明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2450)高感度体質者、能力減退症、全国の被曝に着目を ―三田茂医師講演・「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性 全文文字起こしその7

2024年08月20日 22時00分00秒 | 明日に向けて(2401~2600)

守田です(20240820 22:00)

三田茂医師講演を動画をご覧下さい

続いて岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの7回目、最終回をお届けします。

今回も動画をご紹介しておきます。以下の画像をクリックして下さい。

三田茂医師講演 「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性、共通性ー被爆・被曝の新しい理解・病悩の解決の可能性

ここでは1時間53分57秒から 以下文字起こしを貼り付けます。

*****

◯「高感度体質者」における「放射能敏感症」について

さらにですね、これ去年の暮れの医学会なのだけれど、一番最近の医学会で、アンケート「あなたの体質について教えてください」という、こういう研究をしました。

どうも、患者さんたちを見ていて311で被曝して具合が悪くなった人たちって、なんかちょっと違うのですよね、平気だって言っている人と。虚弱だったのではないか。子どもの時に虚弱とか特異体質と言われたのではないか。化学物質過敏症を持っているか。電磁波過敏はどうか。発達障害という診断を受けている、或いは自分でそう思っている。それからさっきのHSP=Highly Sensitive Person、とても敏感な人。例えば洋服なんかもちくちくして着られなくて嫌だとか、それから匂いがきついともう食べられないとか、そういうような人ではないとか、そういうアンケートを取っています。

その結果、ここも動画にしてあるので興味があったら見てみてください。https://youtu.be/FEhmZEJbI2o?si=CzKx0xPI1YcfUHgt これがキーワードなのだけれど。「『高感度体質者』における『放射能敏感症』」という、こういう理解が必要だろうという事で、これも提唱しました。こんなの当たり前と言えば当たり前の事なんですけれども、認識しないと治療に結びつかないというふうに考えたわけです。



高感度の体質の人っていう、だから、並みの、普通の人とは違ってとっても敏感で、優秀で洞察力が高くて、と言うような人がやっぱり色々感じてしまうのですよね。『放射能敏感症』と言うのは、「生物学的な感作」というのが関係していると思います。 

 

「感作」というのはちょっと大事な言葉、感作というのは、医学的な感作と言うのはアレルギーですね、主に言われるのは。タンパク質、例えばスギ花粉のタンパク質、それから蜂の毒のタンパク質、こういうものに1回浴びた時は良くても、身体が覚えてしまう。だから、2回3回目と、どんどんどんどん反応が強くなっていく、というのを医学的感作というのです。

「生物学的感作」というのは、そこまで厳密な定義ではなくて「末梢的感作」「中枢的感作」と、末梢性・中枢性というのだけど、いろんな刺激を受け続けていると、どんどんこう感じが敏感になっていく。それで、感じて敏感になって具合が悪くなっていく事を繰り返していると、どんどん具合が悪くなる。こういう事の組み合わせで、感作によって放射能に敏感な状態と言うのを作ったのではないかとそういう事です。

「鼻血が沢山出た」。「いや、そんなの出るわけない」、こういう議論というのはお粗末だけれど、そういうのがありました。さっきも言ったように、総理大臣がそれで漫画家を攻撃しましたね、すごい攻撃しました。
敏感症と言うのは鼻血やなんかで感作によるものだと思ったのは、311のあと、3月12日に爆発し始めて沢山プルームが飛んで、もう関東には3月15日にプルームが飛んできて、塵が飛んできた事が分かっている。21日に海から入ったのが東の方に雨で落ちたのが分かってる。じゃあ、その時に鼻血が出たのかって言うと実は殆ど出てないですよ、みんな。


よく聞いてみると5月6月7月なのです、みんな出始めたのが。だからこれは感作したとしか言いようがないと僕は思う。だから、1回目の曝露の時に、調子悪い人はいますよ。そりゃあ敏感な人なんか、すごい調子が悪かった。色が見えたとか、匂いがしたとか、変な味がしたとか。沢山います、そういう人は。


実は広島の肥田先生の聞き取りでも、色が見えている人がいます、広島でも。エノラゲイの乗組員は、爆弾を落として後ろの方で光った瞬間に、みんなが「鉛の味がした」と言っています。飛んできてないですよ、物質なんか。その瞬間にですから。ですから、敏感な人によっては、いろんな事を感じるのだけれども、「感作するから鼻血が出た」と考えるべきかな。そうすると感作して敏感になった子は、東京から岡山へ避難したわけですけど、東京からおじいちゃん、おばあちゃんが会いに来る、そうすると鼻血が出る。東京から荷物が届く、宅急便が届く、鼻血が出る。こういう事が起きてしまう。

