今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

PEN-S 2.8だって後期は・・

2010年11月24日 23時03分00秒 | 写真

Dscf141452 PEN-S 3.5の後期について書きましたが、2.8の後期だって同じなのですよ。この個体は#4535XXで1968-8月製ですがトップカバー横ビスは+で、シャツターは画像のようにハウジングは黒アルマイト、接点は改良型となっています。しかし、内部の部品に未だ変更はありません。シャッターユニットの仕様変更は全て同時に行われたわけではなく、その都度の変更であったことが分かります。前回のPEN-S 3.5の製造が44.7と記載されていますので1969-7月製(表記の仕方も変化しているのが興味深い)ですから、シャッターユニットの大きな仕様変更は概ね1968年の後半から翌年1969年の前半であったようです。

Dscf141361 製造が新しいこともあってPEN-S 2.8としては疲労も少なく、コンディションは良いですね。中々これだけの個体は見つかりません。過去に分解を受けており、シャッターもO/Hをされていますが、非常にまじめできれいな作業ではありますが、ちょっとダメなんだな。何故かファインダーは全く手付かずで対物レンズが曇っています。なぜ清掃しなかったんだろう? 分解するとミラーや接眼レンズの接着が剥れています。この個体は裏蓋のシボ革も剥離ぎみでしたので、後期の製造ではあまり丁寧な作業がなされなかったのかなぁ? とか思います。なぜって、私も製品のシボ革を貼っていた経験がありますが、当時の貼り方は予めシボ革裏面に塗布されているゴム糊(乾燥状態)をケトンを筆で塗布して戻しながらジュラコン棒でゴシゴシしごいて圧着させていく作業で、これが個人差が出るんですね。私も下手ではなかったと思いますが、熟練した女性作業者には敵いませんでした。Dscf141775

PEN-S 3.5と同じ角度から写して見ます。ご覧のようにトップカバー横ビスは+です。ピントリングをよく見てください。従来は白で色入れを施されていた彫刻文字が彫刻されたままで色が入っていませんね。何となく印象が変わって見えます。これも工数節減のための省略なのでしょう。まぁ、どちらにしても、ファインダーのリンクル塗装にも剥離の無い、すばらしいコンディションの個体です。


後期は問題PEN-S 3.5

2010年11月22日 23時23分17秒 | 写真

Dscf140122少し前にやりましたけど、またPEN-S3.5が来ました。#1852XXと1969-7月の製造ですから後期の頃の製品です。シャッターが不調との事で、ちょつとイナな予感がします。この頃になるとPEN-S2.8から通して来たシャッターユニットに数々の変更が加えられています。画像はすでにO/Hを終えているユニットですが、見て分かる変更は外側のハウジングの黒アルマイト化や接点端子の改良などに気がつきますが、シャッター羽根を制御する部品にも改良(悪?)があって、組立ての容易さと性能の安定を狙ったと思われますが、それは新しい頃だけのことです。今となってはそれが災いとなって、部品が消耗するとO/Hだけでは性能を回復できない状況になります。この個体は、消耗が少な目でしたので今回は事なきを得ていますが・・この他、駒数ギヤの樹脂化など、コストダウンも進んでいる個体です。

Dscf140411 シャッターリングには残念ながら腐食が認められます。腐食は深く緑青が噴いていますね。きれいに削り取ってから組み込みます。

Dscf141084 この頃の識別点としては、トップカバー横を留めているビスが+になっていることです。昔、私がO/Hをした3.5を販売したことがありましてね。その時「ペンSのビスはすり割り(-)でトミーさんともあろう人がこんなビスを付けるとは」とクレームを頂いたことがありました。お生憎様。残念ですが、3.5の途中からは+ビスで正解なのです。ご自身の知識に自信をお持ちのマニアさんかと思いますが、すみませんが私の方がはるかに多くの個体を見て来ているのです。過去に修理をした個体の特徴は全てノートに記録しています。米谷さんも「そんな資料はオリンパスにもないよ」と言っておられました。それは公開できませんが・・・


PEN-FTのストロボ不調

2010年11月19日 21時31分51秒 | 写真

Dscf139526 過去にO/HをしたPEN-FT(B)がストロボの発光不調で帰って来ました。経験的にシンクロ接片の金属疲労による折れや曲がりを疑って交換をしておいたのですが、症状が再発したとのこと。「発光せずにストロボのコネクターをソケットから引き抜こうとすると発光した」とのことからソケットの接触を疑い点検をすると・・・

Dscf1396681 ソケットは中心の電極部を絶縁するための樹脂部品を画像のように菊座形にカシメて組立てられています。これが長い間の使用によるストレスで緩みグラグラの状態になっています。これにより、ストロボのソケットが外周に接触したため発光しなかったものですね。今回は再カシメと接着剤による補強をしておきますが、一度緩んだカシメ部の金属は、緩みやすいものですので、再発した場合は交換ということになります。

Dscf139754 修正を終えて組立てています。ピンセットで銜えている部分のガタは無くなっています。ストロボのソケットを接続する場合は、丁寧に真っ直ぐ抜き差しするようにしてください。ソケットのコードを引っ張るような横方向の力を加えますと容易にカシメは緩んでしまいます。色が抜けていたマークは色を入れておきます。

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フジペットはトイカメラ?

