先日突然に到着していた分解されたPEN-FT(B) #3109XX(1969年9月製)のオーナー様と連絡がつきました。分解はご自身で行ったそうです。なんとか復元をして欲しいとのこと。分解機の復元は通常の修理ご依頼とは異なりますので場合によってはお受けできない場合もあることをご承知ください。今回は30万台のブラックモデルなので、このままにしておくわけにも行きませんので・・観察すると露出メーターまで分解が及んでいます。これらの電気部品は基本的に分解をしてはいけません。不用意にコイルの巻き線にドライバーが当たったことで、細い銅線を切ってしまう危険性もありますし、メーター感度の調整も狂うことがあります。また、気が付かない部品の紛失などの危険もあります。では、明日から作業に掛かることにいたします。
問題の露出メーター。まず上部プレートの留めネジがビニール袋内に見当たりません。分解機は必ず部品紛失があります。この部分は本来分解をしてはいけません。⇦のような細いヒゲゼンマイやコイルの巻き線もありますので、気が付かずに切断してしまう危険性があります。針の先端も曲がっていました。その他、ネジが磁石に吸い寄せられて付着している(コイルが動けない)こともありますので、慎重に点検していきます。
内部の軸受け部がヤスリで削られていますが製造過程かなぁ?
簡易テストで作動しない。点検するとCdsからの赤リードが断線していました。ハーフミラーを取り出してありましたので、その時にCdsにストレスを掛けたのが原因でしょう。
作動をするようになりました。問題は感度です。
使われていなかった個体は圧板とフィルム押えにカビが生えているものが多いです。
ここからは通常の組立になります。本体を洗浄をしてモルト貼りから始めます。
レバーユニットを留めるネジと高さ調整用ワッシャーが失われていました。分解したパーツの適切な管理をしませんと、いつの間にか細かなパーツは飛散して、失くしたことさえ気が付かないのです。
接眼プリズムを保持するプリズムホルダーのネジが外されていましたが、プリズムが欠けています。落下の衝撃などで欠けている個体もありますが、この個体の場合、取り出す時に無理をしたのでしょう。
画像は良く写っていませんが、拭き上げをしたようで、渦巻き状の傷が付いています。ここまで書いた不具合はすべて分解による劣化です。元は良い個体だったはずです。
この調子で行くと終わらないので急ぎます。シャッターユニットは特に問題はありません。チャージギヤと軸の摩耗も僅かです。スローガバナーを超音波洗浄しています。
シャッターユニットを搭載してやり直した前板関係と組み立てます。
右側のシンクロ接点#2が折れています。
絶対に折れないとは言いませんが、普通は折れないですけどね。交換をしておきます。
ハーフミラーは新品と交換です。
露出計はやはり30万台のユニットとしては感度低下が大きいです。調整抵抗が破損していました。どうせ感度調整をするので使用しませんが。やれやれ、やっとここまで来ましたね。人様が分解途中で放棄した個体は非常に手間が掛かり本来はお受けしたくないのですね。しかし、カメラには責任は無いので可哀想ですから・・。後は上下カバーを取り付けて完成ですが、皿ネジの1本が欠落しています。最後の最後まで世話が焼けるのです。
露出計調整とピント調整を終えて洗浄をした上下カバーを取り付けます。まだ艶消しの塗装肌の残る良いカバーです。
ここのネジが欠品していましたので塗りネジを作って留めます。
ほら、きれいな個体でしょ。30万台のブラックFTを世の中から消す訳にはいかないのです。しかし、どうして分解をするお気持ちになられたのでしょうかね?
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