今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

今年最後の追い込みですね

2012年12月25日 22時32分07秒 | インポート

Dscf485401 クリスマスも終って、巷はいろいろ慌しくなって来ましたね。今年の御用納めは28日ごろでしょうか。日本列島は寒波の襲来で、東京でも今朝はマイナスになったようで寒かったですが、北海道のINOBOOさんのところは、マイナス25℃とのことで、こりゃ格が違いますね。で、その気温の中、霧氷の撮影をされていたとのことで画像が届きましたよ。コンデジ使用で、AEロックを駆使しての撮影のようです。リサイズしましたので、太陽付近の霧氷が見にくいですかね? いつもありがとうございます。しかし、マイナス25℃の早朝に撮影に出かけるとは・・・遭難しちゃいますよ。

Dscf032605 でね。カメラのお仕事もボチボチはあるのですけど、気分転換に腕時計ケースのガラス交換などをしていました。セイコー・シルバーウエーブのクォーツですけど、昔のクォーツは高級時計の位置づけですから、ケースもしっかりと作ってありますね。風防はブラではなくて本物の平面ガラスが採用されていますが、傷が多く(研磨できない)交換することして新品の風防を用意しました。しかし、ベセルが圧入で専用の治具がなければ分離することが出来ません。そこで、ジュラコン材を使って、旋盤で打ち抜き工具を作りました。ベセルの嵌り内径が28.70mmですので、28.60mmで仕上げてあります。で、めでたく分離成功の画像。

Dscf032705 ケース本体は研磨とヘアーラインを再現してあります。新しい風防ガラスとパッキンを入れて組立完了です。

Dscf032804 と、思ったところにPEN-S #4002XXが来ましたよ。過去に分解を受けていまして、シャッターはそこそこ作動していますがO/Hのご依頼です。あら、吊環とトップのファインダー後ろが激しくへこんでいますね。左側は治しにくいのですね。

Dscf032903 トップカバーを分離したところ。巻上げだ状態で駒数板の位置が違いますね。

Dscf033003 毎度同じなのではしょって完成間際。トップカバーのへこみは修正してあります。駒数板の正しい止まり位置。シャッターは、バネを故意に曲げられていましたので正規に戻して組んであります。

Dscf033102 ファインダーの対物レンズは、過去の分解(接着剥離)時に無理をしてはまぐり状態がありましたので、セットで交換してあります。その他、裏蓋開閉鍵の回転がゴリ付いていましたので、分解洗浄のうえグリス塗布で組んであります。調子はよろしいと思いますよ。

Dscf034801 大阪のご常連さんからのご依頼で、セイコースポーツマン 17Jを入手しましたが・・・変り文字盤でコレクター放出の美品と思ったのですが、確かにケースもきれいではあるのですが、ベセルと裏蓋の嵌め合いが緩い。ゼンマイを巻いても異常に進んで止まりがある。など、いろいろ問題のある謎の個体でした。おまけに、ゼンマイを巻くための角穴車の歯が3枚も欠けているという状態でした。美品でどうして欠けるかなぁ?

Dscf033202 全体のO/Hをしてひげゼンマイを修正しました。極端な進みは無くなっています。角穴車は新品を調達しましたので交換しておきます。

Dscf033302 機械をケーシングして、ベセルを取付けます。風防は一見きれいですが、過去に研磨をされた形跡がありますね。交換も可能ですが、今回はこのままとします。60年代としては何とも奇抜なデザインの文字盤ですね。老眼の目には、文字盤と針の視認性が悪いので即読は出来ないのではないかと心配です。

Dscf033402 歩度調整をします。意外に姿勢差による変化が大きくて調整は悩みますね。

Dscf033602 何とか妥協点を見つけて調整は終了。ベルトはモレラートのグラフィックをチョイスしました。シリーズ中、一番安価な製品ですが、シンプルなカーフで流石の革の質感で満足です。自分用にも買おうっと。当時としては大径なケースと奇抜な文字盤ですから、腕に着けると目立ちますけど、大丈夫でしょうかね。