僕も2010何年かな、2016年か2017年かな。実は東京から荷物を、あまりそのように来てほしくないと最初は思ったけれど、東京からスーツを着て、ガラガラ荷物を引っ張って、患者さんが来て、1時間ほどいろんな話をして、終わるかなと思った時に、鼻の奥に激痛が走って鼻血が出て僕は3日間止まらなかった。それで、「あっ、これが患者さんたちの言っている鼻血なんだな」と思いました。
あの頃、僕はとっても敏感だったから、ホームセンターとかスーパーに行っても、とっても具合悪くなりました。特に農薬やなんかの近くに行くと、もう視野は狭まってくるし、ドキドキしちゃってダメだった。今はずいぶん良くなりましたね。だからこう思うにいたりました。


◯「DNAの切断」だけでは被曝の実相に迫り切れない 『能力減退症』という捉え方が必要


長崎大学、「長崎原爆被爆者の病理標本におけるプルトニウムアルファ粒子の軌跡」というのね。これが311の後なのかな、こういうのがね、公開されたのです。これは長崎の原爆で亡くなった方の病理標本です。



プレパラート作る前のブロックと言うのがとってあるのですね、小さいサイコロみたいなやつ、組織がとってあって、そこから新しく切り出して、これが膀胱か、前立腺、肝臓、骨、こっちが肺かな、そのプレパラートを作って特殊な方法で撮影したら、ここにちょっと線が出ているのが見えますか?ちょっと後ろの方、見えにくいかもしれないけれど、小さなひげみたい線が沢山あって、これがその何十年も経った新しく作った標本を撮影した時に、放射線が写ったのです。

だから、いろんな臓器に取り込まれた、多分プルトニウムからアルファ線が出ました、とそういうスライドです。ここからこう出て、この黒いツブツブがあるでしょう?これが細胞の核なのです。肝細胞の核。こういうその核の近くをこれがピュッと通るから、だからこのDNAを距離が短いけれど通るので、DNAを分断しちゃうよって、こういう理論と言うのは非常に有名で、みなさんもよく知っているし、何かと言うとこの話が出てきて、ここで終わりになってしまうのですけれど。


それで理解をする時に、どうしてもこういう研究レベルの話って、分子レベル、DNAを損傷するから発がんするんだというところで、話が一回終わっちゃうので、そこから先がないじゃないですか。僕はやっぱり細胞組織器官、全身で見た時に、機能的なネットワークですね、身体ってものすごく複雑なネットワークで動いているから、そういう事で言えば、ホメオスタシスなのですけれど、それが障害された時の『能力減退症』というのが、死んでしまうほどの被曝ではないような被曝を受けた人、それからその二世三世、そういう時に問題になっているのだろうと思う。

ですから、ここ(分子レベル)の話だけ、幾らしてても、研究としてはいいかもしれないけれど、僕たちの、みなさんの生活がよくなるという事に結びつきにくいのですよね。それで、この高線量被曝の問題としてこのDNAの損傷って出てくるけれども、どうもそれじゃ説明できないので、「ゲノムの不安定性」と言う言葉とか「ベトカウ理論」とか、「バイスタンダー効果」とか、「ミトコンドリアの機能関連」とか、こういう考えを付け加えるのだけれども、全然これではすっきりいかないわけですよね、一般の人は。だからどうしても「DNA、DNA」といってしまう。

ゲノムの不安定性というのは、エピジェネティクスというものだろうというのが、最近の遺伝的な研究を調べて見ると、もうメインですね。8~9割がこれだと思うのです。この話を知らないで述べてもダメだし、でもこの話を知っていても、こっち(全身レベル)はまたちょっと、階層の違う話だと思うのです。

◯首都圏や西日本の深刻な被曝と向き合い、被曝隠しに対抗して調査を進め、みんなを被曝から守ろう

311の『新ヒバクシャ』というね、僕が言っていることですけれど、いろんな切り口があると思います。



一番多いのは、多数派は「福島を復興したい」と言っている人たちです。僕は無理だと思っています。

「まだそんなことを言っているの?関係ないよ」と言っている人たち。ともかく、テレビなんか見ていても東北へおいしいもの食べに行ったとか、そういう話が多いから、こういうのは大多数派。

福島の子どもたちって甲状腺がんが出ているって言うけど大丈夫なの?原発の作業員って大変なんじゃないの?東北の人大丈夫?もしかしたら北関東も危ないんじゃないの?って言うのが、僕はこれを「良心的少数派」って言いたいと思う。だから、数の上ではすごく少ない。それで一番被曝のことを心配している人たちっていうふうに思われていると思う。


僕と、理解してくれる人は、超超超少数派だと思います。『新ヒバクシャ』というのは、首都圏が深刻だと僕は言っている。福島の問題ではない。関東、首都圏の問題です。どっちかって言うと数の上でも重症度でも。全日本の問題でもある。 


最後に出しますけど、西日本も被曝しています。北半球、アメリカも相当被曝しています。あの直後もう西海岸の線量が上がったり、いろんなことが起きています。

さらに言うと我々の子孫、だから二世、僕たちの二世。もうあの311の二世は生まれていて、やっぱり『能力減退症』の人が多いから、だから今後の問題もね、こういう心配をする超超超少数派。

