今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-FTが続くの巻

2022年09月28日 20時50分00秒 | ブログ

ブログで取り上げた機種の修理ご依頼が多くなる傾向にありますが、先日のハーフミラー製作のお知らせも影響したのかもしれませんね。PEN-FTが続きます。この個体#2367XXはスクリーンをスプリットイメージに改造されています。

トップカバーを開けて気になるのは・・まず、接眼プリズムの取付角度が正確ではありません。次に貼られている遮光用モルトに隙間が空いています。これでは意味がありません。最後は巻上げレバー裏の防塵カバーが付いていません。

接眼プリズムの取付位置を見てください。何か修正の意図があったのでしょうかね。

 

 

では、分解洗浄から組み立てて行きます。23万台付近では、巻き上げレバーの取付けネジがスリ割り(-)のため、緩み止め剤を塗布されているので緩めることが非常に困難です。

 

23万台ですでにシャッターバネは条数の多いタイプに改良されています。シャッターユニットを洗浄してチャージギヤに潤滑をしたところ。

 

シャッターユニットは良好で、すでに本体に搭載できました。

 

 

露出計の基板ですが、使われている調整用抵抗がすべて交換されていまして、オリジナルの調整が分からない状態です。ここまで調整をして2段ほどアンダーになっているのが不思議です。

 

巻き上げレバー裏の「カバー」(画像は当方ストック)が欠落しています。自然に取れて紛失するような部品でもありませんが・・特に支障はないのでこのままで良いか?

 

メカ部の組立終了。巻上げ感触も改善していると思います。

 

 

38mmマクロは繰り出し最大で実測64mmでした。繰り出しが長いのでヘリコイドグリスが抜けています。

 

レンズも汚れています。分解でレンズの清掃とヘリコイドグリスの交換、また、絞り羽根の戻り緩慢を改善させます。

 

前群を分解します。

 

 

後玉ですが、汚れと見えたのは後玉表面のコーティングの劣化でした。

 

 

最短0.156mと彫刻されています。玉数は少ない特殊レンズですので大切にされてください。FT本体はオーナーさんの所有されるFTの中で思い入れのあるメイン機だそうですので活躍してくれると思います。#2367XX (1968-10月製)

 

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過去限定修理のPEN-S3.5の巻

2022年09月23日 09時45分00秒 | ブログ

中古店様からの修理ご依頼の場合、どうしても予算の関係で限定修理とならざるおえない場合がありますが、この個体は、購入されたオーナーさんから全てオーバーホールのご依頼頂いて里帰りしています。ファインダーの対物レンズは過去に清掃を受けていて、レンズの接着がすごいことになっていたのは記憶にありますが、手を付けることが出来なかったのです。

駒数ガラスがトップカバーより下がっています。

 

 

これは、オリジナルのエポキシ接着が外れて、それをゴム系接着剤で隙間が空いたまま接着をされてるのです。古い接着剤の除去など、やり直すためには工数が掛かるので、手を付けられなかったものです。

 

先にシャッターユニットは洗浄組立をしておきます。

 

 

ファインダーはすごいことになっています。

 

 

フレーム枠もすごい接着と言うよりはエポキシパテ?

 

 

では、本体の洗浄から組み立てて行きます。

 

 

ファインダーレンズのやり直しと駒数ガラスは新品と交換しました。

 

 

レンズの清掃。ナットが緩んでいて絞りクリック位置がズレています。このナットには緩み止めが塗布されているはずですが、見当たらないので過去に分解をされたようです。組立後、緩み止めを塗布しておきます。

 

これでPEN-S3.5は完成。やはり限定修理ではなくオーバーホールでやらせて頂いた方が自由に作業できます。一緒に来たPEN-Fは中古店さんのジャンクコーナーからの救出だそうです。

 

こんな良い個体がなんでジャンクコーナーなんだろう? #1582XXと改良ユニットが使われた未分解機です。しかも持病のプリズム腐食も殆んどありません。これは掘り出し物です。

 

では、いつものように分解洗浄から組み立てて行きます。まずモルトを貼ってスプロケット軸から組み立てます。

 

シャッターも全く消耗していません。しかし、ブレーキについてはゴムのOリングですから経時的に見て交換することにします。

 

ブレーキを取り出しました。

 

 

新しいOリングをセットしてシャッター本体に組み込みました。

 

 

前記したとおりプリズムの状態はむしろ良好な方です。スクリーンなどを清掃して組み立てます。

 

全反射ミラーを清掃したところ反射率は落ちてはいますがきれいですので再使用とします。

 

これで組立完成。あとはピント調整などをして行きます。

 

 

