今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

久しぶりのコンパクトPENの巻

2016年03月31日 16時35分00秒 | ブログ

最近は一部のファンの方を除いて、コンパクトPEN系のご依頼が少なくなっていますね。D系の初代PEN-D #6187XXは1964年9月の製造ですが、この個体の保存状態は大変良いと思います。ただし、オーナーさんがお訴えの、「露出計通りに撮影をすると露出オーバーとなる」の原因は、シャッタースピードが極端に低下しているからです。PEN-Sのシャッターと基本的には同じシャッターですが、1/500追加のためシャッターバネを強化しているために、フリーズはせず、辛うじて作動するという状態になります。これは、先日取り上げたマミヤスケッチ同様、コパル式流儀のシャッターは、定期的なメンテナンスを実施しないと不調となりますね。

お書きしたように、基本的にはPEN-Sと同じ#000番シャッターが基礎ですが、大口径のレンズを搭載するための機構と、それに伴ってシャッター羽根の後部に絞り羽根を置く構造のため、大変大がかりな機構となっています。

不調の原因は他にもあるのですが、この個体の場合はヘリコイドグリスが流化をして、絞り羽根機構に伝わり、そこからシャッター羽根に流れて不調となっているのもです。

 

こんな感じにね。尚、このシャッターは羽根が5枚仕様です。

 

 

全て分解洗浄のうえ組み立てています。

 

 

PEN-Sと違って絞り機構が追加されているシャッター本体。左のヘリコイドネジ部のグリスは交換してあります。

 

いつものように「栄発動機」を本体に搭載します。

 

 

スプロケット、スプール軸を取付けて、洗浄をした巻上げダイヤルを取り付けます。

 

カム板、前玉の取付け。清掃したファインダーの取付け。露出計は正常です。

 

 

意外に指に触れる絞りリングなどの汚れは激しいものです。全て洗浄済み。駒数窓の自然剥離のため再接着をしてあります。

 

 

「PEN-D for MEN !!」

 

 

姉妹機としてPEN-D2 PEN-D3 も同時期に発売されていたようですね。

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里帰りのPEN-FVの巻

2016年03月29日 18時02分23秒 | ブログ

今日の関東地方は気温が上がりまして、桜の開花も進んだと思います。このPEN-FV #1229XXは、過去に私がお譲りをした個体で、巻上げ不良の症状が発生して戻って来たものです。整備済みでお出しした個体が、使用過程でどのようなコンディションになるかは興味のあるところです。付属の40mmは、グリスの流化が激しく、絞り不良でレンズマウントにまで油が流れだしています。

コレクションではなく、実際の撮影に活躍してくれたようですね。布製のカメラバックに収納されていたと見えて、内部にはホコリの混入が激しいです。

 

オーナーさんからのご指摘はありませんでしたので、たぶんセルフタイマーは使用されなかったのでしょう。作動の途中でチッチッと止まってしまいますね。このタイマーユニットは、頑固に調子の出ないものがあります。何とかしないと・・

撮影に使って頂いていた証拠。スプロケットのクラッチ摩耗です。これは良品と交換することになります。本体は洗浄済み。

 

シャッターなどには特に問題はありませんので、洗浄・注油のうえ組立をして行きます。

 

前回のメンテナンス時は全反射ミラーは交換していませんでしたので、今回は交換とします。

 

メカ部の組立は完成。セルフタイマーは正常に作動をしています。(良く見てね)

 

FVですから電池室は無く専用部品です。また、シンクロM接点は省略されています。

 

この頃の製造に使用されているグリスは劣化すると流れだしてしまいます。かなり使い込まれたレンズで、内部にホコリ汚れが多く堆積しています。殆どの工数は清掃作業です。

二度目のオーバーホールを終えて完成です。長野県のオーナーさんですから、今年の桜に間に合いました。

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RICOH 35Sのニコイチの巻

2016年03月24日 20時58分29秒 | ブログ

少しUPをサボりました。作業はしておりましたが、風邪の回復が遅く気力がついて行きません。でも始めないと・・

大阪のご常連さんから最近はリコーのご依頼が続いていますね。大きな段ボールなので開けて見ると・・あら~、食玩ヒコーキだぁ♪。ご常連さんも水上機がお好きなんですね。先日買った紫電改の元の機体「強風」と二式水戦、それにドイツのスツーカでした。私は、三共のピーナッツシリーズ(1/150)で育った年代なので、1/144スケールは大好きです。小学生の頃は30円握りしめて模型屋さんに通ったものです。戦車(タンク)シリーズは50円だったな。ありがとうございます。問題は、部屋に溜まったプラモをどこに隠すか・・

