『さぼりがち』と誤解され、理不尽なそしりを受けることもしばしばでした」。これも『能力減退症』と同じです。
「3」貧血が多く倒れることが多かった
12ページ、「3」。「貧血が多く倒れることが多く」、一番上ですね。
この貧血というのは医学的な貧血と多分違っていて、クラクラ来ちゃうことを言っているのだと思います、みなさんは。医学的な貧血とは違う。
3行目。「朝礼などで長時間もたず倒れた」。ここまで見ると、「あ、この人低血圧の人なのかな」、或いは「起立性調節障害」っていう、④ね、病名を付けるのかなって、そういう感じです。これだけだとね。
その次の「暑さ、直射日光、紫外線にとても弱い」。これを聞くともうピーンとくるのは広島の被爆者の聞き取りで、夏の畑の作業ができなくなったという訴えがすごく多いのですね。夏の太陽を浴びるとこう体が動かなくなるから畑ができない。面白いのは「麦わら帽子ではだめで、冬の帽子をかぶると楽なんだ」と言ってること。光が通っちゃうのではダメだっていうことを広島の被爆者の農民たちは言っていたのですよ。それを思い出しましたね。
その下に「熱中症にもなった」と言うけど、この熱中症と言うのは、ゴミ箱的に使われすぎていると僕は思ってます。真冬以外はみんな倒れれば熱中症ということになってしまうけど、昔は「日射病」とか「熱射病」とか「熱けいれん」とか分けていたのだけれども、なんか全部ひとまとめなのですよね。僕は、あとでまた出しますけど、熱中症ってこういう⑤的な状態がベースにあった時に起きやすいものではないかなと思っています。
だから、「熱中症」と言うと、いかにも④みたいなのだけど、もうそれだけではとても処理できないと思う。
「4」足の痛みや関節痛に襲われる、骨折などが多かった
上から3分の1ぐらいのところ、「4」、「足の痛みや関節痛」、1行飛ばして、「足が重くなってしまったりだるくなってしまったりで、泣いて過ごした」。次の行。「運動した日の夜は足が異常にだるくて泣いていた」。
まあ、ここまで行くとやっぱり異常ですよね。被爆(被曝)した後も、子どもが夜中に「足が痛い足が痛い」って大騒ぎして、大泣きして、もうどうしようもなく救急車呼んで、夜間救急に行って整形外科の先生に診てもらって、MRIまで撮ったけれど何も異常がなくって、泣きながら家に帰ったけど、朝になるともうけろっと笑って、走り回っているなんていうね。だから、「病気が無くて痛いだけ」というのは結構多かったです。311の時に。これも⑤だと思います。こういうふうに分類することによって、今後どういうふうに対応するかということが変わってくると思うということをお話しています。
「5」特に夏や冬、季節の変わり目に弱かった
13ページ、「5」。「特に夏や冬、季節の変わり目に弱かった」。
特に夏が辛い。2行目。「気温や湿度の変化など、周囲への変化への対応がしにくい」と書いてあります。⑤だと思います。これもあとでキーワードとして出します。
「ホメオスタシス」、「恒常性」とも言います。こういう外の変化に、そう簡単にやられるものではないのですね、生き物と言うのは。だけれども、ホメオスタシスの維持ができなくなってくると、こういう事に弱くなる。そのベースには、僕は後で説明する『能力減退症』のメカニズムが関係していると思います。
上から3分の1ぐらいのところかな、「夏と冬は」と書いてある行。
「夏と冬は子供のころから苦手で体があまり動かない。気のせいだと言われたが、自分を責めることがよくあった」。それから3行飛ばして「夏も辛いが、梅雨も辛い、人の何倍も疲れやすい」。1行飛ばして「急激に疲れが出て起き上がれなくなり、一週間ほど寝込む。心底疲れた感じ。トイレに四つん這いで吐きに行った」。
これを今日、もしもね、二世ではなくて、311の『新ヒバクシャ』の人が聞いてくれてたら、びっくりすると思う。「自分のことと同じじゃないか」と思うと思います。それくらい同じです、みんな。
