先日、PEN-WのO/Hに来ていたオーナーさんからマニアックな個体が来ていますよ。頑張ってますね。一般には市販されなかったというPEN-SブラックとPEN-EE初期型という取り合わせ。EEの初期型は最近ブームなんですか? まずはPEN-Sブラックですが、真贋の鑑定を依頼されました。おめでとうございます。本物ですよぉ。似たようなカメラは私も作って来ましたが・・状態は、PEN-Sの中でも初期の#1650XXなので正常に作動する方が稀ですが、巻上げ空転でシャッターは不調。お決まりの駒数ガラスにクラックというところですが、最も大切な外観の損傷は軽微でラッキーです。メカはどうにでも治しますので問題ありません。シャッターユニットの新品もあります。
内部を見ます。良い感じですよ。フィルムレールもきれいです。初期の個体はスプロケットアルミ地(アロジン処理?)スプールはグレーでセオリー通りです。シャッターユニットの留めビスにも分解の形跡はありませんので、たぶん未分解機だと思います。良く見つけられましたね。私も過去に10台ぐらいしかO/Hを手掛けたことはないのです。欲しいですね。
PEN-Wも良いですけど、PEN-Sのファインダーのリンクル塗装にブラックケースは迫力を感じますね。右吊環部に落下の陥没あり。カバーの留めビスがメッキとなっています。私の記憶ではPEN-Wと同じブラック塗装であったと思いますが定かではありません。で、このような希少なオリンパスカメラを収蔵するオリンパスの社内ミュージアム「瑞古洞」(八王子)の見学ツアーをMazKenさんが計画してくださいました。私も10年前に訪問したことがありますが、輸出用や試作カメラなど珍しいコレクションを見ることができます。私のお客様にも近郊にお住まいの方も多数いらっしゃいますので、参加してみたい方は、定員枠など参加が可能かを問い合わせしてみては如何でしょうか。
この個体は未分解機ですね。大変よろしい。駒数ガラスにクラックありで交換するか?
吊環部に陥没あり。修正をしておきます。
シャッターを分解して超音波洗浄をしています。
長くなるのではしょりますが、結論から言うと調子の悪いユニットでした。稀にBで一度止めると固着する時がある。スローガバナーの作動が重いです。アンクルの修正で調子を取り戻しています。
洗浄したダイカスト本体とカバー類。ここで何か気が付きませんか? PEN-Wのような塗装の剥がれが少ないと思いませんか? PEN-Wでも、保存の良好な個体では、びっくりするようなコンディションの個体も確認していますので一概には言えませんが製造はこちらの方が古いのです。PEN-Wの塗装は下地のプライマーの性能が悪いと推測されるので、別の外注先で塗装されたものかも知れませんね。今となっては分からない事ですが・・
この個体はスプロケット軸のナット部分に調整ワッシャーが入っていました。これを入れないとスプロケットが固着して回転しません。ダイカストの加工精度が規格に仕上がっていない個体の救済処置です。
メカの組立はほぼ終了。汚れと腐食の多いリング類を研磨洗浄してあります。
シャッターリングまで取り付けました。一番初めの工程で分解清掃でレンズを接着しておいたファインダーが仕上がっています。ふぅ、もう一息です。
特筆はレンズが素晴らしい。この頃の個体はカビや拭き傷は避けられないものですが、殆ど無傷の状態で拭き上げもためらうほど。フィルターが装着されていたと思われます。是非純正フィルターを装着してください。
モルトの汚れも多かった裏蓋内部もきれいになっています。
シャッターは快調、各リング類の操作感はスムーズに仕上がっています。#1650XXは、コパルにてシャッターユニット完成1961年3月で、本体完成は1961年-5月になります。すでに製造から半世紀以上経過したビンテージカメラとしては良好なコンディションの個体だと思います。
三連休だそうですけど、関東地方は朝から雨になりましたよ。中央高速も渋滞だそうですがご苦労様ですね。で、PEN-EE初期型です。最近ブームなんですか? 確かに初期型はシボ革がマニュアル系と同一パターンで重厚感? がありますので、コレクションのアイテム探しには良いかも知れませんね。しかし、セレンが不良となっている個体が多いので注意が必要です。
この個体#1557XXも全く露出メーターか振れません。メーターの不良も考えられますので点検します。初期のメーター部には真鍮製のカバーが付いていますが、前回の個体19万代にはついていませんでしたね。取付けネジ孔はそのままで、途中から省略されるのですが、果たして途中で撤去されたのかは不明です。セレンには調整抵抗がなく、撤去された形跡もないことから、工場組立時でも起電力が低めのユニットだったのかも知れません。
露出メーターは正常。セレンは殆ど起電していません。では、まずセレンユニットを作らなければO/Hをしても意味はないことになります。
じゃあ、しようがない。面倒ですけど作ります。左がオリジナルのセレンで右はEEの後期のもの。
残念ながら、初期とそれ以後では取付けリングの構造が変更になっていて、そのままでは交換することができません。セレン以外はオリジナルを使います。
初期型セレンユニットの完成。充分な起電力があります。では、本体側のO/Hをすることにします。
すべて分解洗浄をして組立をしていきます。
過去にシャッターユニットを分離してのO/Hはされていませんが、セレン部を分離して絞り関係とレンズの清掃をされているようです。ネジのスリ割りが壊れており、斜めに刺さっていてネジ山を壊しています。
レンズはきれいですが、絞り羽根にドライバーの先で突いたようなへこみがあります。スリ割からドライバーが滑ったのでしょうね。
シャツターは羽根が開いたままフリーズする状態でした。まぁいいや。全体のメンテナンスで調子を戻しています。
製作したセレン部とシャッターユニットを組み込んだところ。
ファインダーの清掃をしていたところ、ボロッと露出メーター指針が取れていました。ここは半田付けになっていますが、古い半田は簡単に剥離するものがあります。
半田付けをした後、ケースに収めたところ。
本体に組み込んでEEの感度調整をしたところ。
これでPEN-S2.8ブラックとPEN-EE初期型の完成となります。最近はコンパクト系のPENの人気は下降気味のような印象もありますが、オーナーさんは前回のPEN-Wに続き、非常にマニアックな機種を選択されてコンパクト系に情熱を傾けていらっしゃいます。次は何をターゲットにされるか楽しみではありますね。