リコー35Sというモデル。特にオーソドックスなカメラです。本来は外観もきれいなこちらの個体をO/Hすれば良い話しなんですが、中古屋さんのご主人が分解をしてしまったとのことで、カバーを分離して見ると、あ~、いじり壊されちゃってますね。

距離リングとレンズを個体しているイモネジ3本共スリ割りを壊してあって分解が不能になっています。リューターで削ってみましたが、イモネジが深く、分解は出来ません。また、セレンもリード線が引きちぎられて、メーターも不動です。中古屋さんでしたら、もう少し何とかならないものでしょうかね?

多少外観の落ちる(と言っても普通)ジャンクが付いていますので、シャッターユニットとメーター全てを移植することにします。

 

 

ジャンク?からシャッターユニットを調達します。レンズもきれいで特に問題のないユニットです。

 

富岡光学製、40mm f2.8 3群4枚のレンズです。かなりグリスが流化していますが、前玉回転フォーカスのため、ウェーブワッシャーが入って、バックラッシュを防止しています。

 

ファインダーを作りますが、どちらも問題を抱えているユニットです。基本のユニットは、分解を受けて(中古屋さんではなく修理屋さんだそうです)ミラーのネジが1本脱落してプラプラの状態です、これでは二重像は見えません。

そこでもう片方を使うかと思いましたら、ミラーは接着外れていて・・

 

 

ハーフミラーは拭き上げにより、中央のメッキが無くなっています。この時代のハーフミラーは拭き上げは厳禁ですね。それでは、本当に良いとこ取りのニコイチで組みます。

 

本体にシャッターユニットとメーターを組み込みます。

 

 

光枠プレートを取り付けます。

 

 

まず、二重像の縦ズレを修正しておきます。

 

 

遮光カバーの2つのネジの片方が欠落しており、接着剤で固定されていましたが・・ねじ山を壊してネジが止まらないので接着をしてあったようです。タップでねじ山を修正しておきます。

 

ネジのスリ割りも笑っている状態でしたので、きれいなネジを選んで使いました。

 

今日は早朝から通院のために新宿へ行きました。桜の季節ということもあるのでしょうけど、今日は特に外国人観光客の方が多かったです。中韓の若い女性が、大きなトランクを転がしている光景が目につきます。

 

画像は昼の帰り頃ですが、山手線のホームに中国の陸上選手のようなユニホームを着て、大声を出している方を発見。今日は空気は冷たかったですよ。

新宿駅は改築工事が続いていまして、中央線のホームも工事中です。左に「あずさ」が見えますね。意外に欧米人の観光客は少なく感じます。ここのホームで待っても、電車は入って来ませんよ~。

 

では、お仕事。シボ革も程度の良い方を選択して貼ってあります。底部巻上げリンケージ部の可動部分に注油とグリス塗布。

 

かなり汚れと劣化のあったフィルム室をクリーニングしました。モルトも交換してあります。

 

ネジ1本まで、比較して良いものを使って組んであります。キヤノネットが1961年の発売で価格が18.800円。リコー35Sは1963年の発売で価格は11.700円となっていますね。キャノネットの発売価格も安いと業界で問題になったようですが、むしろ、キヤノネットジュニアが1963年発売で価格は11.800円ですから、価格帯としてはこちらの方が近いということになりますね。ジュニアはゾーンフォーカスですが・・そう言えば、ジュニアは元箱付きで持っています。

