今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ドイツ製後期のローライ35の巻

2024年12月17日 20時00分00秒 | ブログ

暮に来てスムーズに作業をしたいのですけど、また変なのが来ました。ローライ35 #3145XXXとドイツ製後期でしょうか? 外観は悪くはありませんがシャッターが不調です。

 

通常のメンテナンスを実施しても改善しません。スローガバナーがコントロールされていないようです。前板を分解して点検します。の部分は本来接しているはずですが変形をして離れています。これですとコントロールが出来ません。

取りあえずスローガバナーは超音波洗浄します。右の部品はリン青銅のような材質ですが、スチール製もあります。の部分の曲がりを修正しておきます。中央はシャッターバネ。

 

画像のように接するようにして正常になりました。接する部分にはモリブデングリスを塗布しておきます。(潤滑が無くなると摩耗が進んでシャッタースピードをコントロールできなくなります)

心霊写真のよう。シャッターを切ると羽根残りがあります。観察するとトグルレバーを留めるネジが緩められた形跡があります。トグルレバーには寸法違いで多くの種類があり、適正よりも小さなものが使われているのかも知れません。

 


難儀なフジカハーフ1.9の巻

2024年12月15日 19時59分59秒 | ブログ

世の中忙しなくなって来たのでしょうかね。木曜日に修理材料を注文したAMAZONがまだ届きません。昨日と今日の二度、「配達を試みました」と表示されていましたが「配達を断念した」でしょ。日本語間違えているね。

それと、最近皆さんから送られてくる荷物の送り状ですが、コンビニからの発送でしょうか? 感熱プリンターのような印字で住所が不鮮明で、郵便番号と発送日も入っていません。どなたのお荷物が先に届いたのか分からなくなる時があります。そこでお願いですが、発送前のメール中に正確な郵便番号と住所を記載して頂けるご返送時に大変助かります。よろしくお願いいたします。

で、押し詰まって難しいカメラが来ています。フジカハーフ1.9は珍しいですね。落下品でシャッターは不動状態。「フィルターリングへこみの修正をして欲しい」とのことでしたが、それだけではないようです。

点検すると、画像では見にくいのですがシャッターユニットの下側が陥没しています。

 

きれいなカメラなので未分解と思っていましたが、シボ革を剥がしてみると・・あぁ、かなり乱暴に剥がされて再接着をされていますね。どうも、修理を試みて直せなくて元に戻して手放したということのようです。

結局、落下変形が原因と思われるいろいろな不具合があるのですけど、問題はシャッターを本体に取り付ける地板が陥没変形していてシャッターリングなどが挟まって動かない状態です。フランジバックの関係もありますので本来は部品交換ですね。しかし、その部品が有りませんので何とか修正をします。そもそも、リング類が多く、寸法的な制約のため地板の厚みが薄く設計されているのが曲がりの原因かと思います。

巻上げ機構とフィルムカウンターは底部にあります。

 

 

セイコーシャッターのメンテナスをして地板の修正をしましたが、これがかなり困難。シャッターリングなどの付属機構がスムーズに動いてくれません。一度曲がっているからね。フィルターはあと0.1~0.2mm修正をしたいのですが無理をするとクラックが入るので・・フィルターは渋いながら取りつくようにしました。

無骨なセルフタイマーも装備していますね。トップカバーを開けます。

 

 

ファインダーはガラスの一体ものです。カメラが重いわけです。部品点数の少ないPENの設計とは対極の、一体部品点数は幾つあるのかと言う感じ。

 

ファインダーはプリズムなのでの部分でファインダー像の上部にシャッタースビートと絞り値が表示されます。

 

レンズの∞調整をしてから最短側でシャッターを切ると、チャージレバー(上下ガタが大きい)と下部ユニットの連動が外れる時があります。先端部が丸く摩耗していて滑るようです。これを修正します。

キヤノンデミと同様な最中(もなか)式カバーを取り付けます。「FUJICA」バッチを貼る部分に盛り上がったキズがあります。なんでカバーに傷を付ける硬い道具でシボ革を剥がすかね?

