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お願いをしていましたミノルタ・レポSのトップカバーは、大阪のご常連さんから供給のお申し出がありまして調達が出来そうです。ありがとうございました。
で、「チェックメイトキング2、こちらホワイトロック」コンバットの無線機みたいなカメラはヤシカ・ラピード。発売は1961年2月で価格は¥11,800だったようです。https://www.youtube.com/watch?v=0Z9eC-MHgAw
ハーフカメラですが、全金属製で重いですね。縦型とすることでハーフ判が横フォーマットになるわけです。キヤノンダイヤル35と同じようなアイディアですが、あちらは1963年11月の発売です。エンブレムバッチまで付けて、かなりの意欲作ですが、あまり売れなかったようですね。なんか分かる気がする・・
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初めての人は必ず疑問に思う「巻き上げはどうするの?」実はストラップを引けば巻き上げが完了するのです。ということは、ストラップを持ってプラプラ歩いていると巻上げられてしまうということです。
内部は普通のレイアウトですね。スプロケットが無いので、スプールで引っ張るため、枚数が進んで行くとコマ間が開いてしまうという現象があるようです。
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本当は、この時点で作業を中止しようかと思いました。レンズのヘリコイドネジが完全に固着していて回りません。捻じると全体が外れてしまいました。1961年当時でもグリスの質が悪かったですかね? 戦後すぐの蛇腹カメラには多い不具合ですけどね。
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この時点で2時間ほど経過しています。「回らない~」とにかく銜えるところがなく、傷を付けるわけにも行きません。25mmのリングスパナで保持してダイヤル側を秘密の特殊工具で力いっぱい回すと僅かに動きました。手に固形となったグリスが落ちて来ました。「しめた」と思い逆に回すと、今度は完全に固着してしまいました。「あ~止めたい」
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ここで止めると工賃を頂けないので、また2時間が経過しました。へへへ、意地で回してやったい。
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一難去ってまた一難。あ~、後玉が完全に曇ってる・・止めようかな? しかし、折角レンズのヘリコイドを緩めたしなぁ。
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後玉を取り出しました。ダメだこりゃ。
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現存数の少ない貴重なカメラなので頑張って研磨しておきました。これで3時間。
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シャッターダイヤルを取り外すとCOPAL-SVが現れます。
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ハーフカメラ用のシャッターユニットが存在しない頃ですから仕方がないですが、完全にオーバースペックのユニットですね。1/500もあるし・・清掃注油で問題ありません。
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特徴的なファインダーの対物レンズは四隅に金コートが施されていて、デザイン的にも印象が強いです。金コートは拭くと剥離をする危険性が高いので触らないこと。
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やはり無線機の感度メーターのように見えますね。LV数値の露出計。受光部が先端にあって、撮影の前に受光部を対象物に向けてLV値を読み取ります。
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普通はファインダーカバーなどは真鍮のプレス製で充分と思いますが、ダイカスト製にハンマートーン塗装を施し、窓縁はダイヤカット加工のうえシリアル№彫刻色入れと非常に手の込んだ作りです。
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問題のレンズです。分解は知恵の輪のようでした。劣化したヘリコイドグリスはセメント粉のようになっていて溶剤にも溶けません。どんな成分のグリスが使われたのでしょうね。現存の個体はすべて同様になっていると思います。
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すべて清掃をして組み立てます。
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Pの位置にはクリックのための極小のスチールボール(スプリング)が仕込まれています。分解時には無くさないこと。
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本体に取付けて無限の確認をしておきます。Cは0.8mのクローズアップ、Pは2mのポートレートです。
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縦の画像が正式側になるんでしょうね。ロボット三等兵にも似てるな。子供の頃、貸本屋さんで良く借りて読んでいました。
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宇宙飛行士のヘルメットシールドのように見えますね。枠は磨き出してあります。
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設計にハーフカメラは小型軽量という発想はないですね。本体は板厚の厚い真鍮プレスのハンマートーン仕上げ。質量は540gと重いです。64枚撮れるというのがセールスポイントですかね。当時の人気グループ、リリオ・リズム、エアーズを使ったコマーシャルは、ヤシカとしても力を入れていたようです。この時代はヤシカは実業団のバレーボールチームを持っていて日立武蔵や日紡貝塚などとの試合をテレビで見た記憶があります。東京オリンピックの時は各チーム選抜のナショナルチームではなく日紡貝塚メンバー中心のチームで出場したと思います。まぁ、コレクション的には面白いカメラだと思います。
http://www.tomys800.sakura.ne.jp/