今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

リクエストのPEN-EES-2

2011年01月29日 21時54分41秒 | インポート

Dscf190953 ご常連さんからPEN-EES-2のリクエストを頂いておりました。中古屋さんを回っても、なかなか見つからないのだそうです。先日、私も新宿の中古屋さんを見て回りましたが、やはり見つけることが出来ませんでした。元々、「S」の生産数は通常のEEに較べて少なかったと思いますが、ファンの方の手元にあって流通量が少ないのかも知れませんね。と言うことで、うちの在庫の中から見つけてきました。いつの間にかEE系だけでも200台程度は在庫していますので、どこに何があるやら・・・新品同様の美品というわけには行きませんでしたが、この個体なら、そこそこきれいでしょ。すでに分解洗浄を済ましていますので、この機種で一番手間の掛かるモルトを貼って行きます。

Dscf190419EE2になると本体の上下にモルトが貼られるようになりますが、裏蓋蝶番式となりましたので当然とも思えますが、裏蓋の構造が、F系のような二重構造ではなく、プレス1枚ものということで遮光性に劣る点も見逃してはいけませんね。まぁ、いいや。苦手なモルト貼りを終えてスプロケット、スプールの2軸と駒数ユニットを組み込んだところ。次はシャッターユニットをOHして行きます。

Dscf190757 シャッターの状態は基本的に良好でしたが、絞りユニットやガバナー関係が長期に使用されなかったための固着を起こしていますので分解洗浄をして組立をします。

Dscf191085 シャッターユニットが完成して本体に組み込んでいます。レンズはカビやクモリは一切無く、完全な状態です。メーターのEE精度や絞りの具合を見ています。

Dscf191343 EEメーターの感度を調整しています。指針カム山位置が僅かに低いため、抵抗を入れ替えます。収縮チューブで絶縁しておきます。

Dscf191787 このように完成しています。EE系も急速に個体数を減らしていますので、EES-2などの人気のあるタイプで良好なものは少なくなっています。みなさんも意識的にEE系を保存するようにして行きましょう。

Dscf191873 ジャンクから復活したスモールセコンドですが、ケースの状態が最悪です。材質が真鍮のため腐食が激しく多数の孔が開いています。PEN-Wと同じ状況ですね。試しに軽く研磨をして見ました。深いピンホールは取りきれていませんが、材質が真鍮のため研磨は容易ですから磨きを掛けてニッケルメッキ→金メッキにでもしてみようと思います。(針が入手出来た場合ですが)


精工舎・スモールセコンド

2011年01月28日 22時20分57秒 | インポート

Dscf189436 すみません。体調が良くないのでカメラの作業を見送っています。そこで、手慣らしにジャンクで入手した時計をOHしてみましょう。私は、秒針が小さな小窓に表示されるタイプの時計が好きでして、これをスモールセコンドと言います。現在主流の秒針も真ん中に付いている本中三針が開発される以前の時計の基本形で、四番車に秒針が付いています。この男性用13型が製造されたのは本三針が開発される前の昭和30年ごろでしょう。じつは、この時計よりサイズが小さい女性用の9型や戦前から生産されていた将校用の10型なども集めていまして、それの部品取りのつもりで入手してみましたら、届いたものはそれより大きな13型でした。ご覧のように風防が無く、針も失われている状態で価格は500円でしたが、これが程度の良い個体であれば数万円はする稀少な時計です。機械を見てみると、各部は固着して不動状態ですが、致命的な錆や欠品は無いようですので、もったいないのでOHをしてみることにしました。果たして動くでしょうか?

Dscf189791すべて分解してみたところ。機械は大丈夫そうですが、ケースは真鍮素材にニッケルメッキ製で、腐食が激しくすでに終っています。手前のテンプはチラネジ付きですが、まだ耐震装置が無いタイプです。

Dscf189983 真ん中のニ番車やゼンマイが入っている香箱車は軸が固着しておりました。すべて洗浄してから注油で組んでいきます。組立の途中でご覧のようにスムーズに回転するかを確認しながら作業を進めていきます。

Dscf190159

輪列を組んでいきます。ピンセット先が四番車で画像の裏側に秒針が付きますが、この個体は風防ガラスが欠落していたため、秒針を取り付けるホゾが曲がっていましたので慎重に修正しておきました。

Dscf190353 ガンギ車を組み込んだところでスムーズに作動するかザラ回しで確認しておきます。最後にアンクルとテンプを取り付けて・・おぉ、動きましたね。時計の組立で一番感動する瞬間です。テンプの振り角も大きいですね。各部には適切なオイルを選択して(今回は4種類)注油しています。

