いゃ~、すみません。ご常連の北海道のINOBOOさんから2台来ていたのですが、ご常連さんだからと甘えて後回しにしていたら随分と時間が経過してしましました。新規の方の中には、1週間で督促メールが入ることがあるので強迫観念で、つい先に掛かってしまいます。職人を急かしても返って損だと思うのですけどね。で、2台共、さすがベテランが選んだ個体ですね。基本的に両方とも欠点の無いすっきりとした顔をしています。古いものを選ぶ時には、この「すっきり」が肝要なんですよ。とは言っても気になるところはあります。FVの方は巻上げが異常に重いですね。潤滑カラカラなのでしょう。D3の方は長期ストックと見えてフィルムレールに腐食がありますが、フィルムがキズ付くほどの重症ではないので、軽く研磨で大丈夫です。露出計は不動ですが、電池室は液漏れガスによる留めビスの腐食がありますから、まずリード線の断線ではないでしょうか? D3についてはご決断頂いてからのO/Hとなります。では、PEN-FV #1032XX(あら初期だこと)から始めることにします。
巻上げ関係を全て分離して行くと、巻上げカムユニットを留める3本の真鍮ビスのうちの1本が折れてネジ孔内に残っています。ここは緩まないように強いトルクで締められており、緩み止めも塗布されていますから簡単には取り除くことが出来ません。真鍮ビスは初期の頃だけで、その後は標準品の鉄ビスになります。わざわざ真鍮製のビスを使用した意味は何でしょう? ダイカスト合金に対して使用するために、あえて 強度を落としてあるのかも知れませんね。
ご覧のように精密ドリルにより削って行き、最後はM1.4タップにて残ったらせん状のねじ山を取り除いています。全て洗浄の後、スプロケット軸、リールを組み込んで行きます。
時計で言えばザラ回しというところですね。スムーズに回転することを確認しておきます。
シャッター本体は問題はありませんでした。前板のミラー関係。プリズムにはコーティング面の真ん中に1点だけカビ痕が残りました。問題は中央のフレネルレンズにかなり目立つ汚れがあることです。
観察すると、この汚れは前面のレンズ側から擦られたような細かなキズが多数あって、黒い汚れもすり込まれた状態になっています。表面はフレネルになっていますから、簡単に磨くわけには行きませんし溶剤なども厳禁です。
時間を掛けてじっくり清掃をしました。何とかファインダー像に影響しない状態にしてあります。この部分には劣化した微細なモルトカスが入り込むことがあります。ファインダーからは大きく見えますが、5倍に拡大して見ている訳で、実際にはルーペで見なければ分からないほどの塵です。皆さんのF系で埃が混入している場合は、ブロアーでスクリーンとリターンミラーの間(ゴム引きの遮光マスク部)を狙って空気を送って見てください。埃であれば消失するか位置が変わるはずです。Fではプリズムの腐食があって、同様な黒点汚れと見える場合がありますが、その場合は、空気を送っても位置は変わりません。リターンミラーの上方1/4部分に腐食による曇りがありました。新品に交換するか悩みましたが、今回は清掃に留めておきました。
セルフタイマーは各歯車に錆が発生しており 、作動が安定しない。分解をしてアンクルなどの再研磨などで作動はしていますが、スムーズとはならない。セルフタイマーとスローガバナーは、このカメラ内で錆の発生する危険性が高いので、今後の保管は充分に注意をしてください。その他、全反射ミラーと接眼枠は新品と交換してあります。全体としての保存状態は良好で、巻上げもスムーズとなっています。外観もきれいで、消耗感も殆どない。状態の悪い個体が多い中のPEN-FVとしては、90点ぐらいは付けて良い個体と思います。さて、次はPEN-D3ですが、後追いで明日、もう2台のD3が到着しますので、どれをメインにレストアするか検討してからの作業とします。
追加の2台が到着しましたけどね・・・まぁ、帯に短し襷になんとかだなぁ。個体として見た場合は、先に到着していたものが一番「すっきり」としている。部品交換なしで3台のうち1台を選ぶのであれば文句無く先に到着の個体を選びますが、追加の1台の方がフィルムレールの腐食が無くきれいです。しかし、裏蓋のモルトが当る底部は劣化したモルトにより塗装が侵され腐食している。私としては、戸籍がなくなってしまうような二個一(三個一)は気が進みませんので、今回は追加のうちの1台をメインに仕上げることに致します。
メインとした個体の問題は、底部が劣化したモルトが悪さをして塗装とダイカストを侵していることです。同時期の個体はほとんど同じ状態でしょう。通常のO/Hでしたらこのままで組みますが、INOBOOさんの美意識では許容外だろうなぁ? と思いますので部分的な補修塗装をすることにします。
で、このようにしてあります。この部分がきれいになると、グッと個体の状態度が上がるでしょ。
では、組立をして行きます。シャッターユニットは昨日のうちにO/Hをしておきました。一部の部品は設計変更後となっていましたが、私としては変更前の方が信頼性はあると思います。ユニットを収める前に電池室からのリード線を新設しておきます。
ファインダーブロックは、塗装の劣化が少ないものをご希望ですので換装してあります。トップカバーはD系のものは変形が激しいですが、このカバーもくねくねしていますね。露出メーター横の前面はファインダーブロックとの突き合わせを調整するため、前端を下方に癖を付けられています。これはかなりの個体に見かける工場での修正です。PEN-Dの浮き文字にはスリ傷がありますが、製造番号が入った部品ですので、このまま使用します。オーナーさんもELマークを付けておきたいご様子でしたので。。
シャッターリングや駒数カニ目ねじ、巻き戻しノブなど、製造時期による仕様の変更がない部品については一番状態の良いものを選択して使用してあります。今回は#3161XXの戸籍を守ってリフレッシュさせる組立としておきました。