今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-FT(B)メディカルを復帰させるの巻

2019年03月31日 12時32分52秒 | ブログ

何やら怪しいPEN-FT(B)とPEN-Fですよ。FTベースのメディカル機ですが、製造後期の個体で、トップカバーは普通のFT(B)のものと共用しています。

 

 

光学系プリズムなどが違いますので普通の撮影は出来ませんね。セルフタイマーは不要ですが、トップカバーを共用のためグロメット部品を作って塞いでいます。クロームボディーでも同じ仕様はあります。クロームとブラックは仕向けによって使い分けたのでしょう。

 

#3472XXで製造は1970年3月となっていますが、これは他の同時期の個体と整合性があります。ニコイチなどではなくオリジナルであるということ。不要の情報窓用明り取り窓はそのままです。

 

トップ面にかなり激しく打痕がありますね。修正はしますが痕は残りますね。

 

 

メディカル機は未分解が多いのですが、外観の印象と違って内部は分解されて荒れています。ストロボリード線の接片が欠落しています。(そもそも接続されていない)MX切換接片の絶縁樹脂が破損しています。これはトップカバーを閉める時に接片の位置を合わせずに無理に押し込んだからです。

 

あまり使用された個体が少ないメディカル機の中では使われた方ですね。何かの液体が巻上げ部分を中心に侵入していて乾燥した形跡があります。

 

 

本体は洗浄組み立てをしてあります。FTの仕様なため露出計は搭載されないので、すでにリード線が半田付けされている電池接片からリード線を外した形跡があります。

 

リード線を新製しておきます。

 

 

シャッターユニットは最後期のタイプで、チャージギヤはナットによる組立式です。それ以前はカシメのため分解が出来ない仕様でした。なぜ最初から組立式にしなかったのか? この機械は「緩み」ということに対して神経質になっていたようです。

 

メディカル仕様の光学系を分解します。

 

 

他の個体から普通のFTの光学系を調達しますが、殆ど全分解に近いので手間が掛かりますね。こちらの前板ごと載せ替えた方が簡単ですけど、それは出来ないのです。

 

調達した光学系。フレネルスクリーンなどは洗浄してあります。

 

 

リターンミラーユニットをオーバーホールしてあります。Mバネカケを交換しておきます。

 

 

本体側と前板側が完成。

 

 

通常のオーバーホールであれば、とっくに終わっているのですがここまでです。シンクロ接片の樹脂が欠落していますので、リード線と共に交換します。

 

 

駒数板も痛んでいますが、下にあるオヤギヤなども腐食していますのですべて交換します。みそ汁のような液体が侵入していて、鉄、真鍮を侵していますので薬品系の液体かも知れません。

 

クロームボディーのメディカル機は基本的にFV仕様となりますが、ブラックの場合はFT(B)ベースとなるため必要のないASA感度付きのシャッターダイヤルとなるのですが、接着されているため感度設定は出来ない状態になっています。無理にダイヤルを引くと・・完全に戻らない状態になりました。

 

ASA感度設定が回らないように接着をされていました。

 

 

ASA 25に色入れがされていません。これは、この部分が窓に出るようにして不必要な表示を消すためです。

 

 

ツマミが戻らない原因の接着剤を取り出します。

 

 

やれやれ、やっと正常に動くようになりました。ASA 25の色を入れ直してあります。

 

 

組立は完成ですが、光学系の変更によりピントの再調整が必要になります。露出計の感度調整も終了。

 

 

当然、セルフタイマーも装着は可能ですが、すると完全にFT(B)となってしまいますので、識別のために敢えてセルフタイマーは無しの仕様として専用のグロメットを接着しておきます。

 

 

セルフタイマーは未装備のため取付けネジは専用ナットによりダミーとして取り付けておきます。

 

 

アンダーカバーもFT(B)仕様のため不要な電池室(蓋)を装備していましたので露出計付きへの改造には好都合でした。一見簡単に思えるメディカル機から通常仕様への変更には細かなところでの再調整が必要になりますので経験が必要です。また、後世の人が悩む個体を作ってしまった・・。

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初めてのPEN-FTの巻

2019年03月27日 15時49分42秒 | ブログ

すみません。中古屋さんの手直しやらをやっていましてUPをサボりました。では始めますか、サボっている間にgooブログの入力画面が変わっていて焦りました。この方は私が時計の修理をご指導してから一緒に腕時計のレストアをやっている方ですけど、PEN-FTをお持ちでなかったとのことです。そこで、やるとなるととことんやる性格の方ですので、オークションで集めて来ましたよ。これ以外にもFTブラックも入手されたとか。まぁ、恐れ入りましたです。で、中で良さそうな個体を選んで1台仕上げるということですが、手前は#2710XXで後ろの2台は30万台です。普通であれば30万台から選ぶところですが、この27万台が外観が非常にきれいで使用感や小傷がありません。よってこの個体を採用することとしました。しかし、シャッターは不動で、何か原因があると思います。

トップカバーを開けて見ると・・未分解機ですね。

 

 