これが、冊子なんですけど、『子どもたちを放射能から守るために、わたしたちができること』というものがあります。



これは政府側・推進側の人ではないのです。これは少数的・良心的な少数派の人たちの作ったものです。「はかる、知る、くらす」。どういうところが危ないのか、どういう食べ物が危ないのか。食べ物が危ないものはどういうふうにやれば線量が下がって食べられるようになるのか。煮方がどうなのか。で、「そういうところで暮らしましょうよ」、という事を言っている。

これは推進側とかエートスという、これはフランス発でチェルノブイリの時に「どうやってそこにみんなを住まわせるか」という、それが文化であると平気で言う人がいて、まあそんなもんかなって思ってしまう人もいるのですけれど。こういうこと。

僕は「はかる、知る」って「もう分かっているでしょう」と思う。そんなところで暮らしてどうしようと思うのか。具合が悪くなるに決まっているのですよ。特に敏感な人から。気が付かなくたって、知らないところで身体を壊します。次の世代、その次の世代に対する責任を持てるのかという事だと思う。

これね、東京の問題でもあるので、これ、『FRIDAY』という雑誌が、今あるのか知らないけど、(注:今も発刊されています)2015年にこういうところの(空間)線量が高いよと、東京駅とか渋谷駅とか、それから成田とか羽田とか。あと池袋のサンシャインとか、フジテレビとかディズニーランドとか、東京ドーム、浅草寺、スカイツリー、まあこういうところも線量が高いよと、この時は書いていた週刊誌もありましたよね。まあ、こういう事です。こっちのほう。



これはさっきの高いところの江戸川の近くで、お花がこういう花のはずだったのが、こんなふうに、奇形と言えると僕は思うのだけれど、こういうのがすごく多かったです。これは三田撮影の写真です。



これが原子力規制委員会の出しているものです。毎月毎月出ています。急いでいきますね。原子力規制委員会のホームページから「月間降下物fallout」。1ヶ月どれぐらい降っているか。2024年1月、最近のものを持って来ました、調べて。



単位がちょっと聞いたこともないような単位なのですけれど、福島県はやっぱり高いです。これは、福島の原発の近くじゃなくて福島市です。ちょっと離れている福島市はやっぱりちょっと高い。

ここが北関東、南関東、これは全部省略しました。西日本は今ね、NDだから測定できないです。それで福島が9.3。その次に高いのはと見ると東京なのですよね。だから、距離的にはずいぶんあるのだけれど、東京が北関東よりも高い。

これは蛇口のお水。これも福島で出ている。この時は千葉とか神奈川には、ようやく出なくなりました。この1~2年で。ずーっと出ていました。福島は0.0005なんだけど、東京は0.0023。だから、福島の5倍ぐらい東京の水って汚染されているのですけれど、東京の水が一番汚いです、あの直後から。13年間単位は少ないけど、こういうものを飲んだり、そういうところで呼吸したり、生活したりするのは危ないだろうと僕は言っている。



「そんなの無理だよ」と言う人がいるのは知ってる。「だったら譲歩しますよ」と僕は言いたくない。僕のいう事を聞いてくれるなんて思っていないから、情報としてそういう事です。
これがね、さっき言った土壌の汚染と言うのがやっぱり、これ示しますよね。こういう事なのね。




これがドイツの気象省が出したプルームの流れですね。放射能の流れ。これは2011年の3月ではなくて、4月の6日のシミュレーションです。実測図じゃないけれども、西日本かなり汚染している。西日本は4月6日と4月18日に2回かなり汚染しています。実はこれはいろんな自治体が公表してます。直後には僕も見つけられなかったけれど、最近なんだかネットで検索していると出てくるようになりました。



だから、やっぱり西日本も被曝した。被爆二世の人も、もう1回被曝しているかもしれない。東日本に住んでいる人は注意しないといけない。やっぱり東日本に行く時は注意して欲しいと。まあ、そういう話ですみません。時間が過ぎましたけど、終わります。

あとちょっとだけ補足します。今日お見せしたように、あの政府とか公的機関とか、放影研とかね、そういうとこがやる研究と言うのは、もう目的があるのですね。
それに対抗する唯一のものなのではないでしょうか、これが。(注、『被爆二世三世健康調査アンケート結果報告書』を示しながら)。



とっても大事だと思う。これをやらないと結局、向こうの言いなりになることになる。もう文句もなかなか言えない、向こうのほうが取り繕いの専門家ですから、うまいところを突いてくるので。頑張ってやって下さい!(おわり)

注記:文字起こし・原稿編集 (注と見出し作成含む)を、守田敏也・柳田かや乃が担いました。

*****

今回の講演で、三田さんは『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』(京都「被爆二世・三世の会」作成)を手に読み解きを行って下さっています。これが手元にあった方が理解しやすいので、入手先を示しておきます。

『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』
ダウンロード申し込みフォーム
https://forms.gle/UdeTXoGjschrT7cN9

冊子版申し込みフォーム
https://forms.gle/24hHZXjvKUbhfTzf9


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