ミノルタ用のレンズアダプターが付いたPEN-F #2617XXが来ました。オーナーさんからはPEN-F・FTの分解ジャンクが付属して来ましたので、ご自分でも分解をされているようです。この個体もPEN-Fですから、結構ヤレていますけど、「アダプターを外してレンズを装着するとミラーフリーズする。張力調整」というご依頼ですが、巻上げのゴリツキやシャッターの作動を見ますと、かなりフリクションが大きいと思います。このままテンション調整をしても、シャッタースピードやフリーズは改善されないと思いますね。まずは全体のO/Hをしてからのことだと思います。
リターンミラーの交換をご希望ですが、このミラーはビス付の初期型が付いていますね。シリアル№の頃はビスは無くなっているハズですから、過去にホルダーごと交換されているのではないでしょうかね。とりあえず、内部がどうなっているか、分解して行きましょう。
何かUPが長くなりそうな予感がするんですね。トップカバーをあけましたら、あらら・・ちょっと騙されちゃいましたね。この個体は#118000 辺りの極初期の個体で、それに26万代のトップカバーを付け替えたものでしょう。何度も分解を受けているようです。
シボ革も古いので材質が硬化していまして、それを無理に剥離をしてピンセット側は生地が切れてしまっています。接着剤もてんこ盛りって言うんでしょうか・・
とにかく分解をして行きます。巻上爪の潤滑が切れたところに水油を着けられて汚れと共にドロドロになっています。で、このセットスクリューが曲者。軸のネジ部を見て頂ければお分かりのとおり、ゆるみ止めを塗布されて締め込まれているため、緩めようとすると、「ポキッ」と折れてしまうことが多いのです。こんな細いネジに頭の大きなスリ割りですから、オーバートルクが掛かってしまうのです。みなさんは開けない方がよろしいです。
要するに掃除屋だよね。ダイカスト本体から、全ての部品を分離しています。古い接着剤を溶剤で溶かしながら清掃して行きます。
全て清掃をしてから洗浄を終えた状態。で、この個体は裏蓋を開ける時に、巻き戻しノブを引き上げても、非常に渋い動きが気になりました。下が、上下するカギ板。
原因は画像で分かりますか? カギ板の付くダイカスト面が平面でないのが分かりますでしょうか? これによって、カギ板の昇降に抵抗となって作動不良となっているもの。どの個体にも、ダイカスト鋳造時のヒケと考えられるタワミがあるのですが、この個体はちょっと大き過ぎるようです。裏蓋があるため、外部からの衝撃とは考えられません。高さ調整をして改善しておきます。
次はシャッターですが、これも問題ありですね。カムには水油が多量に付着して、ブレーキも全く利いていません。
ピンボケの画像ではなくて、スローガバナーがグラグラしているのです。過去に分解或いは、他の個体から移植されたのかも知れません。締め込みが不完全な場合は、シャッターダイヤルの回転により、緩んでしまいます。
リターンミラーを復帰させるタイミングを作るレリーズレバーが曲げられています。意味不明。推測するに、前板を取付ける時にレバーとの干渉をキャンセルせずに押し込んだ? のではないでしょうか?
前板にも水油が回っており(スクリーンにも)洗浄してありますが、まだ、シリコーンのような滑りが落ちません。何を着けたのでしょう? 初期型ですから、留めビス付のリターンミラーを交換しています。中期以降は留めビスが省略されたため、後年ミラーの脱落事故が発生しています。FTでは付けられないのですけどね。この分で行くと、UP枚数が増えてしまいますから、適時省略することにします。
オーナーさんからご連絡がありました。このカメラはオークションで購入して、巻上げに問題があって有名カメラチェーンを通じて修理に出されたとのことです。え~、嘘でしょ。たぶん、殆どアマチュアさんの分解が原因と思いますが、部分修理にしても、ここまで問題のある状態で修理完了とは理解が出来ませんね。まっいいや。で、オーナーさんのご希望でブレーキも交換しました。この部分に着けられていた水油はシリコン油でして、いくら脱脂をしてもつるつる滑るのには閉口しました。
ミラーフリーズの原因はこのミラーユニットが原因のことが多いのです。洗浄して点検していくと・・まず、針先の裏からのビスが緩んでリンケージが飛び出し、干渉して作動不良となっています。ビスの緩み止めのポンチが甘かったものです。再カシメをしておきます。
次の問題は、左側のメインスプリングです。右側がこの個体にセットされていたもの。左が良品。オーバーテンションを掛けられて変形していますね。これではトルクは出ないのです。右側のリターンミラー抑えスプリングもヘタリがあって外れる不具合がありますので、両方とも交換します。
本体と前板関係の両方が完成したところ。
メカ部は組み上がりました。作動トルクも大きくなって、レンズを装着した状態で快調に作動をしています。
裏面からの眺め。しかし、極初期型とは言え、満身創痍の状態でよく動いていたと逆に関心しました。結局すべて不良だったようなカメラですね。さて、完成までもう一息です。
お話しは違いますが、ここのところ有名人がお亡くなりになる訃報が続いていますね。女優の森光子さんは92歳の天寿を全うされましたが、この方の記憶は、私たちの世代ではテレビドラマの「時間ですよ」のおかみさん役ですかね。戦史を読んでいると、この方は戦時中は外地の将兵を慰問されていて、内地に帰国す時には、海軍の用意した重爆に搭乗したのですが、すでに制空権をアメリカに奪われ、昨日、同じ時間帯に見方の重爆が喰われた空域を飛行している時、尾部銃座から後ろに付いている護衛戦闘機の搭乗員に無邪気に手を振っていたので、戦闘機の搭乗員は気が気ではなかったと記述した文章を読んだ記憶があります。運が悪ければ、その場で撃墜されて、後の森光子はなかったわけですから、死線を越えた波乱の人生を生きた方だと思います。
問題山積の個体ですが、もう何も無いようにと思っているところへアイピース枠のカケです。古い個体ですから樹脂の強度が持たずに破損したものです。今回は接着で再使用としておきますので、アクセサリー類は取付けない方がよいです。
で、本当は極初期型のFはやっと完成です。通常の2倍の工数が掛かっています。全反射ミラーは拭き傷と劣化がありましたので、交換したいところでしたが、今回は断念しました。まぁ、カメラには罪は無いのですが、シリコン油のベタベタには閉口しました。お陰で工具までツルツルです。リターンミラーボックス内にも油が浸透しており、艶消し黒塗装がやけに光っていましたよ。浸透拡散性の高い油は使用出来ません。
時計の作業を進める時間が取れませんでしたので、風防の加工だけやっておきました。先日レストアした国鉄彫刻入りのセイコー・スーパーですが、全く同じ仕様と彫刻入りのスーパー(不動)が入手できました。この時代の同仕様モデルが見つかることは非常に珍しいのです。ただし、今回のスーパーは1955-6月製と前回の個体より一年以上後のものです。国鉄の退職者用に大量に調達されていたのでしょうね。で、付属の風防は黄ばみだけであれば味となるのですが、クラックがあるため、新品と交換をすることにしました。しかし、現在、手に入る風防(左)は、オリジナルに比べて外周の角の部分が角ばり過ぎています。そこで、オリジナルの形状に合わせて、削って成形をしてあります。