外観にへこみも無くメカ的にも全く問題のない個体がジャンクコーナーとは・・それだけ商品的に価値のないカメラという判断だったのでしょうかね。ちょっと寂しいです。でも良い方に救って頂いて幸運でした。

 

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羨望の組合せPEN-FT(B)の巻

2022年09月17日 20時10分00秒 | ブログ

#4407XXのPEN-FT(B)と38mmパンケーキの組合せ。しかも程度は美品とくれば私も欲しいですね。いつも思うことは、40万台のFTは確実に存在するのに、あまり見かけませんよね。普通であれば生産後期の個体が市場に多く残って当然と思うのですが出て来ません。マニアさんが仕舞い込んでいるのでしょうか? それとも別の理由があるのでしょうかね。FTの方は外観は美品ですが、ファインダーの劣化や巻上げのゴリツキ、電池液漏れによるリード線の劣化などが目につきます。

38mmパンケーキの方も美品ですよ。殆ど使用されなかったのでしょう。ただし、パンケーキの持病のヘリコイドグリス抜けやレンズのカビ汚れが多いです。

 

今回はパンケーキの方を先に片づけて行きます。

 

 

意外に絞りの復帰がスムーズでない時があって手こずりました。設計自体はガチャガチャのレンズですから、部品の嵌合によって不具合が出易いのです。レンズのマウント面に全く装着によるすり傷が無いという個体。

 

FTのトップカバーを開けてみると・・未分解機と思ってましたが、露出計の調整抵抗がオリジナルの固定抵抗ではなく、リード線を引き出して半固定抵抗となっています。後年に交換されたものか? しかし、リード線はオリジナルのもので半田付けもやり直したようには見えません。工場でやったの??

Cds本体のユニットは留めネジの緩み止めが外されていないことから分解されていないことが確実です。44万台であれば、このユニットではなく、基板別体タイプが使われていても良い頃ですが、それ以前のタイプのままです。

 

圧板の取付が4点タイプですね。これは33万台付近で2点タイプに切り替わっているはずです。本体の製造時期から見ても33万台~34万台付近の個体と思われますが、ではトップカバーのシリアル№は? トップカバーをSSで部品カバーと交換されている可能性もありますが、私は、そもそも40万台が少ないのは、33万台付近で何らかの理由により、それまでのシリアル№の付与を改め、40万台に飛んだか、或は混用したか? どちらにしても40万台の個体が少ないのは33万台付近から整数順の付与がされなくなったからではないか? と思っています。

九州地方に台風14号の被害が発生しているようですね。私のところでも昨夜から狭い範囲で線状降水帯が発生して、何時間たっても真上に強い雨雲があって豪雨が降り続いておりました。私の子供の頃は台風と言えば室戸台風とか伊勢湾台風などが記憶にありますが、最近の台風は進路や経験をしたことのない豪雨など温暖化の影響が強く出ているかと思えます。直近の台風は日本海側を日本列島に沿って進む傾向があるようで、関東地方もこれから警戒が必要です。で、実質33万台の生産の新しい、しかも、あまり使用されていない個体ですので特記するようなところもありません。シャッターユニットを洗浄して各部の点検をしています。チャージギヤ軸の摩耗も無く(少しはある)全く問題が有りません。後期のユニットですので、シャッターバネは条数の多いタイプとなっています。

前板関係をメンテナンスしてシャッターユニットを組み込んだ本体と合わせます。

 

 

ハーフミラーは交換しておきます。

 

 

巻上げゴリが強く出ていましたが許容できる範囲に改善しています。露出計の調整をしましたが、工場製と思われる半固定抵抗はそのまま残しました。私も始めて見た仕様ですので貴重な資料ですから。

 

38mmパンケーキは種類としては「特殊」に分類されるのですね。このカタログ時点での価格は7,300円(ケース400円)となっています。標準レンズの38mm f1.8の9,800円より安いんだぁ。

 

メーターユニットの製造は「44.12.24」表示のシールが貼られています。本体の製造は1970年1月ですので符合します。この時期に製造された個体をデーターベースから拾ってみますと、#3056XX-1969.11 #3628XX-1970.6 #3510XX-1970-3 #3081XX-1969.9  #3041XX-1969.10   #3441XX-1970.3 などがありますので、大体この辺りに製造された個体と思われます。それが44万台のシリアル№が付くのはミステリーです。生産後期ですので、協力工場へ生産移管されたものか? まぁ、今となっては真相は分かりません。しかし、40万台の個体が極端に少ないのは事実ですので、シリアル№の付与について何か事情があったはずです。