Dscf033404 いよいよ押し詰まって大掃除や、すでに帰省をしている方も多いのでしょうね。私のところは年末だからといって、特別なこともありません。ここのところ続いている、セイコー・スポーツマチック5 DXのO/Hご依頼がありましたのでやっておりましたよ。1964/12製の個体は、裏蓋やベセルを分離してみると、汚れや錆がゴッテリと詰まっています。パッキンは硬化をして、その機能を失っていますが、幸い、内部への水気の浸入はないようです。

Dscf033604 すべて分解をして超音波洗浄をしたところ。今回は、ケースの傷消し研磨はしません。軽く磨いた程度で止めておきます。風防も研磨をして再使用とします。

Dscf033702 輪列を組んで行きます。二番車をセットして二番受けを取付けます。

Dscf033504 まったく同じデザインの機種と見えても、よくよく観察すると、インナーベセル、文字盤や針のデザインが微妙に異なっているので違いを見つけるのが楽しいです。カメラと違って、おなじモデルでも、沢山のバリエーションがあるのが時計収集の奥の深いところ。傷が多く、視認性の悪かった風防は、研磨でまずまずです。クラックがないので良かったです。

Dscf033904 で、完成しました。ジャンクからの復活としては精度も安定していてよろしいと思います。今年のUPはこれで終了としましようかね・・・

一年間お付き合いを頂きましてありがとうございました。みなさん、良いお年をお迎えください。

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リペイントのPEN-W

2012年12月23日 17時49分35秒 | インポート

Dscf032004 他所でリペイントを施されたPEN-Wですね。肌の状態から、たぶんウレタン塗装だと思いますが、きれいに塗られていますね。本体前面は下部のベルトの稜線部分で塗装を切っています。裏蓋はリペットも塗装をされていますので、分離はしていないようです。同じ対象物に接していますので、他の方の塗装は非常に勉強になりますね。問題は、同時にO/Hを受けたと思われるシャッターの低速不調ということです。

Dscf032102 シャッターはやはり分解歴がありました。この個体はスローガバナーの作動が非常に悪かったですね。機械式時計と同じですので、定期的なO/Hと注油は必要です。シャッター羽根の腐食がありますが、その他は特に磨耗は無いようです。

Dscf032203 本体側の2軸を組み立てていますが、本来は、組立前にダイカスト本体は洗浄していますが、リペイントの個体は、どこまで塗膜の強度があるか不明ですので、事故防止のため拭き上げとしています。

Dscf032304 この個体の問題点はシャッターではなくレンズですね。PEN-Wのレンズは、バルサム黄変や曇りが発生しているものが多いです。トラブルは経験的に後玉ですが、この個体の場合は前玉のバルサム不良です。レンズキャップをせずに太陽熱を浴びていたものかも知れません。画質にはちょっと影響があるだろうなぁ、とは感じます。剥離をして再接着も出来ないこともありませんが、保証は出来ませんのでやらない方がよいでしょう。

Dscf032404 と言うことで、フードは装着した方がよろしいでしょうね。これから塗装をします。

Dscf032503 シボ革も市販品と交換されているようです。完成したフードを装着して終了です。

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暇なので時計を作ります

2012年12月21日 21時47分54秒 | インポート

Dscf034401 カメラの方がちょっと暇気味なので所有している時計を仕上げて見ます。セイコー・スポーツマチック 5 DX で7619-9010という1966-6月製造のモデルです。このシリーズは、がっちりとしたケースにリューズ以外に日送りボタンがある2ボタンが特徴で、ハック機能付きの25石になります。バリエーションの多いケース/文字盤の中、このモデルの文字盤デザインは、オーソドックスな仕上がりで好ましいです。

Dscf035002 機械は特に問題は無く、輪列を組んで行きます。受けの合いも良く、ザラ回しもスムーズです。香箱のゼンマイはオイルは完全に乾燥した状態で、汚れが激しいので洗浄して注油をしてから組み込みます。

Dscf035201 文字盤を付けてあります。セイコーらしい非常にオーソドックスなデザインですね。針は手持ちの中から、なるべく状態の良いものを選んで使います。

Dscf035301 2ボタンのケースは、年代相応の傷がありますので研磨をしてあります。風防も新品が入手出来ましたので交換します。風防が新品となると、スカッと抜けたようにきれいになりますので、出来るだけ探して交換したいものです。