2010年11月17日 23時46分29秒 | 写真

Dscf138133 PEN-FVと一緒にFUJIPETが来ています。この方のFUJIPETは何台修理したでしょうね。京都辺りのフリマなどで見つけてこられます。今回の個体は外観はシボ革剥離程度でそれほど悪くはないようですが、単玉のF11レンズが良くありませんね。派手に曇っています。シャッターは不動。また、分解歴がある個体で、点検すると接点を制御するバネなどが欠品していますね。

Dscf138333 シャッターは単速1/50の簡単な構造ですので、全て分解洗浄の上、チャージ、レリーズレバーにグリスを塗布して組んであります。欠品している接点のバネは自作しておきました。洗浄して剥れていたシボ革を再接着をしたプラ製の本体とドッキングします。取り付けはなんと3本の木ネジです。

Dscf138544 曇っていた単玉は手磨きで仕上げてあります。問題はホルダーとレンズの取り付けです。他のサイトでも指摘されている通り、ホルダーとレンズのネジが全く緩い状態で、測定するとどちらもφ25.2mmでした。それではネジ山が噛み合うはずがありません。どうしてこのような設計となっているのか首をひねります。調整の後は接着剤で固定していたようです。

Dscf138655 組立て完成。シボ革の色は数種類存在しているようですが、この個体はグレーなのか黒なのか? 初期の個体は、フードは金属製で裏蓋の赤窓にシャッターが装備されていますが、この個体はフードはプラ製で赤窓シャッターは省略された後期(?)モデルでしょう。発売は1957年(昭和32年)だそうで、私が四つの時だなぁ。それを考えると中々デザインに凝ったカメラだと思いますね。巻上げダイヤルの逆転防止機構には、軸にはめて本体側に一端を固定したコイルバネで、一方向のみ回転可能とするバネ1個のシンプルなアイディア設計。(ヘキサゴン(六角)レンチをホルダーに固定しているバネと同じ構造)部品点数を最少として初心者(子供)向けに安価に市場に供給するという意図が分かります。現在流行のトイカメラとどちらが良く写るのでしょうね。

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ペングレーのFVを作れ

2010年11月13日 22時27分15秒 | 写真

Dscf135977 大阪のご常連さんからPEN-FV #1028XXが来ています。娘が嫁に行きましたのでペコポコのお人形を頂きました。ありがとうございます。

FVの状態は、あまり良いとは言えませんが、致命的な部分は無い個体ですので、O/Hで問題ないでしょう。ペングレーというのは、カバー全部をグレーに塗るのではなくて、ちょうどコンパクトEE系のようなイメージですね。さて、どんなになるでしょうね。

Dscf136178 とりあえず調色でグレーを作ります。とは言っても本家の色も一定ではなくて、製造時期やロットによっても明度が変化します。今回は一番手元近くにあったEE-2に合わせます。EE仕様とするためにはダイカスト本体(巻上げレバー下)、裏蓋(バックカバー)、蝶番、ラッチカバーの4点を塗装する必要があります。それでは、塗装した部品を取り付けてメカのO/Hに掛かります。

Dscf136566 メカには致命的な問題はありませんでしたが、FVの初期の製品(1967-1製)と製造から時間が経過しているため、光学系はきびしい状態でしたね。リターンミラー外周の曇り、接眼プリズムのコーティング曇りとスクリーンは外側からの接触によるキズによる黒点などがあります。全反射ミラーはオーナーさんのこだわりにより(笑)新品と交換しました。アイピース表面に盛大なキズがありましたので、あまり大切には扱われなかった気がします。表面を研磨してキズを消してあります。塗装した部品の位置関係は画像の通り。カメラ・ライフ誌によればFVの発売は1967-2月となっており、これはオリンパスの資料によるものと思われますが、製造はそれ以前に行われていたのは当然のことです。

Dscf1374 シボ革を貼ってみました。シボ革の色も機種や製造時期によってかなり変化しています。人の目は白系統の色に対して鈍感ですので、並べてみませんと違いが分かりにくいのです。当初EE-2と同じ程度の明度とするつもりでしたが、表面積が大きくカメラとしてもランクが上のFVにはマッチせず、少し濃目としていますが、それでも下にある三光ペンのものの方がはるかに暗いグレーです。しかし、このグレーでもF系には似合いません。

Dscf136977 巻き戻し側はこんな感じ。画像は本当の色より少し明るく写っています。まぁ、それほど違和感はないところ。

問題は前面ですね。当初から懸念していた通り、EE系のように上下に濃いグレーの帯がありませんので、少しインパクトに欠けた印象もあります。それを予想していたためシボ革は濃い目のグレーとしたかったのです。まぁ、沢山の個体をお持ちのオーナーさんですから、バリエーションとしては良いと思います。その気になれば、すぐにオリジナルに戻せますし・・・Dscf137633

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