頂戴したスツーカは別のメーカーが発売したのですね。九六式陸上攻撃機にも通じるユンカース独特な翼の形状と逆ガルがスツーカの特徴ですね。開発は古く1935年です。大戦初期には活躍をしましたが、重い機体と鈍足により、大戦後期の制空権の無い作戦では、損害が多かったようです。1/144スケールは、機体のサイズを比較するのに良いスケールで、メッサーシュミットなどは、意外に零戦より小ぶりなのには驚きます。同シリーズの彗星も欲しいですが、彗星が登場した頃は、すでに艦載する空母艦隊は存在せず、搭乗員の錬度不足もあって、最後は沖縄周辺の敵機動部隊に対し特攻出撃に出て行ったのでした。


貴重な最初期型PEN-Fの巻

2016年03月16日 22時47分34秒 | ブログ

すみません。風邪が回復せず、作業は低調です。数日前にも、スキャナーが故障したのを切っ掛けにPENを止めるのでジャンクの買取をご希望の方がありました。フィルム事情の悪化に伴って、修理のご依頼も減少を続けているのが現状ですが、みなさん頑張りましょう。そこで、こちらのPEN-F #1040XXのオーナーさんは、歴史的に貴重な最初期型のPEN-Fを完全な形で残しておきたい。と、おっしゃってくださいました。頭の下がる思いです。PEN-Fの発売は1963-9月ということですが、この個体の生産も同じ月になります。まさしく生産開始の初ロットという個体でしょう。最初期型ゆえの特徴も有しています。状態は、分解マニアさんが修理をしながら使われて来た個体とのことで、作動はしますがコンディションは良くありません。オーナーさんのご指摘は、シャッター幕がオリジナルではないのではないか? なるほど、初期のシャッター幕は光沢が強い(エッチングの違い)ですが、この個体は中期以降の艶消しの強いタイプになっていますね。ほぼ同時期のジャンク機が付いていますので、オリジナル重視で仕上げたいと思います。

まず、怪しいシャッター幕を検証します。地板とシャッターユニットの接合部を見ると分解された形跡はない? う~ん、変ですね。あっこれだ。シャッター幕の回転軸のネジが外されているのが分かりますか? ここは、幕をネジで固定の上、裏側を緩み防止のためにカシメ加工が施されているのです。分解してはいけないということ。

裏側です。ネジを強引に緩めれば、ネジの強大な力によってカシメしろは矯正されてしまうのです。このままでは必ず緩んでしまいます。

 

左側が今回の#1040XXで右側は#1043XXです。よ~く見比べてくださいよ。テンションシャフト下のコントロール部とそれに続くスローガバナーの1/4以下のコントロール系が全然違いますね。左のガバナーは、非常に調整がしにくいと言うか、作動が確実でないのです。そこですぐに諦めて根本的に再設計をされたようです。

違いは色々あるのですが、ダイカスト本体にもありますね。底部のフレームに切り欠きがあるのが改良型の#1043XXで、今回仕上げる#1040XXは下の切り欠きの無いタイプ。なんで変更されたか? 設計変更されたシャッターユニットですと切り欠きが無ければ取り出しが知恵の輪になっちゃうのです。

汚れを洗浄したシャッターユニットのストリップ。え~、これだけなの? と思われるでしょう。これだけなの。ブレーキは機能していませんので、新しいOリングと交換してシャッターユニットを仕上げました。(画像忘れました)

 

正規の光沢のあるシャッター幕とブレーキのOリングを交換して完成したシャッターユニットを搭載して、巻上げレバー関係を組み立てます。爪バネは初期のしばらくは画像の板バネタイプです。以後はコイルスプリングになります。

スローガバナーにはギヤの摩耗があって、スローが安定しない傾向がありますが、これはジャンク機はすでに異なるので使えないのです。何度も調整をしてまぁまぁとしています。パーツリストには2種類のスローガバナーが載っていますが、この個体は右の#12のタイプです。

失敗したぁ。デジカメにメディアを入れずに撮影していました。よって画像がありません。やっぱり風邪でボケてるわぁ。。下が今回仕上げた#1040XXで、上が#1043XX。僅かの間に違いがありますね。まず、スプロケットの表面処理(色)が変わっています。圧板左のリベットが#1043XXでは無くなっています。圧板の腐食は研磨をしてありますが、圧板の取付けが通常の仕様と天地が逆になっています。2台とも同じですので、再初期はこのように組まれたものと思います。(他の初期型でも確認しています)

