今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

北からの便りPEN-FV+PEN-D3

2011年02月25日 22時09分48秒 | インポート

Dscf218855 いゃ~、すみません。ご常連の北海道のINOBOOさんから2台来ていたのですが、ご常連さんだからと甘えて後回しにしていたら随分と時間が経過してしましました。新規の方の中には、1週間で督促メールが入ることがあるので強迫観念で、つい先に掛かってしまいます。職人を急かしても返って損だと思うのですけどね。で、2台共、さすがベテランが選んだ個体ですね。基本的に両方とも欠点の無いすっきりとした顔をしています。古いものを選ぶ時には、この「すっきり」が肝要なんですよ。とは言っても気になるところはあります。FVの方は巻上げが異常に重いですね。潤滑カラカラなのでしょう。D3の方は長期ストックと見えてフィルムレールに腐食がありますが、フィルムがキズ付くほどの重症ではないので、軽く研磨で大丈夫です。露出計は不動ですが、電池室は液漏れガスによる留めビスの腐食がありますから、まずリード線の断線ではないでしょうか? D3についてはご決断頂いてからのO/Hとなります。では、PEN-FV #1032XX(あら初期だこと)から始めることにします。

Dscf219033 巻上げ関係を全て分離して行くと、巻上げカムユニットを留める3本の真鍮ビスのうちの1本が折れてネジ孔内に残っています。ここは緩まないように強いトルクで締められており、緩み止めも塗布されていますから簡単には取り除くことが出来ません。真鍮ビスは初期の頃だけで、その後は標準品の鉄ビスになります。わざわざ真鍮製のビスを使用した意味は何でしょう? ダイカスト合金に対して使用するために、あえて 強度を落としてあるのかも知れませんね。

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ご覧のように精密ドリルにより削って行き、最後はM1.4タップにて残ったらせん状のねじ山を取り除いています。全て洗浄の後、スプロケット軸、リールを組み込んで行きます。

Dscf219783 時計で言えばザラ回しというところですね。スムーズに回転することを確認しておきます。

Dscf219953 シャッター本体は問題はありませんでした。前板のミラー関係。プリズムにはコーティング面の真ん中に1点だけカビ痕が残りました。問題は中央のフレネルレンズにかなり目立つ汚れがあることです。

Dscf220064 観察すると、この汚れは前面のレンズ側から擦られたような細かなキズが多数あって、黒い汚れもすり込まれた状態になっています。表面はフレネルになっていますから、簡単に磨くわけには行きませんし溶剤なども厳禁です。

Dscf220359 時間を掛けてじっくり清掃をしました。何とかファインダー像に影響しない状態にしてあります。この部分には劣化した微細なモルトカスが入り込むことがあります。ファインダーからは大きく見えますが、5倍に拡大して見ている訳で、実際にはルーペで見なければ分からないほどの塵です。皆さんのF系で埃が混入している場合は、ブロアーでスクリーンとリターンミラーの間(ゴム引きの遮光マスク部)を狙って空気を送って見てください。埃であれば消失するか位置が変わるはずです。Fではプリズムの腐食があって、同様な黒点汚れと見える場合がありますが、その場合は、空気を送っても位置は変わりません。リターンミラーの上方1/4部分に腐食による曇りがありました。新品に交換するか悩みましたが、今回は清掃に留めておきました。

Dscf220677セルフタイマーは各歯車に錆が発生しており 、作動が安定しない。分解をしてアンクルなどの再研磨などで作動はしていますが、スムーズとはならない。セルフタイマーとスローガバナーは、このカメラ内で錆の発生する危険性が高いので、今後の保管は充分に注意をしてください。その他、全反射ミラーと接眼枠は新品と交換してあります。全体としての保存状態は良好で、巻上げもスムーズとなっています。外観もきれいで、消耗感も殆どない。状態の悪い個体が多い中のPEN-FVとしては、90点ぐらいは付けて良い個体と思います。さて、次はPEN-D3ですが、後追いで明日、もう2台のD3が到着しますので、どれをメインにレストアするか検討してからの作業とします。

Dscf220777 追加の2台が到着しましたけどね・・・まぁ、帯に短し襷になんとかだなぁ。個体として見た場合は、先に到着していたものが一番「すっきり」としている。部品交換なしで3台のうち1台を選ぶのであれば文句無く先に到着の個体を選びますが、追加の1台の方がフィルムレールの腐食が無くきれいです。しかし、裏蓋のモルトが当る底部は劣化したモルトにより塗装が侵され腐食している。私としては、戸籍がなくなってしまうような二個一(三個一)は気が進みませんので、今回は追加のうちの1台をメインに仕上げることに致します。

