今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライ35Tブラックの巻

2024年05月31日 16時00分00秒 | ブログ

最近のオークションを見ているとローライ35Tはローライ35と同じような相場で出品されているようですね。35Tは35が生産終了した1971年から3年後に復刻されたモデルとのことですが、復刻を望む要望が大きかったのか、それともお家の事情なのか? 使用されているネジが+になったり距離リングの文字表現が簡略化されたりはしていますが、基本的には35と同じと見て良い作りです。返って、画像のチャージギヤが35の樹脂製から真鍮の金属製に置き換わったのは良いところです。カメラ店様からご依頼のこの個体は過去に分解歴がありますが、ギヤの噛み合わせをわざわざケガいているのに組立では1歯ズレているという首を傾げる組み立てをしてあります。

小さな割には重いカメラ(ホールドしにくい)ですのでカバーがアルミ製(黒アルマイトの上に黒塗装)と強度が無く、簡単にへこんでしまいます。これは修正をしておきます。

 

作業はいつものローライ35と同じです。ファインダーは過去に分解されていて、レンズやフレームには返って拭き残しや粘着物が付着しているという厄介な状態でした。最後に透明フィルムを貼って防塵しておきます。

35Tの良いところは生産が新しいので露出計など電気部品の劣化が少ないところ。メーターは元気です。

 

沈胴フェルトの調整とシャッター・レンズをメンテナンスします。

 

 

最初に気になっていたのですが、この色。何となくオイリーですね。過去に分解された形跡はありません。ただし、後玉のリングナットは緩めようとしてスリ割の塗装が剥げています。ここは工場で組み立て後につや消し黒塗装をされているので緩みません。

 

分解をしてみると・・内部に油が混入しています。のところだけ油があるのではなく絞り羽根まで全て油が付着していて飽和状態になって油溜りになっているのです。

 

絞り羽根の収まる部分にも油が付着しています。どこから来た油でしょう? すべて洗浄脱脂をしてから組み立てます。

 

それと、シャッター羽根の穴部がへこんでいますね。これは組立時にハウジングを被せる時、穴位置にピンが正確に入っていないのに強引にネジを締めた結果です。経験的に、これはドイツ製よりシンガポール製になってからの方が多いと感じます。へこみを修正して組み立てます。

ヘリコイドグリスの交換と清掃をした前玉を組み込みます。

 

 

ローライ35より生産が新しいのとチャージギヤが真鍮製となっているため、巻き上げ(殆どチャージ済を忘れて再度巻き上げすることでギヤにストレスを掛ける)に神経を使わなくて良い安心感はあるのかな? 

 

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書くことないの巻

2024年05月29日 11時00分00秒 | ブログ

昨日の関東地方は、まるで台風のような風雨でした。台風1号はまだ沖縄付近にあるのに・・しかし、私の子供の頃は台風と言えば9月に来るものと思っていましたけど、今頃の台風はフィリピン方面に向かうのが通例だったものが、1号からイキなり日本列島に向かうコースをたどるようです。地球の気象が変化しているのでしょうね。で、難儀な二眼レフの作業が続いていましてブログを更新するネタがありません。この20mmは過去に分解を受けていて、レンズにカビや拭き残しなどが見えます。

写りにフレアーが出ているとのことで、取り合えず清掃してみましょうかね。

 

後玉に菌糸状のカビがありますが、前回分解は出来なかったようです。

 

 

このレンズの問題は前玉です。前玉の裏側が清掃出来ない曇りが発生します。この個体も外輪に曇りがあるのとガラスが荒れている状態になっています。これが写りに影響しているのでしょう。ガラスというものは不思議な物質です。

二眼レフの作業が続いていますが、この個体はローライコードⅢですが、ホコリまみれでアルミのダイヤル類も完全に酸化しています。シャッター他、不具合を数え切れません。二眼レフの製品化は機能の修復だけではなく、工数の半分ぐらいは外観(内部も)の清掃です。このダイヤル類も磨き出して本革のシボ革はブラッシングをして汚れを落とします。

ローライコードⅢはシンプルで私の好きな機種ですが発売は1950年とのことで、さすがに古いですのでこんな程度も普通でしょうね。ビュー・テイク共レンズは曇っていますが、経験的に清掃で完全にクリアーにはなりません。

ビューレンズは前端のリングナットが緩んでくれれば基板から取り外さずレンズは全て前に抜けて来ますから清掃は容易ですが、この個体はリングナットのネジ部に溶剤を流しても緩まないので完全に分離して清掃をします。

裏蓋を清掃していると・・あら? 三脚ネジが突き抜けた形跡があり、光線漏れをしています。裏紙はありますが、フィルム面の直近ですから、遮光をしておきます。

 

外側から見たところ。ここは簡単に分解交換ができない部分ですので、まず亀裂を埋めて光線漏れを止めてからネジ径と同じ外径の球面状のアルミプレートを製作してねじ込み接着をしました。これで完全に光線漏れは防止しました。

 

 

 

 

 

 

 


雑用が多くての巻

2024年05月25日 11時00分00秒 | ブログ

カメラ店様からの修理(鑑定)見積やらバタバタしていましてUPするネタがありません。このPEN-FTは突然巻上げもシャッターもフリーズしたというもの。分解をしても部品や組み立てに問題はありません。チャージの逆転防止爪の嚙み込みと見当をつけてメンテナンス後テストを繰り返していますが再発はしません。

このように再発をしてくれない故障が一番厄介で時間もかかります。

 

 

時間が中途半端なので最近作業をしていない当方在庫のローライ35をやっておきます。スプール、スプロケット軸とファインダーの分解清掃をして戻します。

 

稀にこのようなシャッターを見ます。磁気を帯びにくい愛用のピンセットにシャッター羽根が繋がって付いて来ます。絞り羽根も含めてシャッター全体が磁気を帯びているのです。ブラウン管テレビの上にでも置いていたのでしょうか?

