今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ニコイチ希望のキャノネットG-Ⅲ

2013年10月30日 21時04分47秒 | インポート

Img_292574 久しぶりにキャノネットG-Ⅲです。コンパクトなサイズに、流石キヤノンのモノづくり、機能を凝縮していて、よく出来たカメラだと思います。一家に1台、このカメラがあれば充分でしたでしょうね。片方は露出計不動で、ニコイチで1台仕上げて欲しいとのご希望ですが、両方とも非常にきれいな個体ですから、なんとか両方とも復活させたいと思いますね。

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どちらも国内製ですが、まず1台目。こちらの個体の方が製造は後期でよりきれいな個体ですが、露出計が作動しない。電池室を外してみる、電池の液漏れかガスのためにターミナルが激しく腐食しています。

Img_292066 電池室から熱カシメのターミナルを分離してみます。画像は腐食粉をだいたい落としたところ。リード線の半田付けも導通不良となっています。テスターで回路のチェックをしても回路が繋がっていません。

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リード線先の基盤の半田付けも腐食して断線しています。リード線の芯線を伝わって、ガスが腐食させるのですね。

Img_292275 リード線は新しくやり直して、電池室も作り直してあります。

Img_292545 少し時間が空きました。2台同時進行でやっているものですから、中々進みません。とにかく、熟成された機構と、あまり軽量化を考慮しない設計で、単純にサイズダウンをしたようなカメラですから、中身が濃いので組立も手間が掛かるのです。キヤノンらしい真面目なものづくりというところでしょうか。ファインダーはガラス面が多いですから、どうしても曇り汚れとなりますね。しかし、ハーフミラーなどは、劣化が少ない個体が多いと思います。きれいに清掃をしておきます。

Img_292654 レンズの前群を分離して清掃をします。結構、基板と接片が多いですね。鏡胴に振動を与えるとAで露出計の針が瞬間的に作動しない不具合があります。接片と基板のパターンとの接触が緩いのです。シャッターユニットは、通常の逆向きにセットされる設計のため、分解は後ろ側からになります。

Img_292984 いつも思うのですが、G-ⅢQLプレートは接着されていて、カバーを外す時のビスが半分隠れているのですね。ちょっと外してくれれば、プレートを剥がさなくても良いものを・・・材質は、ソフトメタルなので、曲げたり傷をつけないように慎重に分離します。

Img_293256 2台目の電池室には液漏れはないと思いましたが、リード線の先端の半田付けは腐食をしていました。画像は、新しいリード線を半田付けしたところ。

Img_293552 このカメラのモルト交換は厄介です。現存の個体は、途中で古いモルトの清掃を受けていない場合、ダイカスト本体の塗装も確実に侵していて、ダイカストも腐食で粉になっています。しかも溝が深い。これはシコシコ清掃する以外にありません。

Img_293658 裏蓋側も清掃しますが、クイックローディング機構のバネがあって、非常にやり難いのです。

Img_293864 前玉を取り付けてカバーをセットします。

Img_294085 すでにダイカストの腐食で、粉状となったホコリが大量にローディング部に入っていますので時間を掛けて清掃しました。欲しい性能を全て満たした、一家に1台あれば充分というカメラですね。ちょっと重いですけど・・


INOBOOさんワールド

2013年10月24日 20時42分57秒 | インポート

Img_2866 ご常連のINOBOOさんはカメラと腕時計の両方に情熱を持っていらっしゃいます。何やら到着していますが、この後も追って到着するようです。ニコンのF3ファインダーをウエムラスペシャルの仕様にしたいとのこと。時計の左側はセイコー・キングクォーツ9721-8010ですが、このモデルは水晶振動子を2個として精度の向上を図った高級モデル。右側は同じくセイコーの自動巻きモデル6216-9000 ウィークデータ 39石で、発売期間も短いため、現在は稀少なモデルです。これらのメンテナンスをして行きます。

Img_2869 画像を撮り忘れましたので少ないです。製造は1979年で、それまでのクォーツユニットよりも薄く設計されていますので、薄型のドレスウォッチなどにも使われているユニットです。ユニットは注油などのメンテナンスを実施していますが、問題はケースの全体に使用傷が多いこと。そこで、リューターで研磨していますが、単純なデザインではなく、多面にカットされたデザインですので、エッジを殺さないように研磨をして行きます。

Img_288599 研磨洗浄の終ったケースに、メンテナンス済みのユニットを組み込んで完成です。撮影用に仮のベルトを装着したところ。薄型の高級モデルですので、光沢黒のベルトが良く似合いますね。

Img_288748 ニコンF3ファインダーは、チタンカバーの前面プレートを塗装する予定でしたが、裏側に光路の一部を担っている設計のため、金属ではなく、モールド部品であったため、ブラックカバーの個体を生かして、カバーをチタンカバーとすることにします。

Img_288877 清掃を終えたファインダーにチタンカバーを取り付けます。下部の本体取り付け用のゴムダンパーが取り付け部分のボロカクシにもなっていますね。

Img_289188 ゴムダンパーの接着をしてウエムラスペシャルの完成。前面のNikonプレートが樹脂製なのは残念でした。

Img_289261 次は、セイコー・ウィークデーター6216-9000ですが、製造が1966年と古いので、ケースの状態は非常によろしくないですね。実用品として大量生産された時計とはいえ、私の感覚では腕時計は自分の分身のような気がしていて、ここまで傷だらけ、手垢まみれにすることは忍びないと感じるのですが、消耗品として、立派に役目を果したと見るべきでしょうか?