Dscf221033 メインとした個体の問題は、底部が劣化したモルトが悪さをして塗装とダイカストを侵していることです。同時期の個体はほとんど同じ状態でしょう。通常のO/Hでしたらこのままで組みますが、INOBOOさんの美意識では許容外だろうなぁ? と思いますので部分的な補修塗装をすることにします。

Dscf221457 で、このようにしてあります。この部分がきれいになると、グッと個体の状態度が上がるでしょ。

Dscf221766 では、組立をして行きます。シャッターユニットは昨日のうちにO/Hをしておきました。一部の部品は設計変更後となっていましたが、私としては変更前の方が信頼性はあると思います。ユニットを収める前に電池室からのリード線を新設しておきます。

Dscf221994_2 ファインダーブロックは、塗装の劣化が少ないものをご希望ですので換装してあります。トップカバーはD系のものは変形が激しいですが、このカバーもくねくねしていますね。露出メーター横の前面はファインダーブロックとの突き合わせを調整するため、前端を下方に癖を付けられています。これはかなりの個体に見かける工場での修正です。PEN-Dの浮き文字にはスリ傷がありますが、製造番号が入った部品ですので、このまま使用します。オーナーさんもELマークを付けておきたいご様子でしたので。。

Dscf222355 シャッターリングや駒数カニ目ねじ、巻き戻しノブなど、製造時期による仕様の変更がない部品については一番状態の良いものを選択して使用してあります。今回は#3161XXの戸籍を守ってリフレッシュさせる組立としておきました。


中々きれいなPEN-FT+40mm f1.4

2011年02月20日 20時41分24秒 | インポート

Dscf214928 中々きれいで、急いでメンテナンスをしなければならない状態でもないように見えますが、オーナーさんの愛情でしょうね。今回は40mm f1.4レンズから見て行きます。一見きれいなレンズですが、分解歴があって、オーナーさんからは、ヘリコイドの回転ムラを指摘されています。分解してみると、グリスが変ですね。これは、オリジナルグリスを残したまま、普通のグリスを追加塗布されています。う~ん、普通のグリスはダメなんですね。全て分解洗浄をしてグリスの交換をすることにします。

Dscf215716 分解洗浄のうえヘリコイドグリスを塗布したところ。油が回っていた絞り羽根も洗浄して組立ます。

Dscf215981 ヘリコイドには微細なアルミの切粉が見つかりました。これが回転ムラの直接の原因かも知れません。現在は滑らかに回転します。角レンズはすでに分解を受けて清掃されていますが、細かなキズやカビ痕があるのが残念なところ。では、FT #2110XX本体のメンテナンスに掛かりますが、巻上げのゴリツキと裏蓋ラッチの跳び越しがあります。21万台ですが、かなり大切に扱われた個体のようです。

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すみません。体調が思わしくなく、作業はあまり進みません。(時計は組んでいましたが)この個体は過去に全体のO/Hを受けおり、それによって重大な不具合が出ていなかったのでしょう。しかし、完全に分解しての作業ではないので不十分です。ここまで組みました。特に問題はありませんが、この頃までのシャッターユニットはメンテナンスをすると見違えるような軽快な巻上げフィーリングとなります。この個体も良いですよ。今日はここまでとしておきます。

Dscf218544 本体の組立を終えてセルフタイマーユニットをチェックすると、タイマーレバーがロックされない時がある。この頃の個体はすでに改良後のユニットになっていますが、ワンウェイクラッチが初期のものは爪によるロックで、これが作動フィーリング(ジッジッジッ)が不評のため、三つのコロがドラムの内周に飛び出してロックする方式に改められました。確かにフィーリングは改善されましたが、古くなるとコロの作動不良からロックせずの症状が現れます。小さなユニットですが、この症状を改善させるためには分解と細かな修正が必要のため、ちょっと気分が滅入ります。まぁ、腕時計の分解から見たら歯車のホゾも太くて楽勝なんですけどね。

Dscf218433 で、修理を終えたタイマーユニットを組み込んで作動のチェックです。非常に良好な作動です。まぁ、現在は使用する方は少ないと思いますが、動くものが正確に動かないのでは放置することは出来ません。その他、ハーフミラーは交換としています。

Dscf218697 これで完成しています。過去にきれいな修理の手が入った個体でした。それゆえ、重大な不具合が出ていなかったのでしょう。上手な方の修理は私も参考にさせて頂くところもあります。しかし、レンズはいけませんでした。普通のグリスを追加されていましたが、これはいけませんね。ヘリコイドを洗浄して専用グリスを塗布してありますので、現在はスムーズな作動となっています。全体的にこの頃の個体としては保存状態とメンテナンスは良好な個体でした。スムーズな巻上げも特徴ですね。