 

時計修理の世界でも機械が帯磁することがあり精度に影響をしますので消磁器を掛けて磁気を取り除きますが、私の使用している消磁器はなんとオープンデッキのアカイの純正品(50年物)です。使えるので新しい機械は買いません。画像のように消磁されています。

完成したシャッターユニットを取り付けます。

 

 

シンガポール製のブラックモデルですから上下カバーはアルミ製のため角々に当たり傷がありますが、実用機としてはマァマァになりましたね。

 

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真贋判定PEN-Sブラックの巻

2024年05月21日 09時59分59秒 | ブログ

続いて「遅れてきたペンマニア」さんから二つ目の段ボール箱が来ていました。この方はPEN系の元箱付きや、今回のPEN-Sブラックも収集されているコレクターさんです。で、いつもの真贋判定依頼ですが・・パッと見て違和感はないですね。良いのではないでしょうか。

#1626XXは集中してブラックモデルが作られた頃のシリアルです。スプロケット、スプールなどの仕様に疑問はありません。

 

「おめでとうございます」真贋判定は間違いなく本物です。何度も分解を受けて修理をされているようです。かなり汚れていますので分解洗浄からしていきます。少し前に私のリペイント機が登場しましたが、本物が来ちゃいましたね。

このブラックモデルは1961年1月製と推測されますが、意外にPEN-Wのような塗装の劣化は見られませんね。PEN-Wは1964年後半の生産が多かったのですけど、生産が後の方が塗装の劣化がひどい? 恐らく塗装を担当した工場が異なるのではないかと思います。さすがに駒数ガラスは曇っていて良く見えませんので研磨をしてから洗浄します。

製造が古くとも、それほど汚れていないカメラもありますが、この個体は時代分だけしっかり汚れていて洗浄に時間がかかりました。すべて洗浄を終えたところ。

 

なぜか裏蓋底部はひどいですね。これは何か後天的な保管場所などの原因がありそうです。開閉鍵など腐食も違和感があります。

 

組立はいつもと一緒です。トップカバーの吊環部がへこんでいますので修正をしてから組みます。

 

ファインダーのレンズを分離して清掃をしました。本体に取り付けます。

 

 

頑張りましたが今日はここまでです。明日は急ぎの修理が入るのでこの個体の作業は出来ないかもしれません。

 

急ぎの修理は午前中に終わらせました。レンズですが、びっくりするくらいきれいです。オリジナルとは思うのですが、私の印象では、初期のレンズは曇りなどが少なく、中期以降のレンズが曇りやすい気がします。ガラスの材質が変わったのでしょうかね。

裏蓋も仕上げておきます。開閉鍵のメンテナンスをされる方は少ないと思いますが、初期の個体はグリスが変質しています。構成部品を洗浄して新しいグリスで組み直します。

 

初期の特徴が写っている画像です。(見えませんが) 本物のブラックモデルは側面のネジは黒塗装ではなくクロームモデルと同じメッキを複数確認しています。駒数ネジの孔は非貫通です。レリーズボタンの復帰バネが非常に弱く、指を載せただけでシャッターが切れてしまう時があります。その後、バネは強化されました。

市販をされなかったブラックモデルの現存数はどのくらいなのでしょうね。それをお一人で複数台所有されているとは羨ましいです。

 

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キヤノンRMの色入れの巻

2024年05月20日 20時00分00秒 | ブログ

ご常連の「遅れてきたペンマニア」さんがきれいなキヤノンRMブラックを入手されて来ましたが、ペンタ部のCANONの色入れが抜けているので入れ直して欲しいとのことです。この個体は良く観察するとリペイントをされたようです。

ルーペで観察すると「N」の色入れの拭き取りが完全ではありません。この部分は第一体裁面と言って、どんなに小さなキズや塗装ブツがあっても不良となる部分ですので工場の作業とは思えません。色は基本の白色で、それを完全につや消しとしていますが、私の印象では色は若干クリーム掛かった白で艶は半艶程度です。塗料はつや消し剤を多く混ぜると塗料の密着が悪くなって、完全に乾燥をすると剥離をしてしまうことは私も経験があります。

比較的簡単に楊枝で取り除くことが出来ました。やはり密着が足りません。

 

画像ではつや消しに見えますが、半艶で光沢もあります。色は若干クリームで入れてあります。

 

本来は他の部分の色入れも直した方が良いのですが、今回はここまでとします。簡単に見える文字の色入れですが、特にペンタ部はカメラの顔となる部分ですのできっちりと作業をしたいものです。

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