この方多分39ページ29番さんだと思うけど、「お父さんに表情が冴えないと言われた」と。これもね、とても多い訴えです。
『新ヒバクシャ』の『能力減退症』にとても多い。「なんか顔が暗い、顔色が悪い、表情が乏しい」、こういうふうに言われたというのがね、とっても多い。でも⑤です。『能力減退症』だったのが、これは解決できると僕は思う。かなり高率に解決する。
1行飛ばして「夏の暑さ、日差しに弱い」。これはさっき言った広島の話と同じ。
次、『体調不良で、毎日の家事をするのが精一杯』。これもね、すごく特徴的な言い方です。『能力減退症』の特徴的な言い方。
さっき子どもが玄関で倒れて、ランドセルが下せないって言ったでしょう?お父さんは会社に行けなくなるのですよ、辛くて。他のみんなと仕事が一緒にできなくなる。お母さんたちは家事ができなくなる。だからゴミ屋敷になる。冗談じゃなくて本当にゴミ屋敷になる。
お母さんたちも働いている人が多いですけど、仕事から帰ってくるともう何もできない。だから、家事なんか一番後回しになるから、子どもの面倒をみるのがようやっとで、子どもにご飯を食べさせてお風呂に入れたら、自分はもうご飯は食べられない。お風呂にも入れない。家事なんかとてもじゃないけどできないと言うのが、これに似たような言い方ですね。これも⑤。これはね、治療で良くなります。
13ぺージの下から4行目。「雨の場合はきつかった」。次の行。「雨の前の午後から」と書いてありますね。
14ページ、2行目。「気圧の変化に敏感で、天候が崩れるとだるさや頭痛が起きる」。
『高感度体質者』について
これはね、僕は➃でいいのではないかと思うのです。誰にでも起きる症状ではないけれども、これもあとで、キーワードで出しますけれど、『高感度体質者』という捉え方をしないとこういうことは理解ができない。みんなに起きることだって言うと、「そんなこと起きるわけないだろう、頭がおかしいんじゃないか」と言われて終わりになるのです、こういう話と言うのは。
体質が高感度で、第六感的に優れている。なんか直感的にいろいろなことが分かってしまう敏感な人たちと言うのは、こういう事が起きやすいですね。
最近は「天気痛」とか、「天候病」とか言われて、ようやっと社会から認知され始めたような状態だと思う。どうしてこうなるかはよく分かっていないのですけれども。
「地震予知型頭痛」というのがあります。地震が分かってしまう。どっかで地震が起きる前の二日間ぐらい、もう頭が痛くて動けない。急に頭痛がとれて元気になったと思ったら地震警報が鳴ると言うね。そういう話はオカルトではなくてたくさんあります。患者さんからたくさん聞く。これは「そういう事があるのではないか」とこっちが疑っていれば患者さんが言ってくれる。多分、あえて聴かないでいると、そういうことは絶対言ってくれないと思いますけれど、そういうふうに言ってくれる。
「地震予知型頭痛」については、日本語論文もあります。英語論文もあります。人によっては「世界のどこかの火山が噴火する時に分かる」と言う人もいます。フィリピンで台風ができた時に、日本ではまだ風も吹いていないし雨も降っていなくても、とっても調子が悪くなると言う人もいます。これは気圧の大幅な変動ではなくて、微気圧変動と言って、遠くの台風の渦から伝わってくる気圧の本当に小さな変動によって、具合が悪くなるという事も、そういうふうに解釈され始めています。ですから、こういう第六感的に優れた人たちの事と言うのは、今後相当に解決していくのではないか。
それで➃。「天気痛」「天候病」は、まあ天気痛、天候病と言うのもちょっとゴミ箱的で、いろいろな状態が混ざっているので、みんな同じではないのですけど、かなり治療の方法はあります。かなり楽になると思います。ちゃんとやってあげればね。(56分37秒まで) 続く
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