守田です(20191110 07:00 ニューメキシコ時間)
核の終わりを探る旅の報告の9回目です。
今回は「「放射性廃棄物をめぐるナショナル草の根サミット」でのプレゼン日本語元原稿の紹介の後半です。
すいませんがまた英文のままのスライドを添付します。(メルマガ配信の方はぜひブログでご覧ください)
こんな会場で話しました。60人ぐらいの参加だったかな。。。
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東京オリンピックと放射能汚染水問題 後半
2019年11月 守田敏也
● 東京オリンピック招致を利用して政府からお金を引き出した!
東電はその後、福島サイト内に立ち並んでいる汚染水タンクからの高濃度汚染水漏れなども発表しました。8月20日には汚染水を汲み上げたタンクから300トンも汚染水が漏れたことを発表。
しかもベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり8000万ベクレルと高濃度でしたから、300トンだと240兆ベクレルにもなりました。
しかしこのころはこうした情報が連日出され、聞いている側が麻痺して「高濃度」なのかも分からなくなっていました。東電がよくやる重大事実を人々に受け入れさせるテクニックなのでした。
そして9月8日にアテネでオリンピックの開催地を決める会議が行われました。東電はこれに向けて汚染水問題の「告白」を続け、政府を窮地に追い込んでいきました。
目的は安倍首相に世界に向けて「原発事故は統制されている」「汚染水はブロックさせている」「政府が責任をとる」などと言わせるためでした。
あのとき世界もまた東電が海に汚染水を何百トンも流していたと発表したことを見ていました。タンクからの漏れ出しのニュースも続き、「日本はどうなっているんだ」との懸念が広がっていました。
東電はこれもあらかじめ計算に入れていたのでしょう。選挙だけではなく、その後に東京オリンピック招致のために安倍首相がアテネに旅立つことも分かっていたのです。
東電はそれで世界中の人々の不安の高まりをも自社に有利になるように利用しました。
そして安倍首相は東電の狙った通りに「汚染水の影響は福島原発の港湾内〇・三平方キロメートル内で完全にブロックされている」「必ず責任を完全に果たす」と世界に公言してしまいました。
なんと東電は直後の9月9日に安倍発言の一部否定まで行いました。「完全にブロックされているとは言い難い」と言ってのけたのです。
大嘘をついた安倍首相との対比を際立たせ、あたかも東電が安倍首相より正直であるかのように見せるとともに、安倍首相を苦しい立場に追い込み、より一層、政府に東電をかばい、汚染実態を隠さざるをえなくするようにしむけたのでした。
● 政府のお金を引き出して壁を作ったが・・・
その後の対策はどうなったのでしょうか。政府のお金=私たちの税金を使って東電は海側に汚染水の流れを止める壁を作りました。完成は2015年10月26日でした。
東電はこの段階で1日290トンだった汚染水の海洋流出が10トンにまで減らせたと語りました。
しかしその発言は、東電が汚染水流出を「告白」した2013年夏から2年間の間、およそ300トンもの汚染水が毎日、垂れ流しにされていたということです。
しかも壁が閉合してからも毎日10トンは出ていると発表されていますが、壁の閉合の少し前で、放射性セシウムが1日当たり16億ベクレル、ストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質70億ベクレルが出続けた発表されているので、2年間の間にかなりの放射性物質が流れ続けていたことが推測されます。
汚染水漏れはずっと止まっていないのです。しかし東電は漏れた量をきちんと発表していない。実態を隠し続けています。
とくに問題なのは壁が閉合する前の測定でセシウムよりもストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が4倍以上も多かったのに、ストロンチウムの検査がほとんどなされていないことです。
水産物を主に測定しているのは水産庁ですが2017年度の検査でセシウムが測られた水産物が16929点だったことに対し、ストロンチウムは2011年4月から2019年2月まででわずか198点しか調べられていません。
年間平均で約25点にしかならないのです。まともに測っているとは言えません。
● 海を守るためもう意図的な放出を少しもさせてはいけない!
東電や一部の政府関係者はいま、福島のサイトにこれ以上汚染水を貯められないので、トリチウム以外を規制値まで取り除いたものを海に放出したいと言い出しています。
しかしここにも騙しのテクニックがあります。あたかもこれから初めて放射能汚染水を流すような口ぶりであることです。
しかしすでに東電は膨大な放射性物質を海に流してきたのです。またいまも流出が完全に止まったわけではないのです。
そもそも原発サイトの地下構造や地下水の流れ、海への漏れ出し地点などには不明な点も多く、海側の壁で本当に10トンまでとどまっているのかどうかもあやしいです。
これらから導かれる結論は以下です。
- さんざん海を汚してきた東電を罰しなければなりません。また当然にももうこれ以上の意図的な放出を認めてはなりません。福島のサイトに汚染水タンクを置く場所がないというのであれば、タンカーで受けて、柏崎刈羽原発サイトなどに持ち込めば良いです。
- 東電が隠してきた汚染実態を把握するため、セシウムと同じくらいのストロンチウム検査を行い、発表すべきです。
- 自社の損得ばかり考え、当初は汚染水問題をないものとしてきた東電に代えて、もっとまともな廃炉プロジェクトを立ち上げるべきです。
以上の点を訴え続けましょう!
「スピーチの最後にこの言葉を送ります。Solidarity(連帯)!」と締めたらウワッと歓声を上げてもらえました!
これでニューメキシコでのプレゼン報告を終わります。
旅を続けます。
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