このセルフタイマーのダイヤルも異常と思えるほど硬く、こんなに強いバネが必要なのか? と思うぐらいです。設計者とすれば必要な理由があるのでしょうね。これだけ重いカメラですと落下でシャッターが陥没するのもうなづけますね。

トミーのリペイント

 

 

 

 

 

 

 


早や12月も半ばの巻

2024年12月13日 18時20分57秒 | ブログ

先に業務連絡です。PEN-FTの件でメールを頂いている〇木さん。お返事が二度リターンメールになってしまいます。他に同様な事例はありませんのでお手数ですが別のアドレスから再度ご連絡を頂ければと思います。

で、12月に入ったと思いましたらもう半ばですね。暮は早いですね。おかげさまで多くの修理ご依頼を頂いておりましてブログを更新する余裕がありません。しばらく出来る時の更新とさせて頂きますね。作業は色々やっておりました。更新予定はないので画像がありませんがカメラ店様からのPEN-W #1002XX(1964年8月製)です。

過去にシャッターを分解しようと試みて断念した形跡があます。ネジの緩み止めは溶かすのです。

 

まぁ、大きな問題もなく修理が完了しました。

 

 

次はミノルチナPと言うカメラ。発売は1964,年の11月とのことですから東京オリンピックの翌月ですね。↑のPEN-Wもこの頃に生産が集中していますので同時期の2台ということになりますね。更新の予定が無かったので画像を多く撮っていませんが、まず露出計が動きません。この時代のセレンはダウンしているものが多いですね。

何とかメーターは動くようにしましたが・・

 

 

シャッター/絞りダイヤルの内周にある接点が接するブラシにより摩耗をして針の動きが不安定です。

 

左の内周です。ブラシによって円周上のキズになっています。

 

 

次はシャッターが動かない。シャッターは先日もやりましたSEIKO SLVです。

 

やっとシャッターが切れるようにしましたがスピードが変化しません。スローガバナーは何度も分解されていました。

 

SLVだけの現象ではないと思いますが、前回と同じで↓の部分の固着です。

 

 

超音波洗浄をしたところ。固着は改善しています。スローガバナーの原理は時計と一緒でガンギ車とアンクルによる遅延装置です。

 

このカメラはボディーが薄く設計されていますね。ダイカストで27mm幅です。巻上げ機構は非常にオーソドックス。

 

どことなくミノルタの品の良さを感じます。距離計付きでコンパクト。写りも定評があるようですね。

 

トミーのリペイント

 

 

 

 

 

 


新嘉坡のローライ35ブラックの巻

2024年12月08日 20時00分00秒 | ブログ

今日は開戦記念日(12/8)だったですね。映画「トラ・トラ・トラ」のDVDでも見直そうかな。海岸線に軍艦「長門」のオープンセットを作って、アメリカの練習機「テキサン」を零戦や九九艦爆に化けさせたり、今じゃ、CGでやるんだけど、偽物とはいえ実在の迫力が違いますね。もう、あのような映画は作れないでしょう。ハワイのアリゾナ記念館に行ったのは40年も前のことです。シンガポールにも行きましたよ。イギリスの東洋艦隊の基地がありました。プリンスオブウェールズとレパルスを海軍航空隊が撃沈したのは開戦から三日のことでした。

で次を急ぎます。シンガポール製のローライ35ブラック#6016XXXは一見疲労の少ない良い個体に見えましたが・・画像で絞りダイヤルと絞りが連動しませんね。フィルムカウンターも戻っていません。

その他シャッター低速切れず、巻き上げゴリツキ、ファインダー汚れ、沈胴スムーズでない、巻き戻しダイヤルゴリ、トップカバー凹み、など、結構不具合がありますね。

まぁ、通常の分解洗浄をして行きます。ファインダーはレンズを分離して清掃しました。地板を留める右上のネジ(ダイカスト側)がネジ〇カになっています。

 

絞りが同調しない原因はシャッターユニット側です。動きが渋く、リターンスプリングで復帰しません。

 