マウントのレンズ取付け赤●が外周スリットになっていますね。前面からの視認性が良くないので、すぐに変更されたようです。尚、№2プリズムや接眼プリズムなどは、後年の個体のものと交換されていると思います。

あっ画像サイズ間違えた。付属の38mmは、工場からセットで出たのでしょうね。放置期間が長く、レンズはカビ放題、グリス抜け、プレビューボタン固着などがあります。出来るだけ清掃とグリス交換をします。

左はFT用の38mm。レンズ着脱ボタンの表示が異なりますね。

 

 

ご希望通りにシャッター幕はピカピカ光沢の初期型になっていますね。

 

 

資料的に貴重な最初期型のPEN-Fが完成しました。ファインダーのピントがかなり後ピンでしたので、結局のところリターンミラー含めて、光学系は殆ど交換されていたようです。今回、全反射ミラーも交換としましたので、PEN-Fとしては、ピントの山が掴みやすい良好なファインダーと快調なシャッターとなりました。

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SEIKO チャンピオン・J15004Eをレストアするの巻

2016年03月11日 20時14分20秒 | ブログ

え~と、最近PENのご依頼が少ないのでファンの方々よろしくお願いします。そこで、以前にINOBOOさんから頂戴した(また?)セイコー・チャンピオンの初期の変わり文字盤を治すことにしますよ。この個体は色々な問題を抱えているのです。

 

この頃の個体に多い不具合の一つ、機械留めネジの頭が折れているものが多くあります。手巻きなのでネジにストレスが掛かりやすいのでしょう。地板からネジを取り出すのが一苦労なんですね。

 

二つ目は。竜頭パイプが摩耗して破れてしまっていること。これは、まず2つの機械留めのネジの片方が折れて機能しなくなったために、ケースの中で機械が遊んででしまって、毎日手巻きを続けたため、巻き芯が竜頭パイプの片側に接触し続けて破れてしまったという推理です。

摩耗をした竜頭パイプを叩き出して、新しいパイプを圧入します。

 

 

こんな感じで修正が完了しました。

 

 

三つ目の問題は、裏押えが折れていること。チャンピオンの裏押えは二種類あって、このタイプも折れているものが目につきます。適合するものをクロノスからやっと調達。

 

四つ目は、まぁ、どの個体でも劣化している風防ガラスの交換です。汎用品しか手に入りませんでしたが、高さが若干高い気がします。まぁ、仕方ありません。

 

今日も2日続けて新宿に出掛けましたが、昨日、風邪を移されてしまい、やっとのことで帰宅します。あら、ちょうど、中央特快が来ました。早く帰ってチャンピオンを組み立てなければ・・しかし、冬に逆戻りのような寒さです。

 

では、分解洗浄が終わっています。過去に1度のオーバーホールを受けているようですが、丁寧な時計師さんの仕事です。まず、香箱真に摩耗が無いかを点検しておきます。大丈夫のようです。

 

次はテンプを載せて振り石が正しくセンターにあるかを点検します。

 

 

手巻きの機械ですから、部品点数は少なく、組立には特に問題は無いはずです。

 

 

香箱と輪列に注油をしながら組み立てて行きます。

 

 

文字盤はあまり良い状態ではありません。溶剤は厳禁で平らにした綿棒で軽く載っている汚れを乾拭きします。くすんだ針を磨いて取付け。ケースは軽く磨いてあります。

 

腕時計の撮影は難しいです。今回のチャンピオンは左。中央は後年のチャンピオン860.風防のサイズは同じです。右は諏訪製のクラウンで大きいと思ったチャンピオンより、一回り文字盤が大きいです。非防水のこの頃は、ケースのサイズが大きいのが時代の流行のようで、年々大型化していますね。非防水ですから、ケースも肉薄に設計出来ましたが、防水の時代になると、ケースの厚みが厚くなって、必然的に文字盤のサイズも小さくなって行きます。手巻きの非防水も薄くて軽く腕に馴染みますので、捨てがたい魅力がありますね。

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