フィルム回帰のPEN-W

2011年02月18日 22時10分40秒 | インポート

Dscf212932 オーナーさんはお若い方だと思いますよ。お手紙では「半年前にはフィルムカメラに全く興味は無かったが、ハマらせてくれたペン」とのことです。そうですか、毎日修理をしている私としては、そんな魅力があるのかとうれしくなりました。で、半年前からのPENファンさんとしては、程度の良いPEN-W #1250XXを入手されていますね。シャッターは不調ですが、レンズは非常に良い状態ですし、本体も中々よろしい。通常のO/Hで特に問題点や書くこともないと思いますね。

Dscf214077 トップカバーの裏側は塗装はされていないのですよ。私のリペイントは裏側も全て塗装をして真鍮の酸化を防止するようにしています。この個体は過去に分解を受けていますが、ファインダーのカバーを分離してみると、うちに来る全ての個体は再接着時、その前の接着剤を取り除いていません。そのまま接着剤を塗布しているのでファインダーブロックと密着せず、隙間だらけになっているのです。私は、全て必ず清掃をします。こういうところで手を抜くか抜かないかで仕上がりが違ってくるのです。ところで、ガラスやレンズを接着している接着剤ね。茶色ですね。PEN-Wの頃でこれは珍しいですね。この接着剤はPENの初期個体に使われていることが多いのです。すわ、PENのファインダーか? いえ、PEN-Wのファインダーに間違いありません。

Dscf214214 シャッターも分解されていましたよ。その時もシャッター羽根の開閉が不調だったのでしょう。リターンスプリングを弱く曲げられていました。そうじゃないのですけどね。消耗は少ないので今回のO/Hで快調となっています。オーナーさんも「なんとか元気になって欲しいと願っています」とお書きになっていますが、大丈夫、絶好調ですよ。

Dscf214688 この個体も、内部に管理№のシールが貼られていますので中古屋さんで購入されたのでしょう。特に欠点も無く、したがって書くネタもないという平和なカメラですが、私としてはUPしにくいカメラでしたね。まぁ、良品ということで何よりでした。


巻上げ固着のPEN-FT

2011年02月14日 21時26分38秒 | インポート

Dscf2088331 今日は2月14日とのことでバレンタインデーだそうですね。私にも義理チョコが来ました。これはチョコレート会社の陰謀ですわな。私が高校生の頃から始まったらしくて、それを知らない私としては貰っても、当時はヤマハのAT1に夢中で、何の意味だか分からなかったですね。で、このPEN-FT #3653XX。おぉ、良い頃の個体ですねぇ。しかし、巻上げレバーがこの状態から動きません。露出計も不動です。さて、どんなことになっているのでしょうね。

Dscf2090881 ご覧のように、吊輪イヤーが緩んでおり、片方のビスが欠落しています。これはオーナーさんも指摘していらっしゃいって、これが悪さをしているのか? とのことでしたが、経験的に状況からその可能は高いですが、目視ではビスは発見できません。

Dscf2092331 まず、前板を分離しても巻上げレバーは動かないのでリターンミラー関係ではない。次にシャッターユニットを分離してチェックするとこちらも問題なく作動する。残るは巻上げユニットしかありませんね。と言うことで分離して見ると・・あら・・いたいた。矢印の部分に挟まっていました。この場所は分解しないと見えないのです。まぁ、故障の原因が分かって良かった良かった。

Dscf209566 では、洗浄したダイカスト本体から組立てて行きますよ。まず、ビスが脱落してぐらついていた吊輪イヤーにエポキシ接着剤を塗布してビス留めします。FTの場合、吊輪イヤーが緩むのは決まって巻上げ側なんですね。これは、ダイカスト本体に取り付けるビスの位置が影響しているようです。

Dscf209655 吊輪イヤーの取り付け、蝶番部分のモルトの交換、電池室のやり直し(リード線交換)スプロケット軸の組立が終った状態。

Dscf210387 後期のシャッターユニットは磨耗も少なく程度は良いと思いますね。これなら巻上げも軽快となると思います。メインのバネは、しばらく前から従来使われていたバネをホールドするリングが無くなり、その分だけバネの条数が増えています。耐久性の向上ですね。また、この頃になると、チャージギヤは従来のカシメによる組立ではなく、ナットによる組立式となります。