Dscf190684 左側に見える時計ですが、上が9型で女性用ですね。下は戦前から製造されていた流れの新10B型でしょうかね。これ、あとリューズ(巻き芯)があれば仕上がるのですが、手巻き式で非防水ですから、一番痛みやすい部分で、ジャンクの多くは部品取りをされています。どなたか作ってくれないかしら? と言うことで、機械は復活しましたが、スモールセコンド用の針がありませんので時計としては機能しませんね。ケースは研磨をしてメッキをすれば使用可能ですし風防も何とか見つかりますから針があれば復活するんですけどね。そのうちヤフオクにでも出たら良いのですけどね。とにかく、復活できてラッキーでしたね。


勤務先から払い下げのPEN-FT

2011年01月23日 12時48分39秒 | インポート

Dscf1859731 すみません。時計の作業と平行で進めていますので進捗が遅いです。「時計の地板のネジは抜けたか?」とご心配メールも頂戴していますが、まだ抜けません。というか腐食ですが、薬品の効果が穏やかでサンポールの塩酸程度と一緒ですね。地板の雌ネジを見ると山が増えていますので腐食はしているのでしょう。あと1mm強です。ただ、真鍮は侵さないというところがミソ。しかし、ニッケルメッキは侵されてしまいます。で、カメラの方ですが、このFT#1397XXのご依頼は同市内の女性の方から。なんでも勤め先で昔に使用していたFTを払い下げられた由。初期に近い製品ですが外観はまぁまぁですね。仕事であまり使用されなかったのでしょう。しかし、緊急処置をしても全く動かない。分解をしてみると、シャッターユニットと前板(ミラーユニット)を分離してもシャッターは動かない。おまけにのバネが折れています。通常はあまり折れることは少ないのですが、ダブルテンションでも掛けたのでしょうか? 治して使ってみたいとのご希望ですので、いつものように女性にはやさしいので何とかしたいと思います。

Dscf186392 では、洗浄済みの本体にモルトを貼ってスプロケット軸とスプール軸を組立てて行きます。この部分に特に問題はありませんね。

Dscf186557 この頃の個体で長期に放置されていたものは、まず電池室の腐食とリード線の劣化があります。FTに使われるリード線の色は大体は決まっていますが、電池室からのものは何色か使われています。青がオリジナルで付いていたもので芯線の酸化で半田が乗りませんので新しい赤のリード線に交換します。赤の方が使われている比率が高いのです。殆どの個体でスプロケット軸が劣化した古いグリスでひどいことになっていますが、この個体は全て分解洗浄して組んでいるのできれいなことに注意。

Dscf186955 フリーズしていた問題のシャッターユニットですね。直接の原因はブレーキ関係の部品のクラックによる分解でした。良品に交換して組み直しています。

Dscf187075 やれやれ、これで一安心かと思いましたらスローの1秒が止まります。それも、スムーズに動く時といきなり止まる時が交互に発生します。原因はギヤの錆発生ですね。長期に放置されていた個体に多い不具合です。これは厄介ですよ。

Dscf187633 とは言っても治さないわけには行きませんので治しました。スローガバナーという部品は時間をコントロールするという意味において時計と同じなんですね。どちらもガンギ車とアンクルによる脱進機によって制御されています。この辺りの原理を知りたい方は時計の勉強をされると理解が出来ると思います。ミラーユニットのバネを良品と交換して組んでみたところ。1秒も正確に切れています。リターンミラーと、チラッと見えるシャッター幕をよ~く見てくださいな。作動しているのが解りますでしょうか? では、最後の難関は露出計がどうなっているかですね。

Dscf187825 懸念はしていたのですが、やはりダメですね。ロッカーの中に長期放置ですから電気部品はどうしても劣化しています。Cdsも弱っていますが今回の問題はメーターです。作動したりしなかったり、シャッターダイヤルの回転に同調して針の指示が不正確に踊ったり引っかかりで止まる。針が張り付く場合は帯電している場合もありますが、今回のそれは違いますね。メーターのコイルを取り出して、電気接点などをやり直して行きます。また、ピボットのガタ量が大きめで、それによって指針の動き始めがスムーズでないようです。時計であれば軸の先端のホゾ部分がルビーなどの穴石で保持されるのですが、メーターの場合は先端が剣先でピボット受けですから、長期に作動しなかったものは錆の発生や磨耗汚れで特に初期作動が不良となるケースがあるようです。

Dscf188282 付属の38mm標準レンズを清掃しておきます。長期放置のためレンズのクモリが目立ちます。分解して油の付着した絞り羽根を洗浄して行きます。

Dscf188384 結果的には全ての部分に不良個所を抱えている個体でしたね。これは単なるオーバーホールではなくてレストアに近い作業です。でもね、1台でもこの個体のように隠れたFTが復活するなら、FTを使ってみたいという方がいるなら頑張って治しますよ。特に女性ですからね。圧板には、そこそこのフィルムすり傷がありますので、全く使用されなかったのではないと思われますが、レンズマウントにはすり傷は全くありませんので、レンズの交換はせず、このセットで使われて来たのでしょう。全て完調としてありますが、特に巻上げのフィーリングは最高の部類です。ガリガリのFTを使っている方には目から鱗ですよ。FT君としては地獄で仏でしたね。新しいオーナーさんに大切にしてもらうように・・


