今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

何か怪しいPEN-FTの巻

2018年10月29日 20時16分49秒 | ブログ

オーナーさん曰く、「長年恋焦がれていたカメラ」とのことですので言いにくいのですが・・この個体はPEN-FT #3099XX となっていますけど何か違和感があるんですね。いぇ、長年の勘というか・・本体の仕様が合わないと思います。アンダーカバーと本体の嵌合が固いです。付け替えの可能性。ボトムキャップが欠落しています。接着が剥がれている個体は意外に多いのですが、この個体はキャップ自体がなくて、これは過去に組んだ人は承知の訳です。そもそも、30万台でしたらキャップではなくシールのはず。

ハーフミラーが難儀なことになっていますね。汎用のハーフミラーから加工されたようです。板厚が厚過ぎ。透過率も違うでしょうね。

 

30万台では巻上げユニットを留めるネジは+ネジのはず。-ネジはそれ以前。

 

 

巻き戻し軸部分の形状が30万台ではありません。色々な観点から推測しておよそ24万台後半から25万台初期の個体と思います。よって、トップカバーの付け替え。個体数維持の観点からそれも仕方がない部分もありますけどね。

 

フィルムレールに腐食があって、それを削っています。軽く研磨をする程度であれば問題はないのですが、削るのはダメですね。最悪フランジバックが不正確になってしまいます。

 

内部のモルトはすべて剥がされていて新しく貼ってはいません。手抜きです。

 

 

気を取り直して始めます。まず洗浄をしたダイカストにボトムキャップを接着するところからです。

 

本来であれば、すでに完成しているはずですが完成していません。シャッターユニットは油まみれというかスローガバナーにグリスが着いていますね。すべて洗浄脱脂します。

 

きれいになりましたね。基本的には問題はないユニットですが、シャッター幕駆動のギヤが1歯ずれていました。

 

電池室からのリード線は交換されていましたが、気にいらないのでやり直し。

 

 

メカの組立は完成。

 

 

ちゃんとモルトは貼ってね。

 

 

この個体はオリジナルのネジではないネジが多く使われています。なんで無くすかなぁ? 接眼枠のネジは両方規格外。特に右のネジは皿なので取付部が割れてしまっています。皿使うかね?

 

この真鍮ネジはPEN-Fの頃に使われていたスペシャルネジ。これなら割れないのです。

 

タイマーレバーがお辞儀していますね。調整ネジが緩んだのか、付け替えの可能性もあります。

 

新しいハーフミラーをセットして組もうとするとミラーがガタガタになります。汎用の厚い(1.7mm)ミラーを使うために板バネが取り去られていました。

 

この部分に付くレバーカバーが欠落していました。

 

 

あっちこっちどれだけ無くして来たんだよ。手持ちのカバーを取り付けます。

 

 

底カバーは特に歪が無いのに取付けが非常にきつい。ダイカスト本体と底カバーの嵌合は、その製造時期では適正に合わせてあるので、異常にきつい場合は交換されている可能性が高いです。

 

やれやれ、カメラには責任はありませんが、このような履歴の個体はオリジナルに戻すのには手間が掛かるんですよ。

 

おっと、セルフタイマーの作動タイムが速すぎる。Rレバーは変更後のタイプが着いていますが、この本体(25万台)の頃だと変更前のレリーズとの調整ネジがあるタイプのはず。これは30万台の個体から移植されましたね。それによって作動タイムの調整がズレているのです。取付けネジのスリ割りも痛んでいるので何度も取り外しをしたようです。このタイプは調整ネジではなく、先端のコ部分の開きで調整をするのです。

どこにトラップが仕掛けられているか分からない個体は手間が掛かります。すべてオリジナルに戻してあります。

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レンズが落ちたPEN-Wの巻

2018年10月26日 20時44分03秒 | ブログ

最近のPENファンの方は若い方も多くなっているようですけど、年々カメラの状態が悪くなっているので気の毒だなぁと思うこともありますね。このPEN-W #1009XXは1964年9月の製造。そう、東京オリンピック開催の前月という記念すべきカメラですけど、「撮影しようとバックから取り出したらレンズが外れていた」とのこと。オークション購入機とのことで、かなり使い込まれた個体で分解も受けていますので、組み方が甘かったのでしょうね。しかし、抜けるまで緩んでいたわけですから、撮影はピンボケだったのでは? ワイドだから意外に大丈夫だったのかな??点検の結果、絞り羽根が変形していて正常に作動しない状態。絞り羽根は前玉(ホルダー)で押さえている構造のため、押さえが無くなると絞り羽根があらぬ動きをして痛めてしまうのです。これは交換する以外にありません。

