関東地方は今日も朝から気温が上がって市の広報も熱中症に注意と放送しています。こんな時はあまり難儀なカメラはやめてと・・思ってPEN-FTを始めたのですがなんか変ですよ。#3427XXと後期の個体ですが、後期にしても特に問題なく作動していて、オーナーさんは「長く使いたいので」ということでオーバーホールに来ていました。
裏蓋を開けて点検していますが、34万台で圧板が4点留め? まぁ、過渡期はありますが私のデーターベースによると#342648は2点留めになっています。
セルフタイマーボタンにニッパ様の掴み傷がありますので分解されているようです。
オリジナルのテープ糊が残っていますので間違いなく分解機です。
↑ボタンドメのバネの係り位置が違いますが、それより問題は➡のボトムキャップです。これは初号機から使われているアルミキャップで、34万代頃になると丸いシール式(金型形状も異なる)となっているはずです。ミステリーですよ。この個体の製造時期は1969年2月です。
私のデーターベースで調べてみると、#271003 製造1969年3月 丸シール仕様
#269561 製造1969年3月 丸シール仕様
#270660 製造1969年3月 丸シール仕様
#262395 製造1969年1月 アルミキャップ仕様
#265588 製造1969年1月 アルミキャップ仕様
とのことから、この個体の本当のシリアル№は大よそ266000台付近ではないかと推測します。トップカバーは付け替えられていますね。1969年3月から新しい金型のダイカストボディーが投入されたことが分かりました。
シャッターユニットを取り出してみると・・シャッター幕も含めてなにか油が廻っているようです。手に着く水油は普通の油ではなくシリコン系のようなツルツルとした油です。そこでユニットを分解して行くと・・あ~ダメだぁ。スローガバナーの裏側に大量の油が溜まっているのが分かりますか? これで良く低速が止まらなかったと逆に関心しますが、高性能油ということ?
リンケージ部分にも大量の油が付着しています。このシャッターはオイルバス式じゃないよ。主にアマチュアの方と思いますが、異常に油に拘る方がいますが、カメラの中で水油なんて、ほんのピンポイントしか使いません。基本は無給油ででも動くことが前提で組むのです。
超音波洗浄をしても油膜は完全に除去できません。まぁ、この程度で良しとします。
シャッター羽根も脱脂をしてシャッターユニットの組立をしました。
洗浄組立をしておいたダイカストにシャッターユニットを搭載しました。調子は良いようです。
途中ですが、カワサキ・マッハⅢに興味の方が多いようですので1枚載せておきます。右上下は当時の私とマッハⅢ。左は東京モーターショーだったと思いますがゴールドマッハがショーモデルとして展示してあったものを撮影したと思います。中央下が初期のマッハで白タンクに紺のストライプです。この頃は高速タイヤが開発されておらずフロントにもリヤと同じパターンのタイヤを履いていましたが直進性に問題がありました。中央上は私のマッハと同時期のマッハで、赤タンクが追加されて白タンクは無くなりました。フロントタイヤはリブパターンのダンロップF6、リヤタイヤは扁平のはしりK87を履いています。フロントブレーキとヘッドライトはW1スペシャル(650)と同じもので、ブレーキはプァで全く制動力不足でした。3気筒独特の不規則なアイドリングの排気音が忘れられません。
では、再開ですが通常より工数が掛かっています。何故かというと油です。前板関係にも例の油が廻っていてスクリーンにも浸透というか油の蒸散のように付着しています。すべて洗浄をしても油分は取り除けてもシリコンは取り除けず何度中性洗剤で手を洗いに行ってもすぐに指がツルツルになってしまいます。全く困った油です。
何とか完成させて本体に組み込みます。
ルーペの2枚レンズ内側にカビ汚れがあります。油に気を使うより、こういう部分を清掃して欲しいです。
サークリップを外して分解清掃をします。
スローガバナーに大量の油が着けられていましたが、ということはスローガバナーの調子が悪い? じつは正確に組み立てても作動が変です。観察すると↓に傷があってスローガバナーと連動するサドウジクが内側に曲げられているようです。なんで??
まぁ、正規の状態に修正をして作動はするようになりました。しかし、今度はシャッターダイヤルがある角度で回転が重くなる現象。これはカムジクと前板のシャッターダイヤルの中心がズレているため。通常はスベリコによって中心ブレを吸収するのですが、吸収しきれないほど各ユニットとダイカストが合っていないということ。私もここまでズレるのは見たことがありません。製造時期の異なる部品を組み合わせたような場合以外、あまり考えられないですね。何とか組立位置の矯正により解決しています。その他、露出計の感度はかなり低下していました。
付属の38mmも問題あり。ヘリコイドグリスの変質と抜けにより回転のガタが大きく出ており、レンズの後玉の半分が曇っている状態。これはガラスが変質しているもので清掃ではクリアにはなりません。軽く研磨をしてあります。画像で分かるように、すでに過去に分解を受けているカニ目部分の塗装ハゲを修正した形跡があります。
オークションによる入手だそうですが、トップカバー以外にも色々と疑問の多い個体でした。また、「高性能油」を大量に使用されていたことで洗浄に多くの時間を費やすことになりました。最後は昔乗っていたホンダZと記念撮影。
発送前の点検で突然巻き上げが停止しました。応急を試みましたがまったく反応せず、これは容易ならざる状態に陥っているという勘で再度分解をしました。すると、ブレーキカンが2つに割れていました。
原因は金属疲労なのでしょうけど、コントロールレバーが折れるのはPEN-F以来の持病ですけど、ブレーキカンが折れたのは記憶がありません。まぁ、オーナーさんの手元に渡ってからの破損でなくてまだ良かったです。部品の交換をして組み立てますので発送が遅れます。
良品のブレーキカンと交換して組みます。ロータリーシャッターは機械的には非常に厳しい動きを強いるので、コントロールレバーなど打撃が加わる部品は金属疲労で折れる事故はありますが、今回のブレーキカンが折れた記憶は、このカメラを数百台は直して来ましたが過去に一度ぐらいあったかというぐらい珍しいです。急速回転をして急速停止を繰り返しているのですから金属疲労は起こりますね。
と言うことで、二度目の完成写真。シビックRSのちょろQと一緒に。
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