今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

一度は断念PEN-EESの巻

2020年05月23日 20時20分00秒 | ブログ

今日の東京のコロナ新規感染者は3人とのことで、もう一息ですね。しかし、コロナ以前の生活に戻れるのにはワクチンの開発が必要ですね。と言うことで、カメラを持って撮影に出かける方も少ないので修理のご依頼も少ないです。早く収束して欲しいな。

で、PEN-EES #1540XX ですけどね。初期型のEE及びEESのセレンは殆ど全滅の状態にあります。この個体も完全に起電していない状態ですので一度は修理断念としたのですが、オーナーさんの伯母さんの形見と聞いて、う~ん、それでは何とかしなければなんねえぞ。となりました。セレン自体はEEと共通ですが、良品を見つけてもいつまで使えるか・・

と言うことで、製造の新しいEES-2のセレンを代用できないかという検討。EES-2のセレンはEESのものより若干長いですが、透明樹脂側を加工すれば、何とか収まりそうです。

 

セレンを移植したところ。

 

 

仮にメーターを接続してみると、かなり高い起電力を示します。

 

 

では、本体をO/Hして行きます。

 

 

駒数ガラスの接着が外れています。

 

 

ダイカスト本体はフィルムレールに腐食が出ていますので、軽く研磨をして洗浄します。

 

では、スプロケットから組み立てていきます。

 

 

シャッターは固着しています。スローガバナーなどの動きが悪いです。分解洗浄で組み立てていきます。

 

 

絞り羽根の動きも張り付きぎみ。分解洗浄をします。レンズは前玉後ろにカビ痕があり取れません。

 

初期型のメーターには真鍮製のカバーが付いています。以後は廃止。メーター感度は高く、調整抵抗でゲインを落としています。

 

ファインダーの清掃、無限調整をしてトップカバーを閉めます。

 

 

あまり使用はされなかったですね。打痕も無く非常にきれいな個体です。純正のフィルターが付属していましたので、清掃をして取り付けます。

 

当初はメンテナンスでお受けしたのですが、結局改造完全O/Hになってしまいました。革ケースとレンズキャップが付属。純正ストラップがありませんが、私のところには売るほどありますけど要らないでしょうね。EE-Sの発売は1962年4月となっていますが、この個体#1540XXの製造は1962年10月ですので半年で5000台の製造ペースだったのかな? 良品のセレンがあれば生き返る個体が沢山あると思いますけど、セレンは環境問題がありますから再生産は出来ないのが残念です。完全復活をした幸せな個体です。

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特に問題のないPEN-FTとレンズの巻

2020年05月21日 17時20分32秒 | ブログ

特にUPするような個体ではないのですが、更新に間が空いていますので簡単に・・PEN-FT #3355XX(1969-12製)ですけどね。何もないと書きましたが、洗浄後に点検をするとチャージギヤ2歯の先端に軽いダメージがありました。特に巻上げには支障はない程度ですが、巻き上げで無理な力が掛かったのでしょうね。33万台ですからチャージギヤはリングナットによる組立式ですが、過去に分解を試みたようなスリ割りの損傷がありますね。ここは接着併用で強く締まっていますので、専用工具でないと緩みません。

相手側の#2ギヤを点検しますが、特に損傷は認められません。こちらの方が強度があるんですね。

 

他は特に問題は無くオーバーホールを終えて組み立てます。

 

 

ハーフミラーは劣化していますので新品と交換して組みます。

 

 

すべて組立が完了して露出計とファインダー調整をして行きます。

 

 

調整後、底部にネジロックをしておきます。

 

 

レンズですが40mmと150mmです。絞り羽根に流化したヘリコイドグリスが付着しています。これは洗浄します。

 

ヘリコイドから絞りリング側にも油が流れています。

 

 

このようにね。こちらもひたすら洗浄。

 

 

レンズの前群を分離します。

 

 

前玉にカビ痕と汚れがあります。

 

 

大口径のズイコーレンズはレンズの接着が強く分解できないものが多いので苦手です。まぁ何とかなりました。40mmはF用ですが、古い割にはレンズは良好な方でした。しかし、絞りレバーの作動が途中(カムに乘る時点)で急に重くなる不具合があって、カメラがフリーズをする危険がありました。修正をして終了です。

長い巣ごもりにより、多少体調を崩してしまいました。次の更新は少し先になると思います。

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すわ、オリジナルPEN-Fブラック?の巻

2020年05月14日 13時20分00秒 | ブログ

どこまで書いて良いか躊躇しますが、もう時効ですから簡単に・・このPEN-Fブラックは私が見てもオリンパス純正の焼付塗装に見えます。オーナーさんはペンスケ展のメンバーさんですが、当時オリンパスにお勤めの方で、工場の廃棄品捨て場で見つけた方から後年譲られたようです。ではブラックモデルの製品化を検討した試作品 ? 彫刻文字の色入れは後に追加されたようです。

