守田です(20211021 19:00)
● 「新しい資本主義」というまやかしを許さないために
総選挙に向けて資本主義をどう変えていくのかが一つの争点になっています。
岸田首相と自公与党は経済のあり方を「新しい資本主義」に変え、所得格差の拡大を是正して、中間層の所得を膨らませると言っています。しかしこれでは問題のはぐらかしにしかなりません。
新自由主義が作りだしてきたものは、格差拡大ばかりではありません。むしろあこぎな商売が横行してきたことこそ問題です。
なかでも新自由主義が強めてきたのは、投機的儲けを増やすことです。だから「カジノ資本主義」などとも呼ばれています。
でもそんなひどい商売が横行すると、市場が乱れ、恐慌などが起こります。だから1929年の世界恐慌のあと、さまざまな規制が作られたのですが、新自由主義それをどんどん解除してきました。「規制緩和」の名の下にです。
このもとでリーマンショックが起こり、世界経済が大打撃を受けました。その点で新自由主義の問題は、貧富の格差の拡大以上に、あこぎな商売が野放しにされている点にあります。
あらためなくてはならないのは、新自由主義の反道徳性、非人間性です。さしあたっては、解除されてきたさまざまな規制を戻さなくてはいけない。まっさきに多くの雇用を「正規雇用」に復活させることが必要です。
ただそれを進めれば良い社会になるのかというと、それだけでは足りない。
新自由主義のあまりの反道徳性を止めることが大事ですが、その上で、資本主義のもつ限界そのものの克服が目指されなければなりません。
● 投資と投機の違いに着目を
では新自由主義はどのようにあこぎなのか。この点を理解する近道は、「投資」と「投機」の違いを踏まえることです。
この点を分かりやすく解説した動画をご紹介します。
投資とは社会的事業のためにお金を投じること。たくさんのお金を集めて個人ではできない社会的に有用な事業を行うわけです。それで社会を潤ったら利益も得ていく。
これに対して投機は利ザヤだけを目的としています。株を買い、値が上がったらすぐに売って差額を儲けるのですが、この行為が横行すると、短期的に株価を上げることがだけが目指されるようになります。
事業の長期的展望など、顧みられなくなる。そもそも事業がどうなるかに関心などないのです。ただ利ザヤで儲けることだけが目的なのですから。
このような投機が強まるとひどい商売が横行します。リーマンショックのときには、本来元手がなくて住宅を買うことが出来ない人に資金が貸し付けられ、住宅が売られました。住宅の値が上り、ここに投資した会社の株価上昇が起きました。
しかしやがて住宅バブルが崩壊すると、もともと住宅を買う資金の無い人たちに売っていたので資金回収できずに崩壊が始まった。これが大きな連鎖を呼びました。なんやかんやとこのいかがわしい投資に多くの会社が連座していたからです。
要するに新自由主義はまもとな商売の中に博打を持ち込むようなもの。これを進める「投機屋」たちは、事業の崩壊が始まる前に株を売りぬいてもう違うところにいってしまう場合が多い。まっとうな商売が潰れて博打屋がのさばるのです。
このため新自由主義は、データ偽造なども不可避的に進めてしまいます。短期的に株価が上りさえすればいいからです。偽造が発覚し、会社の信用が落ちたときには、投機屋たちはもう株を売りぬいて違うところにいってしまっている。
だから新自由主義では嘘つきが幅をきかせ、正直者が退けられます。偽造、捏造が繰り返されていく。そう。あの安倍政権の下で行われたようにです。いやそもそも安倍政権のひどさも、新自由主義によるモラルの崩壊の中で深まったのです。
このあまりのあこぎさの取り締まり=規制強化に復帰しないと、新自由主義の名の下のひどい儲けは止められません。にもかかわらず、この点に岸田首相はまったく触れようとしない。それで「新しい資本主義」だなんてウソの繰り返しです。
● 新自由主義についてより深くつかもう
恩師・宇沢弘文先生ともに 2005年6月11日
新自由主義がどのようなものか、その創始者、ミルトン・フリードマンのひととなりにも色濃く表れています。
その点をわが恩師、宇沢弘文先生が説いた以下の動画もご覧下さい。(前回紹介したものです) これを観ても新自由主義の特性が良く分かります。
より進んで、新自由主義について学び、さらに資本主義の限界と社会的共通資本のアイデアについて学びたい方は、ぜひ全編をご覧下ください。
今回の選挙の過程で、新自由主義とは何か、さらに資本主義とは何かを、みんなできちんとつかんでいきましょう!
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