27万台はメカ的には30万台以降とほぼ変わらないのですが、ハーフミラーのメッキが異なります。銀メッキですので腐食が進んでいます。また、事前のチェックで露出メーター単体の感度が落ちているようです。

 

シャッターですが、ハンマーが完全に固着しています。ブレーキナットが緩んでいるためです。逆に言えば、早い時期に故障となったために使われずに良い状態を保っていたのかも知れませんね。メカは直せばよいだけの話ですから・・

 

ダイカスト本体側は洗浄組立を終えていますが割愛します。やはりブレーキナットが緩んでいます。

 

 

スローガバナーのアンクル押エバネが折れています。(左が正規)

 

 

巻上が出来ない原因はまだありました。2回巻上げ防止レバーが固着して解除されません。

 

 

原因はレリーズバーが曲がっていて、2回巻上げ防止レバーと干渉しているためです。

故障の推理はこうです。まずお約束のブレーキナットが緩んで巻き上げが出来なくなった。そこで短気を起こしたオーナーさんがレリーズボタンを力一杯に押し込んだ。最後は、修理をしようと底蓋をあけていじっているうちに押エバネを折ってしまった。そんなところですかね。

修理が終わったシャッターユニットとスローガバナー。

 

 

あら、スローガバナーからコントロールレバーが外れた形跡がありますね。プーリのダブルナットが緩み気味かもしれません。

 

 

シャッターユニットを本体に搭載して裏蓋を取り付けます。

 

 

早期の故障が幸い? してか、メカの摩耗は殆どない個体です。

 

 

軽く磨きましたが、接眼枠は新品時はこのようにピカピカなのです。

 

 

露出計の校正をして最後にシボ革を貼ります。27万台は30万台以降と殆ど使用は変わりませんが、接眼プリズム押えはアルミ製(以後真鍮製)とハーフミラーのメッキの違いです。

 

セルフタイマーの作動をチェックするとシャツターを押し切らない不具合がありました。

 

 

レリーズイタ(リンケージ)の逆ネジ位置が工場調整から動いていますね。ネジ自体は緩んでいないので故意に変更したか、分解をしようとしたものかは不明。これによってセルフでシャッターが切れなかったもの。

 

設計変更後の30万台38mmは程度の良いものが多いのですが、この個体はかなり使い込まれていてヘリコンドグリスが抜けてガタガタですね。

 

 

38mmは洗浄、グリス交換O/Hをしてあります。この個体の梨地クロームはテカリがなくマットな感じに見えますよね。これは人の手で磨滅をしていないからです。小傷も殆どなく素晴らしい新品時のメッキの状態。早い時期に故障となって仕舞い込まれていた個体だから残ったのでしょう。同じオーナーさんから追加で2台届いています。

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OMEGA デビルのジャンクの巻

2019年03月21日 19時55分31秒 | ブログ

目の調子がイマイチだったので時計は控えていたのですが、安定して来ましたので目慣らしの意味でオメガ・デビルをやってみますね。ご常連さんから送られてくる時計は、かなり状態が厳しいものが多いのですが、この個体も文字盤の劣化が進んで停止状態です。

非防水の角型ケースは簡単に開きますけど水の侵入も容易です。デイト付き自動巻きのCal.565という機械が入っていました。この手のモデルにはメッシュ(金属)ベルトが着いていることが多いですが、取付けのラグの内側を摩耗させますので避けなければなりません。バネ棒が分離出来ませんので、ベルトが着いたまま超音波洗浄をしましたが、何度洗浄液を換えても茶色に濁ります。バッチイです。

本来は終わっている文字盤です。ラグの状態は良いので、リダンをすれば良くなりますね。

 

巻き芯も激しく錆びています。リューズ部分も曲がっていますが、これを修正しようとすると間違いなく折れます。

 

すべて超音波洗浄をして組み立てています。

 

 

意外に機械は悪くはありません。角穴車の表面が腐食している程度です。

 

 

自動巻き機構を除いて組立が終わり元気に動き始めました。素性は悪くはないようです。

 

リューズの左側の部分が日車の早送り機構。リューズを抜き差しして送ります。

 

 

自動巻き機構を取り付けました。オメガの機械はきれいですね。

 

 

組んだままでの未調整データ。悪くないのではないでしょうかね。

 

 

文字盤の日窓付近の劣化したニスは落としました。リューズの磨滅と曲がりのため、手巻きは困難です。巻き芯とリューズを交換して文字盤をリダンすれば、かなり良くなると思いますけどね。目慣らし終了~。

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OLYMPUS 35SP が来ましたの巻

2019年03月18日 20時32分09秒 | ブログ

すみません、今月は定期の検診がかち合って外出多忙のため、作業に掛かれていませんので、更新はゆっくり目とさせて頂きますのでよろしくお願いします。あら、光って良く写ってないね。ご常連さんが「タダみたいな価格で入手」をされたとのことです。35SPですね。コンパクト系よりも一回り大きいカメラらしいカメラです。直線を基調とした一連のオリンパスモデルは好印象です。SPはスポット測光が出来るモデルということですね。CDSが中央と周辺の2回路になっていて巻上げ下のSPOTボタンを押すと中央の回路が働くようになっています。現状は取りあえず露出計が不動だけは分かっています。しかし、使用は少なくきれいな個体です。

