明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1289)伊方原発を動かしてはならない幾つもの理由-下

2016年08月16日 02時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160816 02:00)

伊方原発を動かしてはならない理由の続きです。


5年4か月ぶりの再稼働を伝えるANNニュース

第七に懸念すべきことは、伊方原発が実に5年4カ月ぶりの再稼働を迎えていることです。
昨年夏に川内原発が再稼働するまで、世界で4年以上停まっていて再稼働した原発は14例しかありませんでしたが、そのすべてで大小の事故が起こりました。
なぜかというと、あらゆる機械は恒常的に動かしていてこそ正常に動くのであり、長く停めていると、可動部がくっついて動かなくなる「固着」などの現象が起こり、動きが悪くなってしまうからです。

しかも原発は大量の水が循環しており、一部は海水がまわっているため、腐食やさびなどが生じやすいのです。
しかし設備があまりに巨大なために、あらかじめすべての箇所を点検することができません。そのためこうした事故が起こりやすいのです。
この間の再稼働でも川内原発1号機で復水器のトラブルが起こりました。高浜原発4号機は、送電開始とともにアラームがなり原子炉が緊急停止してしまいました。

なお以下の記事では触れていませんが、こうした長く停まっていた原発のトラブルは機械的要因だけはでなく、運転手や保守点検員などの技術者の能力の低下にも直結します。
このため事前の点検にミスが出やすかったり、さまざまな数値の入力の誤りなども生じやすい。4号機もそれで停まったのだと思われますが、原発の場合、こうしたミスが大事故に直結することもあるだけに深刻です。

 明日に向けて(1127)再稼働した川内原発でさっそくトラブル発生!ただちに運転を中止すべきだ! 2015年8月22日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/649eafab984d8f08dcb08954f246de2f

第八に、加圧水型原発である伊方原発は致命的な欠陥を抱えた蒸気発生器という大きな部品を持っていることです。
蒸気発生器は、炉内を約150気圧300度の高温で周っている一次冷却水と細管で接して二次系に熱を送り、タービンを回す蒸気を発生させる機器です。
この細管が高圧高温のために損傷しやすく、すぐにピンホールが空いてしまい、美浜原発では配管がギロチン破断して冷却水が飛び出すと言う深刻な事故が引き起こされました。冷却材喪失でメルトダウンに発展する直前まで事故が進みました。

このため三菱重工は蒸気発生器を交換しながら原発を運転してきましたが、2007年と翌年にアメリカのサンオノフレ原発に蒸気発生器を輸出して交換したものの、すぐに深刻な事故が起きて原発が停まってしまいました。
その後、アメリカの原子力規制庁が査察に入り、「修理不可能」と判断。なんとサンオノフレ原発は廃炉になってしまったのです。
技術的にはこれと同じ時に作られた蒸気発生器を三菱重工は使っていますが、なんと川内原発2号機はこの部品を運び込み、取り替えの認可も得ていたにも関わらず、交換をしないで再稼働してしまいました。

どう考えてもサンオノフレ原発の事故で、同じ時期の技術で作られている最新型が怖くなって、交換をせずに再稼働したとしか考えられないのですが、しかしなぜ交換しようと思ったのかと言えばもともとの部品に自信が持てなくなったからです。
このため川内原発は1号機は最新型を付けているから危険で、2号機は旧型を付けれているから危険なのです。交換しようがしまいが、蒸気発生器の欠陥から自由ではないのが加圧水型原発なのです。
伊方原発もこれと変わらない部品を使っており、その面でも極めて危険です。

 明日に向けて(1166)川内原発2号機の再稼働はあまりに危険!みんなで食い止めよう! 2015年10月8日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/4b723d9972dd00d65f24baa1e200ebab

第九に、7月に起きた1次冷却水の循環のためのポンプの故障事故もまた、この原発の構造的欠陥としてあると思われることです。
なぜなら同様の故障事故が2005年に美浜原発1号機で起こっており、実は2003年に同じ伊方原発3号機でも起こっていることです。
あるいは川内原発1号機では2008年に同じ個所で、一次冷却水を循環させるためのモーターに取り付けられたプロペラの主軸が折れてしまう事故も起こっています。

しかも今回、伊方原発3号機は、直前にこのポンプを新品に交換して再稼働へとのぞみつつあったのでした。
にもかかわらず事故がおきて再稼働スケジュールが一月近くも伸びたことからもこの部分に構造的欠陥があることがうかがわれます。
150気圧300度の高圧高温の熱湯がまわっているだけに大変危険です。

 明日に向けて(1282)伊方原発3号機ポンプ故障事故は大問題!再稼働を断念すべきだ!上 2016年7月24日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/643579af330808d6be892623cd6ed94b

 明日に向けて(1283)伊方原発3号機ポンプ故障事故は大問題!再稼働を断念すべきだ!下 2016年7月24日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9a7954d2d3903adade7e5affa003fb26

細かくはもっと指摘できることもありますが、ともあれこれらからだけでも伊方原発が即刻再稼働を止めるべき理由は明らかです。
今からでもけして遅くありません。
伊方3号機は運転を中止せよ!の声を各地で高めていきましょう!

終わり

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守田敏也 MORITA Toshiya
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[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4


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