守田です(20190815 23:30)
本日は「敗戦記念日」です。この意義深い日に、ニューメキシコの核をめぐる旅の報告の最終章を書きたいと思います。 書きたいのは同州の南東部にあるWIPP(Waste Isolation Pilot Plant)=核廃棄物隔離試験施設についてです。
● WIPPとは何か
「核のゴミ」というと日本にいる私たちは原発だけを想像しがちですが、アメリカには核兵器にまつわる放射性廃棄物がたくさんあります。
その廃棄物処理の実験施設としてニューメキシコ南東部に建てられたのがWIPPです。1999年から操業しています。
ニューメキシコの旅の後半にここに見学に行ってきました。主に滞在していたアルバカーキから約450キロ、車で2日かけて往復してきました。
WIPPの入り口 ネットより
WIPPに持ち込まれているのは核兵器製造過程で出てきた核のゴミです。HPには「少量のプルトニウムやその他の人工放射性元素で汚染された衣類、道具、ぼろ、残留物、破片、土壌など」が扱われていると書かれています。
これらはTRU(TRans-Uranium=超ウラン元素)廃棄物とも言われます。元素番号92のウランより後に発見された人工放射能によって汚染されたものだからです。
WIPPはその中でも主にプルトニウムに汚染されたものを扱っていると述べていますが、この元素は半減期が2万4千年もあるので、非常に長い間、何万年も管理することが問われています。
ではどう処理しているのか。アメリカ政府が目を付けたのは地中にある岩塩層でした。地下2千フィートあまり、650mぐらいまで岩塩を掘り抜き、そこにたくさんの部屋を作って核廃棄物を運び込んでるのです。
WIPPの構内。どんどん岩塩を掘り続けている。webより
ここは2億5千年前に形成された岩塩層なのだそうでとても安定しており地下水との接触もない。しかも廃棄物を運びこんだのちは次第にゆっくりと岩塩が崩壊していって核廃棄物を永遠に包み込んでくれるというのです。
ここはまだ実験施設の名が付いていますが、これから世界中にこの方式が適用されていく可能性大です。実際、日本でもNUMOなどが地層処分を進めるためのシンポジウムを進めているので、ここは注目すべき施設です。
WIPPの構造図
● トラックで核廃棄物を「安全に輸送」と主張、しかし構内で深刻な火災・汚染事故を起こしている!
WIPPには全米各地にある核施設から出されたゴミがトラックに載せられてやってきます。全米22の州を通るそうです。
1999年以来、運び込まれた回数は本年(2019年)6月27日で12,500回目を迎えたとのこと。運ばれた廃棄物のコンテナは178,500個以上になるとされています。
WIPPは自分たちのドライバーが1490万マイルを安全に運行してきたと誇っています。
核廃棄物コンテナ運搬車 WIPPホームページより
全米の核兵器施設からWIPPに核廃棄物が集まってくる
しかしWIPPは2014年2月に相次いで火災事故を起こしているのです。 1回目は2月5日のことでした。構内で岩塩運搬車のエンジンから発火しタイヤ2本が燃える火災となり煙が蔓延したのです。
この時、煙を吸い込んだ作業員6人が病院に搬送されていますが、なんと消火対策が不備だったことが後に明らかになっています。
さらにこれにつぐ2月14日深夜により深刻な事故が起こりました。地下の貯蔵スペースに運び込まれたプルトニウム汚染物質が詰められたドラム缶が爆発し、燃えだして、地下を激しく汚染したのです。
火事を起こした岩塩運搬車 アメリカエネルギー省作成の図
このドラム缶はロスアラモス研究所で核廃棄物が詰められたものでしたが、1年以上の解析の結果、同研究所で詰められた「ネコ砂」が原因物質だということが分かりました。
ロスアラモスでは放射性の液体を吸着させる目的で従来からネコ砂が使われ、廃棄物とされてきたのですが、これまで無機物の砂を使っていたものの、ある時、有機物で作られた砂を使用したところ科学反応が起こったのでした。
しかも数十日間かけてゆっくりと進み、温度が上昇し、やがて爆発につながりました。深夜だったために地下に作業員はいませんでしたが、それでも21人が煙を吸って搬送されました、後に13人からプルトニウムとアメリシウム被曝が確認されています。
爆発し蓋が空いたドラム缶
続く
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