アンダーカバーの塗装を見てもFTブラックと同一の純正塗装に見えます。

 

 

取付けネジは頭のフラットな底部に使われる皿ネジでメッキタイプを黒く塗ってあります。オリジナルは丸頭のメッキスリ割りタイプです。

 

内側を見ると少し印象が変わります。真鍮の地肌がプレス上がりの状態ではないようです。

 

レリーズボタンのガイドは接着ですが、その部分を予めマスキングをして塗装してあります。しかし、真鍮肌が荒れています。私の経験上、このような肌になるのは、すでにメッキをされたカバーを酸洗いのような強引な方法でメッキを除去した場合に似ています。試作であればプレス上がりのカバーを使うはずです。

アンダーカバーの内側。やはり肌が荒れた状態で塗装をされたように見えます。

 

 

不思議なのはトップカバーのシリアル№ 2553XXと本体の仕様が合っていること。本体の製造は1966年1月ですが、私の資料によると#252471が同年月の製造で、使われているユニットの特徴もトップカバーのシリアルと一致します。別に入手をしたカバーであれば、本体との差があっても良いと思うのですが、偶々の一致なのかな? 画像のように25万台の後期型は、レリーズのリンケージがFTと同様の方式になっており、シャッターユニットのチャージギヤ地板も、それまでの平板形状からFTと同じ丸くプレス成形された形状になっています。

PEN-Fは古いので、洗浄をすると茶色の汚れが出ます。乾燥を終えたところ。

 

 

では、洗浄後に組み立てていきます。モルトを貼ってスプロケット軸、スプール軸、巻上げ機構を組みました。

 

底部を見て分っていましたが、この個体は過去に修理を受けていますが、あまりきれいな作業ではありません。事前の印象では、巻き上げが重いと感じていましたが、シャッターのテンションが異常の強く張られているようです。

ははぁ、シャッターバネの調整ネジが何度もいじられているようです。やはりテンションを上げていますね。

 

時代を考慮すれば当然ですが、ブレーキは全く利いていません。

 

 

すべて分解しましたが、過去に分解を受けたネジがすべて緩んでいました。ネジロックをしていないからです。超音波洗浄の上、組み立てていきます

 

ここまで組んで、シャッター幕とドッキングです。ブレーキは調整が必要ですので、本体に組み込んでから組み立てます。

 

中央のOリングがブレーキで両側のリングの間に入って摩擦によりプレーキ効果を発生します。今回はゴムのOリングがカチカチに硬化して機能を果たしていないため新品と交換することにしました。

 

ブレーキは正常に作動します。仮組で作動させてみると、どうしても巻上げが重い傾向が強いので、テンションを1段下げておきました。作動は快調で巻上げゴリ感が改善されて感触も改善しました。前回の修理でテンションを上げた理由はあったのでしょうね。「シャッタースピードが出ない」「作動が安定しない」など。元々このシャッターはテンションを上げてもスピードは出ませんね。バネの力を強くするよりフリクションを低下させる方向で考えた方が良いと思います。

ミラーユニットですけど、何か怪しいことになっていますよ。この個体は過去に修理歴がありますが、ミラーユニットも地板から取り外されているため、組立完成時にファインダーの調整が必要になります。しかし、調整用のイモネジ(M1.4X2.5)は緩み止めが塗布されているため、無理にスリ割りを回そうとすると画像のようにスリ割りの片方がカケてしまい回せなくなります。そこで、イモネジを無視してファインダーの調整をしたため、イモネジと地板の間に隙間が出来ています。社員の所有カメラなのにどんな修理なんだよ ?

緩み止めをじっくり溶かして、スリ割りを目立てヤスリで応急に作り取り外しました。

 

プリズムは後期なのでPEN-Fに多く発生する黒点の腐食はありませんが、墨塗りの剥離部分から腐食が始まっています。

 

色々問題がありましたが、組立はほぼ完成しました。私の場合、PEN-F系の組立時に灰色の緩み止め塗料を塗られたネジ頭をすべて溶かして清掃しないと気持ちが悪いので余計に手間がかかるのです。

 

結局のところ、この個体の素性はハッキリしませんが、シンクロソケットの取付ナットを見ても緩み止めの痕から推測して、製品化のための試作ではなく、社員の方が個人的に通常の梨地クロームボディーから改造したものではないかと推測します。元の所有者と現在の所有者とも社員でいらしたので、オリンパス製と言えなくもないのかな・・

底部の状態。他の部分に比べて表面処理の腐食が進んでいます。

 

 

まぁ、なんです。すでに製造されてから半世紀の時間が経過し、元の所有者様もすでに他界されている現在、正確な事情を推測することは不可能です。現オーナーさんも、元のご同僚さんにも聞き取りをされているそうですが、あまりにも時間が経過し過ぎました。私の推理としては、一技術者の個人的な興味によって非正規に工場で塗装されたカバーではないかと思います。どちらにしてもオリンパス社員の手を渡って現存する特異な個体には違いありません。