絞りユニットを分離して見ます。↗のバネに錆が出ている他は目立った不具合はないように見えます。

 

資料画像と比較しても絞り羽根の組み方に問題はありません。

 

 

では、裏側を見ます。作動ピンが錆びていますね。

 

 

絞り羽根6枚のうち3枚の作動ピンが腐食のため太って抜けません。作動も渋いです。保管の問題でしょうかね。油を付けるわけには行きませんのでアルコールを滴下してエージングをします。

スプロケット軸の遮光片が欠落していましたので製作してフィルムゲートを取り付けます。

 

本体にシャッターユニットを取り付けて前玉をヘリコイドグリス塗布でねじ込みます。

 

底部の巻き上げ系の清掃と注油をしておきます。

 

 

この頃は絞り/シャッターダイヤルの化粧ネジは梨地仕様ですね。黒プラのASAとフィルムインジケーターにキズが多いので研磨をしてあります。上下カバーはアルミ黒アルマイトに塗装です。

 

トップカバーのへこみの画像を撮るのを忘れていました。辺りですが修正をして目立たなくなっています。不具合は全て修正して良い個体になりました。

 

次もシンガポールですが、目立った不具合はありません。ヘリコイドグリスの劣化や低速の不安定など定番のメンテナンスです。

 

シャッターとレンズのオーバーホールをして完了。

 

 

ところでムック本の資料によるとドイツ製の最終号機は#331100となっていて、シンガポール製の初号機は#3312000となっていますが、この個体は#3252XXXでシンガポール製なんですね。

シンガポール製でもレンズ部が「Made by Rollei」ではなくドイツ製と同じようにNr.5491XXXと彫刻されています。ドイツ製の部品を使い、生産移管した直後の製造機で「ドイツ製になれなかった個体」ということなんでしょうね。

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PEN-Dをやりますの巻

2024年12月07日 20時30分00秒 | ブログ

思わぬ時間を取られましたのでPEN-D #1635XXの作業をして行きます。ご依頼のお父様が60年代に購入された個体とのことで、フィルターも付属して来ました。

 

生産的には前期で、スプロケットはアルミ地、スプールはグレーです。使用はされていなかったとのことでフィルムレールに腐食が発生しています。シャッターは何とか切れるようです。

 

駒数ガラスがかなり曇っています。メーターは作動しています。

 

 

トップカバーを外してみると駒数ガラスが剥がれて来ました。修理歴は無しとお伺いしていましたが、接着を見るとゴム系接着剤でやり直されているように見えますが・・

 

すべて分解洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

シャッターとヘリコイド部を分離しました。後玉は持病の曇りもありません。例の「PENは初期の方がレンズがきれい」という仮説が当たったか? 気になるのはシャッターのリングナットの緩み止め塗料(赤)の位置がずれていること。分解されているのではないかな?

ヘリコイド部がありますのでPEN-S系より部品点数が多いです。前期ですのでシャッター羽根は5枚です。

 

基本的にシャッター部はPEN-S系と同系で、後ろにヘリコイドが付きます。

 

シャッターを搭載してシボ革を接着します。

 

 

露出計は感度低下があり調整をしてファインダーの清掃をしました。作業に慣れた私でも、朝から一日中作業をしてもここまでで精一杯です。明日は完成させないと・・

 

PEN-Dとしてはセレンの劣化は少なく、調整抵抗の交換で対応できました。

 

洗浄した裏蓋に圧板を取り付けますが、かなり酸化膜で覆われた状態。

 

 

圧板の清掃をしてモルトを貼ります。

 

 

最後に前面の彫刻文字とシリアル№の色が抜けています。一家に住み着いたカメラとしてはこれも歴史なのでどうするかと考えましたが、入れ直しておくことにします。

 

付属の専用フィルターも清掃できれいになりました。レンズも含めて光学系の状態は非常に良い個体です。

 

こんな立派な保証書が付いていましたね。PEN-Dの発売は1962年6月とのことですが、この個体は1963年の恐らく8月(9月?)製ではないかと思います。シャッター側の捺印が前回の分解により不明瞭となって特定が出来ません。

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