これも美品のPEN-D3ですよ

2011年01月20日 20時01分46秒 | インポート

Dscf184654ご常連さんから 外観は美品のPEN-D3 #2511XXが来ています。気になる点をイラスト入りで書いて頂いていますね。しかし、みなさん、お上手ですね。ご指摘は、駒数板と窓のセンターがずれているということ。ほんとだ。これは同じ設計の他機種でもあるのですが、やはりD系に多いでしょうね。ダイカスト本体のスプール軸の位置は変わりませんので、トップカバーの仕上がりということになります。D系は真ん中にファインダーの切り欠きが大きく、形状としての強度がありません。その辺りの事情も寸法安定性に影響を及ぼしているかも知れませんね。露出計は不動ですが、黄ばんだ透明テープは、窓の左側に位置するメーターの指針を調整する小窓を塞いでいるテープ。長い間に糊が剥れたのです。

Dscf184715 駒数ノブを外してみました。ははぁ、駒数ガラスの孔と中心軸がずれているのが分かりますね。左に1mm寄っている(右に0.5mm寄せれば良いことになります)のです。しかし、工場での組立段階では修正は出来ませんので、そのまま良品として組んだものでしょう。果たして、どの程度を不良としていたのか? まぁ、駒数ノブがガラスと接触しない場合は良品としていたぐらいでしょう。駒数ガラスは正確に接着されていますから、やはりトップカバーの仕上がり寸法で出ていないということです。

Dscf184864 ダイカスト本体などを洗浄したところ。これから不動のシャッターをオーバーホールしますが、消耗は少なく未分解の個体ですから、問題なく回復すると思います。そうなると露出計は動かしたいですよね。最近、このパターンが増えてストック部品が・・・

Dscf184952 シャッターユニットは昨夜完成させていました。未分解のユニットで消耗劣化もなく最高の状態として本体に組み込んであります。露出計を作動させることを念頭に電池室の配線を作っておきます。無駄にならなければ良いですが・・

Dscf185179 こんな感じね。良いでしょう。圧板の状態から見て、おそらくこの個体は殆ど使用されなかったものと思います。使用されてその後放置(保管)されたものは、人の手汗でレンズ周りがかならず腐食しているものです。この個体には全くそれがありません。ヘリコイドが重いとのご指摘がありましたが、D系の場合は口径が大きいため、どうしても回転は抵抗感があります。軽いグリスと交換してみましたが、あまり変化はありません。使い込まれてグリス切れを起こしている個体は磨耗もあって軽くなる傾向にありますね。

Dscf1854941 まぁ、こんなところですね。結果的に露出計はCdsとメーターは生きていて基板とスイッチの不良でした。使用されなくとも電気素子や部品は劣化をするのです。駒数窓は多少は改善して見えますでしょうか? これで一杯です。ごまかしですけどね。

Dscf185657 折角きれいな個体なので頑張っちゃいました。シャッター、レンズ、露出メーター全て完璧になっています。最近では珍しい美品と思います。D3は重いので落とさないように大切にしてくださいね。


PEN-EE系のお兄さんだよなぁ

2011年01月20日 19時37分10秒 | インポート

Dscf183865 珍しくTRIP 35の美品が来ていますよ。機能は問題ないのでモルトやファインダー、レンズの曇りやカビ跡を中心にオーバーホールして行きます。このモデルは販売好調のPEN-EEの基本設計そのままに35mmフルサイズとしたカメラですが、よくご質問で、EEとの共通部品はどのくらいありますか? と言うのがあります。残念ながら、基本的なレイアウトは同じでも、共通部品は殆ど無いと思います。ハーフを35mm化したために、巻上げダイヤルを巻く回数は、ハーフは約2回に対してTRIP 35では私の手で3回必要と、ちょっと機動性は落ちています。

Dscf184051 内部もきれいですよ。カメラマニアさんが購入したカメラではなくて、家族旅行などの撮影用でしょうから、意外に使用期間が少なくて美品がありますね。しかし、長期保管でレンズにはカビが発生した跡が確認できます。ご覧のように、絞り羽根ユニットはハーフと瓜二つのデザインながらちょっと大きくなっていますね。レンズ周辺は全く部品構成は異なります。

Dscf184248 フィルムのスプロケット部の設計は全く異なっています。モルトは画像部分だけの設計で、やり直すのには手間が掛からず有り難いところ。

Dscf184584 EEと並べてみるとやはり大きいですね。ハーフから35mmへと市場が変化した頃に、短期間で安価なカメラを製品化をするためには良い方法だったのでしょう。