いわゆる三光PENですね。シリアル№は#1036XXとかなり初期の番号です。何度も分解歴があって、シャッターダイヤル、巻き戻しダイヤルなどの作動が非常に重い。駒数計の針は不動、絞り表示とクリックがずれる、等々、何となく怪しさが漂っている個体ですね。さて、内部はどうなっているのでしょう。
巻上げダイヤルカバーが欠落しています。当初はねじ留めタイプかと少し疑問でしたが、良く良く見ると熱カシメの足のみが残っていますので、初期タイプに間違いありません。幸い、スプールのクラックは無いようです。
裏蓋の底とトップカバー横にへこみがあります。角はまず出ませんが、修正をしてみます。
過去に何人の残念な方が分解したのでしょう? 駒数ダイヤルと駒数レンズのクリアランスを全く考慮していないので、ダイヤルとガラスが接触をして全く回転しない状態。少し考えれば分かるでしょ。カニ目ネジはみなさんの知識では「逆ネジ」と思われていると思いますが、残念でした。三光の初期は正ネジです。(巻き上げダイヤルネジも同じ)無理してカニ目を緩めようと、一生懸命に締め込んでいたのでしょう、カニ目孔が壊れています。元々、この頃は孔が非貫通の設計なので、余計に外しにくいのです。以後は貫通孔となりますが、加工が容易にはなりましたが、スプール軸が見えてしまう。設計者の米谷さんは、その点を気にした設計をされたのでしょう。しかし、組立現場からすると「組みにくい」となったのですね。
基本的なレイアウトは変わらないのですが、個々の部品については後年のPEN-Sなどと比べると幼稚な部品との印象を受けます。加工が洗練されていないのと、図面上の嵌合や寸法公差がかなりラフな感じがします。駒数ギヤの上下間には後年の製品のようなウェーブワッシャーは入りません。よって余計に駒数計の調整がシビアになります。
片耳吊環の角にへこみがありますが、このぐらいの年式になるとへこみがあって当然です。あまり神経質になることも無いと思います。
とにかく古いカメラはばっちいので、完全に洗浄をしてからです。
初期の駒数ガラスは成形の問題で、かなり歪があります。お約束のクラックも・・。しかし、これも特徴ですから交換はせず、キズの研磨をしておきます。
作業は接着剤の硬化時間の関係でファインダーから始めますが、あら残念でしたね。どうも樹脂の本体の材質の風化が少ないと思いましたが、このファインダーは後年のPENのものに交換されていますね。対物ガラス(2枚)は本来は樹脂製の頃ですが、ガラス製となっています。ファインダーの樹脂部品は一番、経年変化を受けやすいところです。たぶん強度劣化で割れたのでしょう。実用する以上仕方ないですよ。
長くなるので簡潔に。シャッターは古いだけあって、あまり調子は良くありませんね。すべて洗浄、組立をして行きます。
洗浄だけでは落ちない汚れの歯の部分を真鍮ブラシできれいにしてから組み込みます。
初期のスプールは滑り機構が異なります。板バネを内径に嵌めて滑りをコントロールする簡単な構造。バイクのドラムブレーキならさしずめ内部拡張式ですかね。
ここで予想外。当初、巻上げダイヤルカバーは変更後のネジ留めタイプと思っていたので、初期の熱カシメタイプの複製品を用意してありませんでした。慌てて作りました。ダイカスト本体の横から取付孔に挿入するタイプ。
で、このようになります。以後のネジ留めタイプよりグレーの色調は暗いので再現してあります。チャージのリンケージが摩耗で、2回に1回チャージミスをする状態。リンケージを曲げて調整するのですが、すでに曲げられているので、折れはしないかとひやひやです。
すみません。今日の日曜日は久しぶりに作業を休んで自分の趣味をやらせて頂きました。ヤマハ FS1の復活作戦。まずガソリンタンクの錆落とし洗浄です。中にカムチェーンを入れてガシャガシャ半日振って漱いでも錆が出ます。相当ひどかったですね。最後に「花咲G」を投入して目下洗浄中。穴が開かなければ良いですけどね。
で、北海道のINOBOOさんからOMEGAのスピードマスターが来ていて、いいですねぇ。本物って感じがしますよね。私もいつかは欲しいです。キャリバーはETA 2890-2 cal1143 が搭載されています。歩度調整のご依頼です。
PENですが、昨夜の画像が1枚。ファインダーは後のオリンパス工場製となったPENからの流用ですね。三光の頃は、遮光カバーはアルミではなく、只の黒厚紙です。
残念ながらこの個体にはいくつかの疑問点があります。オーナーさんからは、「絞りのクリックがずれている」とのご指摘がある。確かに、強く回されるとずれてしまう構造ではあるが、この個体は一度分解をされて、緩み止めに接着剤が塗布されている。しかし、三光の頃にしてはレンズがきれい過ぎるのです。後期のPEN用レンズとFlash彫刻付(三光の特徴とされている)のアウターを組み合わせるための分解とも取れるのです。
遮光フェルトの接着と圧板の研磨をしましたが、この圧板も???。フックへの取付けバネ部が外されて変形がありました。まぁ、外すこともあるでしょうけどね。初期の圧板はフックの位置が異なっているものがありますが、この圧板は以後のタイプと同じです。
後ろ側はこんな感じ。
とにかく三光PENは古いので、個体維持のために善意で部品の入れ替えをされている個体もあるわけです。使えることが大前提ですからね。私のような者が余計な指摘をしなければ、すべて平和のような気もします。しかし、前回のPEN-FT(B)といい、オークションものに残念が続きますね。
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