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残念なペトリカラー35の巻

2022年09月14日 22時15分00秒 | ブログ

在庫切れとなっておりましたPEN-FT用ハーフミラーの新ロットを小ロットにて製作しました。益々時代はオリジナルと同じ銀メッキのミラー製作は困難となっており、それに伴ってコストも上昇していますが、価格は据え置きの1枚6,000円です。次ロットの製作は決めておりませんので、ファインダー劣化のFTを所有されておられる方はお早目のメンテナンス依頼をご用命ください。また、プロ、ハイアマチュアの方には部品として供給致しますのでご連絡をお待ちしております。

で、なんか最近ペトリカラー35が来ますね。なかなか厄介なカメラなんですが・・この個体は外観は比較的きれいですが、持病の沈胴の作動機構に問題が有り、その他、露出計やファインダーにも不具合があります。

 

オーナーさんが不良個所を書いて貼り付けてあります。

 

 

沈胴の繰り出しや収納はこのダイヤルで行いますが、回転が異常に重い。それに、回転の1か所でギヤの歯が外れます。たぶん、ヘリコイドのグリス切れにより動きが重くなっていて、それを無理に作動させていたためにギヤの歯が損傷を受けたのでしょう。

この個体は過去に分解を受けていまして、ファインダーブロックも一度取り外されていますね。露出計の針が曲がっています。ファインダーを分離する時に接触をしたのでしょう。また、反射ミラーが外れています。

 

このカメラの売りでもありウィークポイントでもありますね。沈胴を3つのギヤを介しているので、正常であってもバックラッシュが大きい傾向にありますが、この個体の場合、歯の損傷が大きいです。アイドラーギヤの赤部分の歯が磨滅が激しく、その歯が噛み合うタイミングで飛び越しが起こるのです。

ファインダーのメンテナンスをします。劣化したモルトを交換しておきませんとレンズに付着して接眼から見えてしまうのです。

 

すでに対物レンズを分離して清掃しました。この個体の後側の対物レンズはガラス製でしたが、製造時期によって樹脂製もあり、不用意に拭き上げをすると曇ってしまうので注意が必要です。

 

この個体は過去に分解を受けていますが、フィルムカウンターのマスクが破損していました。これは右片側のみネジ留めのため、分解作業時に不用意に手が触れてしまい、引っかけて折れてしまうのです。この個体の場合、窓レンズも外れ掛かっていましたので、それが原因かも知れません。

シャッターのメンテナンスとレンズが曇っていますので清掃しておきます。

 

 

一度、正常に作動していた露出計が原因不明で動かなくなって、その復旧に手間取りました。カメラ底部の巻上げ時のみ露出計を作動させる機構の接片の導通不良のほか、電圧チェックボタンの基板の接片の導通不良もあります。また、ベーク製の基板が上方に反り返る変形をしていて、接片がトップカバーに接触してショートするのが原因などいろいろありますね。

裏蓋のモルトも交換しておきます。

 

 

最近よく見るようになったカメラですね。人気が上昇しているのでしょうか? この個体の場合はヘリコイド部の回転が重い状態で使われたため、沈胴ダイヤルのギヤが磨滅してギヤ歯の飛越しが起きていました。このカメラのウィークポイントですね。ギヤのダメージを見る方法としては、沈胴ダイヤルの回転に異常なバックラッシュ(ガタ)のある個体は要注意です。

 

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こんなのあり? PEN-Wの巻

2022年09月12日 20時45分00秒 | ブログ

オーナーさんが入手されて来たPEN-W #1255XXですが、整備を受けていましてシャツターは作動するのでレンズの曇りだけ清掃して欲しいとのご要望です。なるほど各層のレンズが夜空に見上げる月のようになっています。しかし、整備を受けているのならレンズも清掃されているだろうに・・

 

後玉側から見たところ。こちらはバルサムが黄変して曇ることが多いです。

 

 

前玉のみにしてみました。そんなに酷くないのかな? と思った私が愚かでした。

 

 

レンズを取り出してみると・・(^^; 本来はバルサム貼り合わせとなっている2枚のレンズがバラバラで出て来ました。

 

PEN-Wのレンズ構成はこのようになっています。の部分のバルサムが無い。おそらくバルサムが劣化をして曇っているので、レンズを加熱してバルサムを剥がしたのでしょう。私も多くの個体を見て来ましたが、このような乱暴な修理を初めてみました。後玉も同じでしょうね。

同じくレンズ曇りで20mmも一緒に来ました。こちらも何度か分解清掃を受けていますが、清掃が雑というか・・後玉も含めて分解清掃をします。

こんな個体もあるのだなぁ、というお話でした。皆さんもご注意(しようがないけど)ください。

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