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ファインダーが見えないマミヤスケッチの巻

2020年05月11日 11時00分00秒 | ブログ

時節柄、カメラを持って撮影に出かける、なんて方もいらっしゃらないのでご依頼も少ないのですが、そんな中でマミヤスケッチです。保存状態は非常に良好な個体で、作動に問題はありませんが、このカメラの持病、ファインダーの二重像が見えません。この頃のカメラはハーフミラーに金コートを使用しているため画像のような状態。

あいにく金コートのハーフミラーは手持ちに無いのでアルミのハーフミラーを寸法に切り出して接着しました。この個体はハーフミラーだけではなく、対物、接眼レンズにもカビ痕があってクリーニングでは落ちませんでしたので軽く研磨をしてあります。

前面の保護ガラスは非常に薄く、顕微鏡のプレパラートぐらいですので、嵌合のきついトップカバーを無理に入れると「パキッ」と割れる危険性が高いです。このガラスもピンセット部分のカットに耳が残っていて、純正なのか後年に交換されたものか分かりません。

遮光紙を貼ってトップカバーを閉じます。

 

 

ファインダーがきれいになりましたね。

 

 

と、事は簡単に行きません。嵌合のきついトップカバーをセットしてファインダーを確認すると・・なんと二重像の調整が狂っています。接眼の前面ガラスがトップカバーと擦れるようになりますから、剛性不足により二重像に影響が出るようです。ヨコの調整は良いけどタテは困ります。調整用のメ◯ラネジはトップカバーを分離した状態で緩めておかないと外れない時があります。カニ目もスリ割りもありませんので、ゴム板の摩擦で開けるしかないですね。

と言うことで、クリアーなファインダーと二重像が復活しました。今回は限定修理になります。

 

 

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巻上げゴリのPEN-FVの巻

2020年05月05日 20時10分00秒 | ブログ

いつの間にか連休も終盤ですけど、ホームセンターに行きましたら大勢の客が来店していましたよ。陳列商品の能書きを読んでいると、両脇から手が伸びて来る。2mルールなどあったものじゃない。駐車場を出ようとすると入場制限をしていました。みんな行くとろが無いので、家の修繕でもしようということなのでしょうね。早く平静な日常が戻って来ますように。

で、PEN-FV #1346XX (1969年7月製)ですけど、久々に巻き上げの感触がカクカクする個体です。

FVは各部のユニットが変更前の個体が多いのですけど、この個体は変更後のユニットが使われていますね。変更後のシャッターユニットはバネが強化されているので、このような症状が出易いのです。

 

トップカバーを開けてみると・・過去に分解されていますね。それでこのゴリツキですか。

 

巻上げが足りない時があるとのことですが、フィルムを装填した時に起こりやすいとのことで、スプロケットのクラッチ摩耗も疑いますが、それほど摩耗はしていないように見えます。

 

まぁ、巻き上げが重いことが影響している可能性もありますので、洗浄をして組み立てながらチェックをして行きます。

 

ゴリツキの個体はチャージギヤと軸の摩耗が進んでいることが多いですが、なんと、この個体は皮肉にも全く摩耗していません。

 

ユニットに問題はありません。疲労していないユニットです。超音波洗浄をしたスローガバナーを取り付けます。

 

ダミーフィルムで負荷を掛けて巻上げのチェックをします。特に問題は無いようです。

 

光学系はコーティングの劣化があり完全ではありません。

 

 

スクリーンの右側に外側からの突き傷があって(白い点々)その傷に黒い汚れが入って洗浄では取れません。

 

前板関係を本体に取り付けます。

 

 

ここまで巻上げのミスは発生していません。巻上げの感触も改善はしましたが、最良ではありません。

 

最後にフィルムカウンターを取り付けますが、オヤギヤに付いている小ギヤの回転が悪いものがありますので、洗浄と僅かな潤滑は必要です。

 

仮にトップカバーを載せてみると、Sが指標に僅かに合致しておらず、1との中間に近いです。

 

駒数板のストッパーを曲げて調整をしますが、ここがズレているということは殆どないのですけどね。

 

僅かな違いですが。

 

 

オーナーさんより「文字の色入れが抜けているので入れ直して欲しい」とのご要望がありましたが、洗浄をしてみると・・あれ? きれいになっているよ。なんと白い汚れがこびり付いているだけでした。

 

シリアル№は完全に白くなっていましたが、こちらもご覧の通り。この個体はアンダーカバーの三脚穴の内部に白い液体が固化した汚れが付いていました。たぶん何かの液体を付着させたのでしょう。

 

ご希望によって全反射ミラーは新品と交換してあります。PEN-FTは巻き上げのゴリツキがひどい個体がありますが、原因はいろいろな部分の不具合が合成されたもので、どこか一か所の問題ではないのです。修正については多少の経験とノウハウがありますけどね。当初の状態からすれば許容できる範囲の状態になっていると思います。

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