♬どこまで続く泥濘ぞ三日二夜食もなく雨降りしぶく鉄兜かぁ。。またPEN-Fに戻りました。すでに本体とカバーの洗浄は終わっています。シャッターユニットは固着状態です。では分解します。
シャッターを修理して次はリターンミラーユニットも正常に作動しません。当初はバネが折れているものと判断していましたが・・・あれ~、ロッドが折れていますね。この不具合は私も過去に経験がありません。
基本的にカシメで組まれているユニットですので分解はしないのが前提でしょうけど、一応、部品設定は関連部分を含めて「B36レバーASSY」としてありましたので交換は可能だったようです。しかし、部品交換をすると微妙に調子が出ない場合があり、再カシメは緩みやすいですから殆どの場合ユニットごとの交換だったと思われます。私もユニット交換をします。
これは同時期に使われた別個体のユニットですよ。洗浄注油とグリス塗布をしてからリターンミラースプリングをセットしてあります。
これは次の個体。あれ? また艶消し塗装が光っていますね。臭いをかいでみるとミシン油(スピンドル油)の臭いがプンプンします。最初の頃の個体に同じようなのがありましたね。しかし、こちらの方が大量に浸けられています。不調の修理のつもりでしょうけど、ミシン油で直れば私たち修理屋は苦労はないです。
レンズマウントを外してみると・・あ~溜まっていますね。
シャッター幕にも付着しています。ミシン油は拡散してしまうのでピンポイント以外では使いません。スクリーンのフレネルレンズにも染みていますので使えるか? なんと裏蓋の圧板裏側からも大量の油が出て来ました。水没ならぬ油没カメラだものなぁ、これで普通の個体と同じ工賃では合わないなぁ・・暑いのにエアコン壊れたし・・
プリズムとフレネルレンズも流れ込んでいます。
リターンミラーユニットにも大量に・・
裏蓋の圧板を取るとそこまで油が溜まっていました。裏蓋は2枚合わせなので洗浄が困難・・
で、極力、洗浄脱脂をした状態。しかし、油は金属素材の組織まで浸透しているので、脱脂をしても内部から浮き上がってくるのです。
推測するに、リターンミラーがフリーズしたので、「リターンミラーの蝶番の動きが悪いので油を着ければ」との考えだったのでしょう。素人さんでは無理からぬ考えと思いますが、それにしても自転車の注油ではないのですから限度というものがあるでしょうに。私などは水油の注油は針の先ぐらいですよ。ということで、この猛暑の中でやりたくなかった個体。付属のレンズと合わせて完成です。ミラーボックス内の艶消し塗装を見てくださいね。しかし、いくら手を洗ってもミシン油の臭いが浸み込んで落ちません。
次の個体は裏蓋の三脚穴周辺が陥没していますね。安物の三脚では固定面が柔らかく、調子に乗って締め込むとこのようになるのです。板厚もペラペラですし・・
シャッターテストをしていると、稀に「キュッ」と異音がする。原因はアイドルギヤの軸(ネジ)が緩んでいました。
ここのネジは緩み止めにポンチが3か所打ってあるはずですが、加工がありませんね。緩み止め対策をしておきます。
元々ブレーキ固着の個体でしたが、応急対策をして巻上げレバーを巻くと最後のブレーキ部分がかなり重くなる。原因はブレーキリングの内周の腐食でした。研磨修正をしておきます。
これがブレーキリングホルダー。Oリングが嵌っています。これがブレーキリングの内側に入ってブレーキの役目をします。
巻き上げの感触と作動は良好です。最後にハンマーを取り付けて完成。
連日の猛暑が続いていますね。この暑さだと室内にいても熱中症の危険があるので気を付けないとね。で、エアコンを直していました。今年の夏はこれで凌ぎます。シャッターユニット完成と思いましたが、巻き上げがロックします。これも稀に遭遇する不具合ですが「ピンセット先は「慣性止メ」という名称の部品で、シャツターを切るとブレーキ軸側に飛び出してブレーキ軸の回転を止める役割です。レリーズボタンを離すと飛び出しが引っ込んで次の巻上げが可能になるわけですが、その慣性止メが復帰しない。慣性止メガ何らかの力によって平滑性が失われると地板との接触抵抗が増えて戻らなくなるという故障。取付軸に全くガタがなく復帰用のバネも非常に弱いためにシビアな世界で不具合となってしまう部分ですね。
PEN-Fも残りは少なくなって来ました。今回の個体たちはシリアル№でいうと20万台が殆どで、ある意図を持って集められたように感じます。直す方からすると、すべて同じ仕様のユニットが使われているので作業はし易いですけどね。そこで、敬遠気味に残った#1350XXに掛かります。FTでも初期型は難儀をするのにFの初期型ですからね。機械は完全にフリーズ状態。トップカバーは凹みとメッキの劣化が確認出来ます。これは修正をしておきます。
まず、分解をして行きます。思ったより内部のユニットはきれいで消耗は進んでいないようです。巻上げレバーの部分が初期型です。
すでに全て分解、モルトの除去、洗浄を終えて組み立てています。巻上げレバーの構造も初期型は中央の黒い部品とプレス製のレバーをカシメて作られています。以後はプレスだけの1枚ものになります。
初期型は巻上げ爪を下方へ押さえるバネが画像(モーターのコアのような)のように板バネでしたが、これをコイルバネに変更しています。最初からコイルバネの方が設計は簡単なように思えますけど、ちょっと考えすぎたのかな?
