守田です(20211007 23:30)
● 原爆と原発の関係性について語り合いました
森川さんと守田のもりもり対談の2回目ができましたのでお届けします。
今回は原発がもともと原爆製造装置から生まれてきたことについて話し合いました。
原爆と原発の基礎が分かります!まずは動画をご覧下さい。
ここで話されたことを2回にわたって書きだします。
前半は「ウランの核分裂と原爆製造」と「プルトニウム原爆の製造」。
後半は「原子力潜水艦から始まった核発電」と「核燃料再処理の意味するもの」です。
広島・長崎原爆のレプリカ ニューメキシコ州ニュークリア博物館にて 守田撮影
● ウランの核分裂と原爆製造
もともと「原子力」はウランが核分裂することが発見されたことから始まります。
中性子が当たると核分裂するとともに、新たに中性子が飛び出して核分裂の連鎖反応が起こり、すごいエネルギーが出ます。これを応用したのが原爆であり、原発です。
原爆の場合は一気に核分裂連鎖反応が起こされて大爆発が生み出され、原発ではゆっくりとした連鎖が続けられますが、どちらでも死の灰(放射性ヨウ素やセシウム、ストロンチウムなど多様な放射性物質)も大量に出ます。
原子力百科事典 ATOMICAより
この時、重要なポイントとなることは、地中に埋まっているウランのうち、核分裂するウランはほんのわずか、0.72%しかないことです。(動画では間違えて0.6%と語ってます。お恥ずかしい。正しい値をテロップで入れてあります)
これでは核分裂の連鎖反応を起こせない。それで濃度を高めます。「ウラン濃縮」です。これを繰り返して純度を限りなく上げて製造したのが広島型原爆(リトルボーイ)です。
広島原爆のレプリカ ニューメキシコ州ロスアラモスのブラッドバリー博物館にて 守田撮影
ウランの核分裂を利用するためには、核分裂の連鎖を管理下で起こせる装置が必要ですが、そのために作られたのが「原子炉」です。原子炉の中で核分裂の連鎖が持続する状態を「臨界」と言います。
この際、原子炉の中にはウラン235と238の双方が入っていますが、核分裂しないウラン238(99.2475%)にも中性子が当たって重要な変化が起きます。中性子を取りこんだウランが、新たな核分裂性物質に変わるのです。
それがプルトニウム239です。正確にはウラン238+中性子→ウラン239→ネプツニウム239→プルトニウム239という過程を経ます。
ウラン238からプルトニウム239への変化 出典不明
● プルトニウム原爆の製造
炉内で生成したプルトニウム239は、ウランが詰められて核分裂連鎖反応が行われた核燃理棒の中に生れています。これを取り出すのが「再処理」という工程です。
プルトニウム239は他の死の灰もたくさん詰まった使用済み燃料と一緒に存在しているため、プルトニウム239を取り出す過程でどうしても他の死の灰も環境中に出てしまいます。
グリーンピース・ジャパンの「原子力安全・保安院」提出の資料も基づく説明では、1日に通常の原子炉が1年かけて放出する放射性物質を出してしまいます。大変な核汚染です。(通常の原発の汚染も深刻ですが桁違い)
https://web.archive.org/web/20110903202711/http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/plutonium/rokkasho/20021122_shiryo_html
このようにプルトニウム239を再処理して取り出し、これを材料に作ったのがプルトニウム型原爆です。長崎で市民の大量虐殺に使われた爆弾です。
長崎原爆のレプリカ これもブラッドバリー博物館にて 守田撮影
形状の違いから広島型に「リトルボーイ」、長崎型に「ファットマン」というニックネームが付けられました。
ウランの場合は、大きく二つに分けて火薬の力で真中で合体させて核分裂させましたが、プルトニウムの場合は細かく分けて、球のように配置し、火薬で真中へと「爆縮」させて核分裂させました。
この際、プルトニウム爆弾を爆発させる方が難しいとのことで、1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州アラモゴードにあったトリニティサイトに実験的な核爆発が行われました。
現地の市民団体が作ったニューメキシコ州の地図 中央の黄色、オレンジの部分がトリニティサイト、その北にあるロスアラモスから火事で放射性物質を含む煙が流れたことが図示されている
このとき周辺住民が深刻に被曝しました。人類初の核爆弾による被爆者は、アラモゴード周辺で生まれたのです。もっともウラン採掘からプルトニウム製造、再処理の過程ですでに膨大な汚染が生じ、先住民族などが被曝していたのですが。
米軍はこのような過程を経て、さらにヒロシマ・ナガサキで核による人体実験を行い、その結果、プルトニウム原爆の方が安く製造できることをつかみ、その後はもっぱらプルトニウムが核兵器の材料の中心となりました。
続く
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