Dscf035401 テンプの振り角と片振りを見て調整をして行きます。次に時計の進み、遅れの歩度調整をします。しかし、古い機械ですから、姿勢差によって値は変化をしますので、出来るだけ安定するように調整を繰り返します。

Dscf035501 新しいOリングをセットして裏蓋を圧入します。隣りは方位磁石。時計が磁気を帯びていると歩度に影響しますから、磁石を近づけて、針が動く場合は消磁器によって消磁をしておきます。本来は歩度調整の前にチェックです。幸い、この個体は帯磁はしていませんでした。

Dscf035601 新しいバネ棒を使って、ベルトを付けます。今回はモレラートのSANBA(黒)をチョイスしました。(安いので)

Dscf035901 あら暗い画像だこと。キングセイコーなどとは行きませんが、がっちりとしたケースに2ボタンで、セイコーらしいセンスの良い文字盤で、黒ベルトとの相性も良く気品がありますね。スポーツマチックシリーズは私のお気に入りです。ご希望の方がいらっしゃればレストアを致します。


きれいな三光PENなんだが・・

2012年12月16日 22時28分44秒 | インポート

Dscf034501 久しぶりの三光PENですね。コンディションは非常に良いと思いますが、シャッタースピードが変わらない、というお訴え。距離リングのイモネジが壊れていましたので、過去に分解されていることは確実です。で、分解してみると・・・あら、スローガバナーの部品が一部欠落していますね。これではシャッタースピードは変わりませんね。

Dscf034601 その他は特に問題はありませんでしたので、すでに洗浄組立てに移っています。シャッターの欠落部品は在庫から追加をして仕上げています。ファインダーの対物レンズがプラ製ですが、幸い、過去の分解はありませんでしたので、キズはなく、きれいです。

Dscf034701 裏側から。スプロケット、スプール軸を組んでいます。スプロケットはアルミ製で、スプールは旧型ですが、幸い樹脂の割れはありません。スプールが旧型ですから、スプール軸も旧型でスリップ機能のないタイプ。スプールギヤは落とし込みの形状となっていますが、2穴加工とウェーブワッシャーは入りません。

Dscf034802

非常にきれいなシャッターリング(カム板)をセットすると、うん? 勘合具合がちょっと硬過ぎますね。元々この個体の部品だったのかなぁ? 観察すると、カム山をヤスリで修正した形跡があります。何か曰くがありそうな気がしますね。今回は、勘合を修正して組んでおきます。

Dscf035001 うちの在庫の三光PENの中から、製造時期が近時の個体と比較してみました。この頃のシャッターリングは下部の彫刻文字が「COPAL」ですが同じですね。後期は「COPAL-X」となります。ピントリングもローレットのアルマイト剥離は殆ど無く、新品のように見えますが、彫刻文字の仕様とイモネジの規格は合っていますね。

Dscf034901 全体的に部品のコンディションが良すぎるところから、疑問の目で見たくもなる個体ですが、まぁ、オリジナルの美品という判断で良いと思います。この頃のストラップは、画像のような凝ったものが付属していました。


岡谷光学 Lord ⅣB ブラックが来ました

2012年12月12日 22時31分21秒 | インポート

Dscf032704 小型ですけど、ずっしりと重いLord ⅣBが来ました。1955年製の距離計連動カメラで、レンズはHighkor 4cm f2.8と当時としては明るいレンズを搭載した高級な作りのカメラです。ブラックモデルは高いのでしょ。ファインダー、レンズなどに曇りがあり、全体のメンテナンスをします。特にシボ革ですが、この頃の材質はすでに風化しており、この個体は、上からと透明保護剤を塗られているようです。オーナーさんからは、シボ革も交換ご希望です。

Dscf032803 いろいろと特徴を持ったアイディアを盛り込まれた作りですね。底部のスプロケット軸ボタンを押すと、ピンセット先のギヤが上昇して(上のギヤに接触)バネにより手前のレバーがギヤの下に入ってロックされ、多重撮影が出来ます。右端の片に付くボタンを押し込むと、ロックは解除される仕組みです。

Dscf032902 本体のダイカストも非常にがっしりとした作りです。ファインダーはプリズム製を奢ってありますね。独特な見え方が分かりますかね。左の巻き戻しレバー(撤去中)は面白いギミックで飛び出してきます。