シャッターユニットも悪くありません。レリーズ板(縦の帯板)はレリーズ送りの構造が変更になる前のタイプです。
初期型は下ギヤ押えを止めるネジが2つの設計ですが、以後は1つに変更になります。取付位置が動くことを嫌って2つにしてあると思いますが、ここは1つでも動きませんね。よって、部品点数の削減と工数の低減。
組み上がってグリスワークを終えたところ。右のレリーズ送りが初期のタイプ。以後はFTに通じるリンケージタイブになります。
リターンミラーはミラー押えネジがあるタイプ。レンズマウントのレンズ位置合わせは●になっているので最初期ではない。(最初期はスリット)この頃はまだ組立が洗練されておらず、シボ革の接着剤がマウント裏側にはみ出しています。以後のF及びFTでは接着剤のはみ出しは殆どありません。
ファインダー枠は破損のため交換、トッフカバーの凹みは修正しました。仕上がって見ると・・これが良いのですよ。巻上げスムーズ、シャツター快調、シャッターダイヤルの感触最高。マウントのレンズ装着傷は殆どなく、あまり使われていない個体でしたね。
さて、長かったPEN-Fも、いよいよ終盤に入って来ました。私も20台近く連続でPEN-Fをやったのは初めてでしたね。お仕事としては有り難いことですが本音は少し飽きた。で、復活させようか迷って残しておいた個体が2台あります。この個体はシャッター幕が突かれたようでヨレヨレになっています。それとフィルムレールの腐食ですね。
ニコイチとも考えましたが、安易に個体数を減らしたくないので修正をして復活させることにします。
伸びた金属は平面には戻らないのでこの程度としておきます。フィルムレールも実用上は問題ないのですがフィルムに傷が付かないように修正をしておきました。
こちらの個体はシャッター幕はきれいでフィルムレールの腐食が多い。これも修正をして仕上げます。多少安い値付けになっても使ってもらえる方が良いですからね。
今日(23日)は暑かったですね。こちらの近くの青梅市では40℃超えだそうです。私も軽い熱中症になったようです。この個体#1271XXは一見未分解と思いましたがファインダーのピント再調整を受けていますので、たぶんSSで修理を受けているようです。そこで、少し疑問がありまして・・ご覧のように裏蓋の内側に施されている艶消し塗装の艶消しがあまいというか塗装していないんじゃないの? 上が正常な個体。本体部分の艶消しもあまい感じ・・
拡大すると、粒子の荒いバサバサな塗装に見えますね。一応塗装の専門家としての見解としては、「これ表側の塗装が流れただけじゃね?」というようにも見えます。艶消し未塗装の裏蓋が生産に使われた??
まぁ、分解歴があるので途中で入れ替えがあったのかも知れませんが、初期型なのでリターンミラーはネジ付タイプでこれは納得です。しかし、プリズムのレンズホルダーにプリズムをホールドするためのバネも無ければバネ掛けのラグもありません。(ピンセット先の位置)PEN-FTになっても10万台付近までにはバネは使われているのですよ。それがFの初期型についていない? なんで?
この個体で15台仕上げたことになります。1台は残念ですがドナーとなって頂きましたが、1台のみで留めるにはやりくりに苦労しましたよ。接眼部のプリズムに内部の腐食があります(左)ので、ドナーから交換して組み立てます。
接眼枠はもう使ってしまってありませんし新品を使う許可もありません。よって取付部の欠け程度は接着で再使用とします。
ストロボの発光テストが不良です。PEN-Fは古く、長期に寝かされていた個体の場合センターピンに腐食や汚れがあって導通不良となっているものです。分解清掃をしてOKとなりました。
フィルムレールはこんなところですね。ファインダーはプリズムの交換できれいになっています。今回はこれでおしまい。15台を再び市場に戻すことが出来て良かったです。しかし、PEN-FをUPしていると同じPEN-Fの修理ご依頼が入ってくるものなんですねぇ。
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