使い込まれているのは仕方のないことですが、この組立はイヤだなぁ。正確に組もうという心が無いですね。

 

何か手にベトベト着くと思いましたら、本体側のモルトです。オリジナルの劣化したモルトを清掃しない状態で、上から両面テープ付のモルトを貼ったものですから、テープが劣化をしてベトベトになり位置もずれています。ここは、接着でないと耐ちません。

手間は掛かっても、すべてきれいに清掃することが修理やレストアの基本です。

 

 

本体底部も劣化したモルトで侵されています。

 

 

シャッターは開きっぱなし。低速は使っていなかったのでしょう。

 

 

地板の摩耗はそれほどでもありません。洗浄をして組み立てて行きます。このシャッターは、ピンセット先のバネ1本だけで動いてるのです。ですから、メンテナンスをされずにフリクションが大きくなったシャッターは止まってしまうのです。

まぁ、なんやかんやシャッターは快調になりました。ファインダーの分解清掃も完了。では、例の絞り羽根・・

 

6枚の絞り羽根。両端にプレスで孔が開いていますが、打ち抜いているのではなくめくられているように加工されています。それがガイドに嵌っていて開閉の動きをするわけです。しかし、レンズが緩んだ状態で長期間作動させたために、「めくれ」の部分が無くなっちゃたんですね。それで正規の動きをしなくなっています。

不良の絞り羽根を交換して組みます。しかし、工場ではどのようにして組んでいたものか、「あちらを入れるとこちらが外れる」の繰り返しで簡単には嵌ってくれません。特に目の調子が悪い時は行いたくない作業です。

 

PEN-S系と違ってPEN-Wの場合、絞りクリックの方式が異なります。板バネによるクリック式。接点が摩耗しやすく、摩耗をするとクリック感が乏しくなるという欠点があります。モリブデングリスを塗布して組みます。

 

リングナットは再び緩むことの無いようにネジロックを塗布しておきます。

 

 

まぁ、撮影をしようとしてレンズが外れて来たらびっくりしますよね。外観の塗装は、かなり使い込まれた状態ですが、シャッター、レンズは良好な個体です。また頑張ってくれるでしょう。

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BROVA ミリタリー 11ALCの巻

2018年10月24日 17時30分37秒 | ブログ

ご常連さんに古いミリタリーがお好きな方がいらしてね。いつもアメリカから取寄せていて、そして問題を抱え込むのでした。キャリバーはブローバの11ALCです。まず、最初の問題は文字盤が分離出来ない。どうも接着をされているようです。

 

このような場合、殆どがゴム系接着剤で貼られています。文字盤の足の間隔が合わない文字盤を無理に取り付けるために足を折って接着をしたということ。

 

機械自体は比較的きれいな個体ですが、またまた問題発生です。

 

 

出車のスポーク部に圧力が掛って曲がっていて、それによって外周の歯の部分が大きく湾曲しています。

 

⇧の部分に大きな力を受けています。この歯車は分離出来ませんので、さて、どうやって直すか?

 

単にピンセットで矯正をしてもバネ性で戻ってしまいますので裏技で・・

 

 

どこを修正したか分からないでしょ。

 

 

天真に注油をします。

 

 

年代を考えれば、素性は悪くはないですね。

 

 

天真の摩耗も少ないようです。途中で天真の交換を受けているのかもしれません。さて、文字盤は接着するしかないなぁ・・

 

 

三つ目の問題。ケースを超音波洗浄していましたら、あらら、風防ガラスが外れました。測定してみると、ユルユルの風防を、これまたゴム系接着剤で着けているだけでした。どんだけゴム系接着剤が好きなんだ。このアメリカ人は・・

普通の時計は針が12時間で一周しますが、この時計は24時間で一周するようになってますね。黒/白ツートンフェイスとして昼夜を視覚的に認識し易くしたものかですが、この文字盤は黒/白が真横に仕切られていますが、縦に仕切られている文字盤もありますね。良く分かりません。旧日本軍は正式採用で官給された時計は無いと思いますが、個人の私物として左の二重ケースのような時計を使用したようです。赤字で24時間表示になっています。ミリタリーウォッチはなぜか魅力がありますね。