Dscf033002 シャッターはSEIKOSHA-MXと信頼性が高いです。巻上げは2回巻上げですので、本体側とのリンケージのタイミングを狂わせてしまうと、正常に作動しなくなります。

Dscf033101 海外に合った個体でしょうか? レンズは清掃により、非常にきれいです。

Dscf033201 巻上げ部分。2回巻上げですので少々厄介です。カムのタイミングを狂わすと正常に作動しなくなります。

Dscf033301 底部の巻上げ機構。リンケージのピボット部磨耗により、だいぶガタが出ていますね。ラッチェット留めにトラブルが出やすいようです。右のシャフトはフィルムカッター。ギロチンとか言うんですかね。

Dscf033401 ↑上のラチェット留めを解除させるリンケージのピボット部の磨耗により、作動量が少なく、ラチェットの最後で引っかかる時がありました。作動量を増やす加工をしてあります。で、レリーズボタンを注目です。今は2回巻上げの1回目を巻いたところ。

Dscf033501 2回目を巻上げると・・レリーズボタンがぴょこんと飛び出して来ましたね。すると、トップカバーの上にオレンジ線が見えるわけです。

Dscf033601 このレンズの化粧リングね。普通はプレスで作りますが、この部品は挽き物で製作されています。よって、かっちり重いです。数が出ないのでプレス型を作らなかったのか、とにかく、この頃は道具として良いものを作っていると思います。

Dscf033901 シボ革ねぇ。もう10年以上前に専門メーカーから仕入れておいたシボ革の中から、これニコン用だったかな? 当時カメラメーカーに納めていたメーカーの製品です。今では手に入りません。まだ種類は在庫していますが、これにしましょうかね。

Dscf034101 ところが、古いシボ革の剥離が大変です。すでにぐずぐずに風化しているところに、当時の接着剤は剥離が困難です。ちょうど、卒業証書が入っているワニ筒に貼ってあるような材質ですね。出来るだけオリジナルが良いのですが、触っている間に、どんどん削られていく状態なので、実用とするには交換は仕方がないと思います。

Dscf033903 オリジナルのシボ革(紙?)は厚さ0.2mmしかありませんので、カメラ側の貼り込み深さも非常に浅く設計されていますが、現在のビニールシボ革(0.4~0.5mm)をそのまま貼るとでっぱり気味となって雰囲気が良くありません。市販の型抜き両面テープ品を貼ってあるのを見ますが、ピタッと決まっているものに出会ったことがありません。当然、そのまま使用したのでは良い結果は得られませんので調整をしてあります。それでも前面のダイカスト面はまだ良いのです。シボのパターンも、このカメラに良く合っていると思います。グリップ感も格段に良くなっています。

Dscf034001 問題は裏蓋でした。剥離時の画像を撮り忘れましたが、元々、0.2mmのシボ革を貼る設計のため、貼り込みの余裕が無く、しかも、画像前面の開閉鍵との接合部分は窪んでいてシボ革が密着しない。また、背面は内側の内面反射防止のスリットがそのまま逆パターンで出ていてフラット面ではないのです。薄い紙なら貼れると言う設計です。一般的に開閉鍵部分はネジ止めで分離できる構造が多いのですが、このカメラはカシメとなっており、分離出来ないことが、シボ革の貼り込みを困難にしています。

Dscf034102 なかなか意欲的なギミックを持ったカメラですね。巻き戻しダイヤルと見える部分を引き出すと、クランクが出現します。ちょっと、苦肉の設計とも見えなくは無いですが・・

Dscf034202 ピンセット先のレバーを上げておくと、ヘリコイドの回転途中でクリック感が出て止まるところがあります。絞りを5.6右のに合わせるとスナップ撮影モードとなるようです。

Dscf034301 レンズシャッターカメラですから巻上げストロークは1回で充分可能と思いますが、2回巻上げとしていることで、機構の複雑化や作動部の磨耗が目に付いたカメラでしたね。しかし、材質や加工などは非常にコストを掛けたもので、現在でも名機と言われて評価が高いのには納得します。この時代にブラックモデルと言うのも珍しいですが、塗装の下地に黒めっきを施してあり、手抜きのない物作りが見て取れます。真鍮地が露出した方が良い方には残念ですけどね。