Dscf210638 スクリーンを表からルーペで観察すると、画面全体に白い点々が見える。しかし、スクリーンではない。プリズムを分離してみると、ご覧のようにカビ痕が点々とあります。ファインダーを通して見ると、これが黒い点々となって見えます。これは稀に見るカビですが、古いものは清掃が出来ないものもあります。今回は、ぎりぎりセーフかなぁ・・この個体も長期放置組みでしょう。

Dscf2109921 36万台ですからCdsとメーターは生きていましたが、どうしたことか基板に問題がありました。パターンが腐食して導通抵抗が増大していましたので作り直してあります。ほぼ組み上がってセルフタイマーレバーを作動させたところ、ご覧の位置で停止してしまいます。これは、左の↑のレリーズボタンとの同調を調整する部分が開き過ぎでクラックが入る寸前まで広げられています。設計変更前はネジ式でしたが、変更後は板材を開いて調整をする乱暴な方法になっています。しかし、調整範囲は自ずと金属の曲げられる範囲であって、それ以上に曲げる必要がある場合は、どこかに調整の不具合があるはずです。お話しが逸れましたが、それによって右の↑部分でタイマーからのレバーとの連携が狂い、噛み合ってしまう状態となっています。過去に分解された方は何をしたかったのかなぁ? 全体を把握出来ていないと、トンチンカンな作業をすることになります。

Dscf212359 まだ他にあるのですけど、意外に長くなりましたので止めておきます。出来上がってみれば36万台のきれいな個体となりましたが、元はジャンクで部品取りとして入手をされたそうです。元々の不具合もあったのでしょうけど、わかんない人がいじって返ってジャンク度を上げてしまった典型のカメラ。こういうのは自然故障より手間が掛かって工賃は一緒なので疲れます。まぁ、ジャンクから1台復活出来て良かったですけどね。


眠いシャッターのPEN-F

2011年02月11日 19時37分36秒 | インポート

Dscf206957精工舎の1953年製SUPERを入手してO/Hをしました。ホームページの「今なにしてる」にUPしましたのでご覧ください。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/sub1.html

Dscf207758 外観の非常にきれいなPEN-FT #2216XXが来ていますが、シャッターが極端に遅く、リターンミラーの開閉もスローモーですね。画像をよ~くご覧くださいね。全体のメンテナンスを実施することに致します。

Dscf207277 しかし、調子の悪い個体ですよ。外観はきれいで保存状態も悪くは無いと思えるのに、メカはガチャガチャな感じです。どこと言って全てが油切れのような状態。集中して作業をしていましたら画像を撮るのを忘れていました。ダイカスト、巻上げ関係とシャッターユニットを洗浄注油をして組立てています。巻上げギヤの潤滑はカラカラの状態でした。

Dscf207755 シャッターユニットを組み込みましたので、シャッター幕保護のため裏蓋を取り付けます。モルトもやり直してあります。

Dscf208155 新しいブレーキのOリングはすでにリングホルダーにセットしてありますが、ピンセットのOリングがこの個体にセットしてあったもの。よくよく見ると八角形にカットしてありますね。これではブレーキリングとセットしても、殆どブレーキ機能は果せないと思います。この個体のシボ革は過去に剥がされた形跡は無く、工場で組まれたままのオリジナルに見えますが、これが工場での処置とすると理由を聞いてみたいと思うのです。過去にも同様にカットされた個体を確認しています。

Dscf208217 結局のところ使われない状態で長期に放置されていた結果だろうね。各部の磨耗劣化は少ないのです。しかし、このような履歴の個体は決まってスローガバナーにダメージがあります。各歯車が他の部品のように表面処理(メッキ)を施されていないため、錆が発生してしまうのです。精密な部分ですので、錆が発生した歯車ですとスムーズに作動しないのです。コンスタントに作動させている個体には錆は発生しません。全反射ミラーについては、オーナーさんより「交換か再使用の判断はお任せします」とのことでしたが、見難い腐食はないので再使用は可能ですが、古いミラーですので反射率は落ちています。このような場合は返って交換の判断がしにくいのです。よって、古いミラーを再使用としてあります。

Dscf208337 F用38mmは私の判断でメンテナンスを致します。マウントを分離すると接合面には流化したグリスがべっとりと付いています。F用ですと古いですから、殆どの個体はこのような状態です。茶色のネジロックが塗布されているビスは過去に分解されてメンテナンスを受けていることが分かります。オリジナルはグレー色です。

Dscf208666このようにきれいな個体ですね。調子も復活していますが、スローの1/2と1秒 が不安定な場合があるのが残念なところです。完治にはスローガバナーを交換をする必要があります。