その前に、また56キングセイコーを入手してしまいました。前回のものより後期の1973年製 5626-7121です。キングセイコーの特徴である、剣型の針が普通のタイプになって、ケースは裏蓋ねじ込み式、しかもメダリオンも省略されているので、相場は多少安めに入手が出来ます。しかも不動品ですから・・裏蓋を開けて、テンプをピンセットでアシストしてみると、ヨタヨタながら動き始めました。単に油切れだとこの時は思ったのでした。
組立を終えて、調子を見ていますが、どうも遅れ気味です。緩急針を一杯に振っても追いつきません。輪列のほぞやテンプには目視では問題はないように見えます。さ~て、何が原因でしょうか? 時間を掛けて検証していく以外にありませんね。
ご常連さんから、あら珍しや、ロボット三等兵(若い人は知らないでしょうね)みたいなCds露出計を頭に載せたミノルタのオートコードCds最終型だそうです。何故か、最近はPEN-F系の修理のご依頼が減っていまして、この方も私の目の状態をお気使い頂いてご依頼を控えていたそうです。ご報告が遅れましたが、お陰さまで、治療の効果が上がりまして、視力は元の状態まで回復しておりまして、作業への支障は無くなりました。安心してご依頼頂ければと思います。
で、PENが少ないので二眼レフなどを見ています。現状で特に不具合は無い個体ですから、清掃とメンテナンスをしますが、Cdsの指示が不調とのことでしたので観察しています。オーナーさんからはこのカメラはMR-9を二個使用とお聞きしましたが、調べてると水銀電池のMPタイプという、普通の乾電池型をした電池を使用するのですね。前所有者が電池の凸側の接点を接着して改造をしてありましたが、厚みが足りませんし、ゴム系接着剤で留めては絶縁されてしまいますね。仮に、画像のように、これホンダ純正のS800用ホロのボタンを車体に取り付けるための「座」ですが、ニッケルメッキだし、直径がちょうど良い。これを二個セットしてみましたら、メーター指示は安定しています。探せばMPの代替電池もあるようですけどね。
二眼レフのピント板はガラス製が多いですけど、この機種は樹脂製のフレネルレンズを装備していますね。内部にはCdsから露出メーターに配線されているリード線が見えています。ところで、私のヒコーキプラモ好きをご存知で、食玩のプラモが同梱されておりました。おっ、二式大艇か? と思ったら、3機種のうち1つが入っているというもので、ドイツのハインケルHe177という、まぁ、レアな機体ですねぇ。急降下爆撃が出来る爆撃機というコンセプトで開発された機体ですが、無理な要求をすれば失敗機となるのは日本も一緒ですな。四式重爆の飛龍などは比較的成功した機体で、緩降下爆撃や陸軍機でありながら雷撃までこなす優秀な機体ですね。国内に現存する二式大艇は現在は自衛隊の鹿屋基地に保存されていますが、アメリカから返還された当時は、開館したばかりの東京の船の科学館前に展示されていて、ホンダZで見に行ったものです。当時は、草ボウボウの埋立地、夢の島にポツンと建っていましたっけ。その船の科学館も明日(29日)で閉館だそうです。あそこには、南極観測船の宗谷もあったよね。宗谷と言えば、僕たちの年代ではヒーローですよ。あの頃はプラモデルではなくて、木製モデルの宗谷を作ったものです。似ても似つかなかったモデルでしたが・・
二眼レフ機を修理する場合は、必ず前面のシボ革を剥離しなくてはなりませんが、すでに何度かの分解を受けていますので、細長い形状ゆえ、無事なことはまずありませんね。この個体も5ピースぐらいに切れた状態で、しかも、古い接着剤を取り除かないまま再接着をしているため、接着厚さが厚くなってシボ革は密着していないのです。
おっと、この機種は、レンズカバーを分離する前に、ストロボ切り替えのノブを外しておかなければ分離できませんね。よくよく観察すると、過去に直接ペンチで銜えたようで、ローレットが傷だらけですね。その下が、この機種の特徴の横レバー式の距離レバーです。手持ちの場合、意外に理に叶っているのかもしれません。
二眼レフの場合、機械と言うのはこのシャッターユニット部分だけですね。今回は特に不調もありませんので、清掃と注油だけに留めておきます。
レンズカバーの裏側。左側のギヤはシャッタースピードとシボリに連動しています。右は、連動して表示窓にシャッタースピードとシボリ値を表示します。ギヤ回転部のグリスが抜けている状態ですので、洗浄してダンピンググリスを入れてシボリレバーの動きを規制しておきます。
二眼レフには多いですが、表示窓はモールド樹脂ではなくて、塩ビなどのセル板を型抜き折り曲げしたもの。これでしたら、劣化して黄ばんでも製作するのは簡単ですね。接着ではなく、セル板の切り欠きに、上面からのリベットで引っ掛けているだけです。塩ビ板ですと、接着が困難のためでしょう。今回はコンパウンドにより研磨して再使用します。
側面の巻上げレバー側。レバー取り付けのカニ目ビスが緩んでいます。こちらのシボ革も外周より剥離しています。よくよく見ると、両面テープで貼ってありますね。これじゃダメじゃん、春風亭・・・。一度剥離して、古い糊を除去後、洗浄したシボ革を接着します。
フレネルレンズはすでに何度か拭き上げをされていまして、溝の部分に汚れが入り込んでシミとなっています。拭き傷もありますね。このような古い樹脂製の場合、拭き上げをしても溝に入った汚れは取れませんし、マットが光ってしまう可能性があります。そこで、洗浄をして見ましたが、だいぶ汚れは薄くなりましたが完全には無理ですね。この辺りはガラス製の方が作業は楽です。
分割されたオリジナルのシボ革も何とかきれいに貼ることが出来ました。この個体は最終の生産の頃の製品で、保存状態も良いですから程度は良いですね。作りもしっかりとしており、さすが人気の二眼レフだと思いました。