Img_289451 風防も傷だらけなので交換のためベゼルを外しています。画像では、傷が写らないのですが、どうしたら、ここまで傷を着けられるのでしょう?? 取りあえず、超音波洗浄をします。

Img_289566 超音波洗浄をして手垢などの固着した汚れを落としています。ケースの全面に傷が多く、研磨では取り切れない深い傷も何箇所かありますね。

Img_289612 光ってしまって、研磨をした状態がお分かりになるでしょうか?ケース、ベゼルと裏蓋も磨いてあります。裏蓋のイルカマークは以後のモデルとは異なって、可愛らしいデザインが特徴です。ケースがあれだけ傷だらけであって割には、裏蓋は摩滅も殆ど無くきれいなのが不思議です。

Img_289728 オリジナルの風防は傷だらけですね。交換用は社外のヨシダS58を使います。INOBOOさんの懇意にされている時計店さんに1枚だけ残っていたのでラッキーでした。規格寸法は32.25mm(外径)となっていますが、オリジナルを計測すると32.08mm。すでにクラッシュされて小さくなっているのですが、経験的にこの差では無理に圧入すると金属疲労のベゼルが割れてしまう可能性があるため、最小限の寸法詰めをします。

Img_289858 何とか圧入できましたね。形状的にはオリジナルと同じ角の丸いタイプですが、正規はエッジの立ったタイプとの考察もあるようです。

Img_289976 機械のメンテナンスをして行きます。この機械は工場から出たままの未分解です。

Img_290059 この時代は、時計の高級度をはかるのに、使用されている石の数を競うという日本人らしい価値観がありましたね。この機械は、基礎キャリバーの6218Cの35石を改良して39石としたものです。しかし、ホゾなどの使用個数は限られており、画像のように、カレンダー車の部分などにはめ込まれています。オリエントには64石や100石なんて機械も存在します。まぁ、何を競っているんだか・・・

Img_290167 カレンダー車を載せて受けにも石が入っていますね。

Img_290225 自動巻き機構を取り外した状態。未分解の機械ですので、非常にきれいです。

Img_290421 文字盤の裏側。インデックスは接着などではなく、差し込んでリューターで潰してあります。

Img_290658 文字盤にも種類があるようですが、この文字盤は、防水が完全だったと見えて、まったく劣化のあとがありません。文字盤は時計の顔なので、これは非常にラッキーです。では、機械をケースに入れます。

Img_291014 6218Cの5振動を改良して5.5振動としたロービートの機械です。ゼンマイを巻いて歩度の調整をして行きます。

Img_290875 これで完成です。ケース研磨と風防ガラス交換で、非常に良いコンディションとなっています。当時の発売価格は23,000円ですから、非常に高級なモデルでしたので、現存数は少なく、稀少なモデルとなっています。

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お父様の形見のPEN-Fを復活させるの巻

2013年10月18日 23時09分52秒 | インポート

Img_283531_2 お父様の形見のPEN-F #2292XXだそうです。前回のFとほぼ同時期の製造ですね。お父様はニコン党だったそうですが、PEN-Fだけはデザインが好きで別格だったとのことです。このパターンは多いでしょうね。グッドデザイン賞受賞ですからね。状態は、大切に所有された個体で、程度はよろしいですが、フリクションの増大でレンズを装着するとフリーズしてしまいます。

Img_283655_2 ご覧のように、リターンミラーが止まった状態ですね。

Img_283744 観察すると、基本的に内部は未分解ですが、何故か、ファインダーのピント再調整を受けています。

Img_283857 全て分解洗浄で組立てて行きます。PEN-Fでは、スプロケットはアルミ製の黒アルマイトが多いですが、この個体はFTと同じ樹脂製が使われています。分解交換を受けた形跡はありませんので、工場で組まれたものと思います。

Img_283988 巻上げ関係の組立が終りました。スムーズに作動していますね。

Img_2842461 ちょっと時間が空きました。いえね、スローガバナーの調子が出ず、低速が不調だったのです。PEN-F(FT)は組み立てには知恵の輪のような部分がありますが、シャッターユニットをダイカスト本体に出し入れする時には↓のコネクティングロットが干渉してスムーズにセット出来ません。ちょっとした入れ方なのですが、この頃のダイカスト本体は、干渉する部分を少し削って、組立しやすいように改良されています。それでも干渉しますが・・

Img_2848661 で、低速不調ですが、画像はハンマーが↑のレバーに当って停止しているBの状態です。ハンマーに叩かれたレバーがスローガバナーを作動させます。しかし、ガバナーは時計と同じ構造なので、中には調子の出ないユニットもあります。この個体は、ハンマーを分離した形跡がありますので、過去にシャッターに関する不具合で修理をした可能性があります。スローガバナーの一番下の部分がガンギ車とアンクルで、正確な秒時を生み出す部分です。