あら、角に打痕がありますね。修正します。

 

 

もう少しかな? しかし、手前で止めておいた方が良いのです。シリアル№がすごいですよ。

 

オリンパスの場合、電池室の配線設計の問題で、電池が液漏れをすると断線する確率が高いのです。

 

配線が抜けてこないので追加をしてターミナルを介してネジ止めにします。

 

 

露出計は動きだしましたが感度は低いようです。また、レリーズが最後まで復帰しないためにプログラムEEのギロチンが解放とならず正確なEE作動となりません。

 

SPOTボタンがポロッと落ちて来ました。スペースの関係でネジ留めは右側だけの片持ちで、しかもネジ穴がΩに繋がっていないため疲労で折れてしまうのでしょう。組立時は先にネジをねじ込んでおけば、差し込むだけで組立が出来るので組立効率は良いのですが強度はないですね。

 

一連の修復をして、絞りリングのAとシャッターダイヤルのAを合わせるとEE撮影が出来ます。正常に作動しています。

モルト交換をしてあります。こんなところにもモルトが貼られています。内面反射防止でしょうか?

 

 シャッターユニットはセイコー・FLAでしっかりとした作りです。スローガバナーは無段階に変速します。

 

現代のスマホは暗い場所でも豆レンズで良く写りますが、この頃は大口径レンズがアイテムですね。一眼レフの交換レンズを分解しているように大きく重いレンズです。レンズは全体的には良いコンディションですが、後玉のコーティングが曇りやすいようです。

オリンパスのHPによると発売は1969年(昭和44年)となっていますが発売月は不明です。この個体の記録では1969年9月に諏訪工場で生産されたことになっています。同じ諏訪工場で生産されていたPEN-FTでいうと、ちょうど30万台が生産されていた時期にあたります。35シリーズの中では最上位に位置する製品とのことで、他のコンパクトより少し大型でがっちりとした存在感のあるカメラですね。ブラックモデルも存在しますが、クロームモデルも上品で素敵です。

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これはひどいPEN-D2の巻

2019年03月13日 15時06分11秒 | ブログ

希少なPEN-D2 #1740XXですけどね。「カメラの何とか」さんで購入されて使用されていたようです。外観はきれいな方ですが現状はシャッター停止。

 

劣化が進みやすいダイヤル類は非常に良い状態です。ただし、ヘリコイドが何でこんなに硬いの?

 

カニ目と駒数板の停止位置から過去に分解を受けていると・・

 

 

微妙に1時付近が歪んていて化粧プレートが抜けません。

 

 

ナットの緩み止め塗料より締め込まれていますから分解確実。

 

 

あら~、この大量のヘリコイドグリスは何だ! すぐ直後にシャッターユニットがあるのですから、グリスは極力少量に留めて置かなければなりません。これはすべて分解脱脂です。

 

ヘリコイドグリスが流化して絞り羽根に侵入し、それがシャッター羽根にまで浸み込んで停止となりましたとさ。絞り羽根も完全に分解脱脂が必要です。

 

これは何だ! スローガバナーに白い粉が着けられています。これはアマチュアさんの世界で用いられる潤滑剤(良く知りません)なのだそうです。しかし、これを最初に提唱した人は誰ですかね? こんなもので直りませんよ。後始末をする者の身にもなってください。

 私は良く知りませんが、テフロン系のような成分でスプレーで噴霧するのでしょうか? 古い機械でフリクションが増大している場合、一時的に作動が回復することはあるかとは思いますが、精密光学機械に、このような種類の潤滑剤を使う発想が間違っています。

絞り羽根部分をすべて分解して洗浄をします。ここは、慣れていないと組めなくなることがあるので皆さんは分解しない方が良いです。

 

D系はメインバネが強化されていますのでシャッターが止まることは少ないのですが、止まったのでしょうね。シャッター羽根が開いた状態で閉じない症状となっていたと見えて、リターンスプリングを弱く曲げてあります。どのバネが見つけてね。

お陰でシャッターユニットだけで一日経過してしまいました。

 

 

 シャッターユニットとグリスを入れ替えたヘリコイド部を合体させて完成。D系は後玉の曇りが持病ですが、この個体はきれいです。

 

 本体側を組み立てます。

 

 

本当にこの個体はレンズがきれいですね。

 

 

ファインダーを清掃をした露出メーターをセットして完成させます。右は私の資料用D2で、今回の個体とシリアル№が近いです。カタログを見るとPEN-D,D2,D3が1枚のカタログに載っていて、併売をされていたことが分かります。それぞれの価格はDは¥13,000 D2は¥15,000 D3は¥15,500となっています。この価格差ですとD3を選択される方が多かったのではないですかね? 今回のような無茶な修理を受けていると、通常の使用過程機と比べてリカバリーのための工数がすごく掛かるんです。リペアマンとしてはババを引いてしまった感もありますが、まぁ、良い状態に戻せて、その点からすると良かったと思いますね。また、お子様の良い写真を撮ってくださいね。

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