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MINOLTA repo を少しやりますの巻

2018年10月20日 21時43分09秒 | ブログ

ミノルタのレポをやります。これも要整備機で寝かされていた個体でしょうね。シャッターが不動です。露出メーターの感度は良さそうです。

 

放置のレポはモルトがすごいことになっているのです。裏蓋側の塗装も侵されています。

 

プログラムシャッターに連動する追伸式メーター。ASA100でEV8~EV16で連動。

 

 

シチズンLはプログラムコントロール方式でシャッター速度と絞りが自動的に決まるんですね。スローガバナーは華奢な作りです。

 

整備性は悪くはないシャッターですね。正常に作動するようになりました。

 

 

ミノルタのレンズは曇らないですね。非常にきれいです。清掃をして組んでいきます。

 

ファインダーの清掃。PEN-EEとよく似ています。

 

 

1台完成。後ろが2台目。

 

 

こっちの方が製造は後なのに、モルトの劣化具合がひどいです。露出計の感度も低下気味です。

 

裏蓋が固くて開かない。原因はフィルムカウンターの爪が下がっていて裏蓋の接合面が乗り上げてしまっている。無理に裏蓋を開けようとしてシボ革も剥離してしまっている。

 

爪(レバー)の曲げを矯正して、裏蓋の変形も修正をしておきます。

 

 

シャッターは不動ですけどメーター合わせリングもビクとも動かない。このシャッターは分解をされていますが、カム板の組み方が間違っているのです。ピンセット先のピンが左のスリットに入っていました。特殊なプログラムシャッターなので間違いやすいのです。

メーター感度は低下気味、調整抵抗を抜きましたがあまり変わりません。

 

 

まぁ、何とか組みました。

 

 

次は3台目のブラックモデル。底部にへこみがありますね。修正をしておきます。

 

 

露出メーターの感度はこちらが一番低い。セレンを分離してチェックします。

 

 

同じなのでUPしませんが、この個体が一番色々な問題がありました。シャッターは絞り羽根の固着がありますので分解組み直しです。

 

シャコウトウのモルトが劣化してカタカタと動きますのでモルトの交換をしておきます。

 

年代を考慮すれば仕方のないことですが、シボ革の接着が強固ではなく端から剥離していましたので補修接着をして完成。流石に3台続けて作業をすると手慣れては来るのですが、正直なところ飽きますね。あ~終わったぁ~。

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三光PENだったの巻

2018年10月19日 20時16分21秒 | ブログ

PENの最後は初期型の三光PEN #1029XXでした。時代相応に劣化をしていますけど、まぁまぁの個体ではないでしょうかね。外観上では大きな欠点は無いようです。

 

画像ではそこそこに見えますが、駒数ガラスが曇っています。中央のカニ目ネジは、この頃の特徴でカニ目孔は貫通していません。こんなに浅い孔では組立時でも工具を滑らすこと必定。よって貫通に変更されました。設計者としては、貫通にするとスプール軸の真鍮が見えてしまうので、美観の点からそれを嫌ったのでしょう。しかし、組立現場からクレームが来た?かどうかは知りません。カニ目からも分かるように過去に分解歴があります。

ファインダーの劣化が目立ちます。まず本体の樹脂の劣化。それと、対物レンズは樹脂製ですが、過去の分解清掃でゴム系の接着剤を使っているため樹脂が侵されています。

 

分解してすべて洗浄。巻上げダイヤルカバーは熱カシメのため分離出来ません。この後、ネジ留め式に変更されます。初期型の特徴ですね。

 

リールのスリップ方式や駒数ギヤの設計が後年のPENとは異なります。

 

 

シャッターはそうなっていたか。言わないけど・・。まぁ、新しいから故障しないでしょう。

 

ファインダー本体の研磨によって本来の色と光沢を甦らせています。樹脂レンズは接着剤を削り落として修正。

 

古いヘリコイドグリスが固化していて清掃が大変。レンズを清掃していきます。

 

コーティングに痛みがありますけど時代を考えると悪くはない。付け替えかも知れませんけどね。

 

きれいになったんじゃないでしょうか? 調子は大変良好です。

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