Img_284949 付属のレンズはF用38mmと100mmですが、まず、38mmをメンテナンスします。マウントベース部を分離すると、ヘリコイドグリスが変質して流化したものが接合部やシャッター羽根にも付着しています。

Img_285157 こちらの接合部にも流れていますね。絞りレバー部から羽根に浸透して行きます。

Img_285252 結局、これらの部品をすべて洗浄脱脂することになります。レンズはあまり使用されてはいませんが、後群前のコーティングは劣化しています。

Img_285317 本体と38mmが完成。殆ど使用感はない大切にされた個体ですね。快調な作動を回復しています。

Img_285426 最後に残った100mm f3.5ですが、こちらの状態はかなり良くないです。ご自身でも分解されていた形跡があります。レンズ曇り、ヘリコイドグリス抜けと画像のように絞り羽根に油だけでなく、絞りが正五角形にならず、これ以上に絞ることが出来ません。何か問題があるのです。

Img_285575 絞り羽根をセットしているビスが内部で脱落していました。これでは正確な絞りになりません。その状態で使われたようで、絞り羽根の1枚に偏磨耗があります。すべて分解して脱脂をします。

Img_285639 絞り機構を洗浄して清掃したレンズを組み込んであります。ヘリコイドグリスを交換した鏡胴部を取り付けます。

Img_285877 100mmは非常に良い状態に回復しました。当時は、カメラ本体と38mm+100mmの組合せで使われることが多かったようですね。私は、腕時計の修理も行っていますが、両方とも息の長い機械ですから、適切なメンテナンスをすれば、世代を超えて使えるということは素晴らしいことだと思っています。お父様が感じたと同じシャッターを押す緊張感を味わって頂きたいと思います。

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油漬けと兄弟のPEN-FT

2013年10月15日 13時29分16秒 | インポート

Img_280755 油漬けのPEN-Fと一緒に来たPEN-FT #2032XXと前中期頃の個体。動いてはいますが、巻上げゴリツキ、露出計不動、セルフタイマー不調、などがあって、裏蓋の蝶番の塗装ハゲの修正をご希望になっていらっしゃいます。

で、セルフタイマーが途中で止まる件ですが、改良前のユニットで、歯車に激しい錆があります。また、ピンセット先のバネが外れており、これも途中停止の要因になっています。

Img_280841 幸い、この個体は油漬けは免れているようです。拡散性のスピンドルオイル系などは絶対に厳禁ですよ。確かに裏蓋の蝶番の塗装が剥離していますね。これは、モルトを除去した時に、アルコールで拭き上げをしたため、変質したモルトと接触をしていた塗料が侵かされていて溶けてしまったのですね。

Img_280963 すでにダイカスト本体の洗浄を終えて、組立てています。

Img_281524 再塗装をした蝶番を取り付けています。

Img_282966 シャッターユニットを搭載しましたので、シャッター幕を保護するために裏蓋を取り付けます。裏蓋の塗装より蝶番の方がきれいになってしまいましたね。

Img_282625 シャッターユニットの手前側がスローガバナーですが、結構錆が来ていますね。同じ材質のセルフタイマーも同様にギヤの錆が進行しています。

Img_283151 ギヤの腐食はありましたが、20万代前期としては、程度は悪くは無いと思いますね。露出計は分解と回路の新製で復活しています。スローガバナーも快調です。

Img_283288 カバーを取り付けて完成。付属の40mmは、絞りの作動が重く、このままですとフリーズの危険がありますが、ご予算の問題で、今回は手をつけません。巻上げ快調で大きな傷も無く、前期型モデルのコレクションとしては良い個体です。

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ペナント文字盤のクォーツ時計

2013年10月13日 14時31分35秒 | インポート

Img_279825 PEN-FTに掛かる前に笹原ペンさんからクォーツ時計が来ていますので、ブレークタイムでやりますね。コルムのアドミラルズカップのイミテーションなのかなぁ? 現状は不動で、ベルトの片方の取り付け部品が欠落しています。ケースとベルトは、すでに洗浄と研磨をしてあります。

Img_279946 ケースの裏側は荒い仕上げですね。ベルトの取り付け部品は、簡易的に廃材を利用して作ってみました。

Img_280175 搭載されているムーブメントは、OMAC.LTD THAI ASSYと記載されているSWISS 部品を使用した1石のようですが、あまり良くは分かりません。電池を交換しても動き出しませんので、分解をして行きます。

Img_280215 あやしいユニットですが、赤いルビーが1個使われていますね。洗浄組立で作動をするようになりました。

Img_280454 特徴的な文字盤に針を付けていますが、仕上げの悪い針です。研磨清掃でベルトを取り付けたケースにムーブメントをセットします。

Img_280567 組立完成。一見、日の丸に見えて国旗のように見えますが、これは、国際海洋信号ペナントの数字旗とのことですね。日の丸が①を表しています。アドミラルズカップはヨットレースなので、数字旗を文字盤にデザインしたのでしょうね。それのイミテーションというところでしょうか?

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