オーナーさん曰く、「長年恋焦がれていたカメラ」とのことですので言いにくいのですが・・この個体はPEN-FT #3099XX となっていますけど何か違和感があるんですね。いぇ、長年の勘というか・・本体の仕様が合わないと思います。アンダーカバーと本体の嵌合が固いです。付け替えの可能性。ボトムキャップが欠落しています。接着が剥がれている個体は意外に多いのですが、この個体はキャップ自体がなくて、これは過去に組んだ人は承知の訳です。そもそも、30万台でしたらキャップではなくシールのはず。
ハーフミラーが難儀なことになっていますね。汎用のハーフミラーから加工されたようです。板厚が厚過ぎ。透過率も違うでしょうね。
30万台では巻上げユニットを留めるネジは+ネジのはず。-ネジはそれ以前。
巻き戻し軸部分の形状が30万台ではありません。色々な観点から推測しておよそ24万台後半から25万台初期の個体と思います。よって、トップカバーの付け替え。個体数維持の観点からそれも仕方がない部分もありますけどね。
フィルムレールに腐食があって、それを削っています。軽く研磨をする程度であれば問題はないのですが、削るのはダメですね。最悪フランジバックが不正確になってしまいます。
内部のモルトはすべて剥がされていて新しく貼ってはいません。手抜きです。
気を取り直して始めます。まず洗浄をしたダイカストにボトムキャップを接着するところからです。
本来であれば、すでに完成しているはずですが完成していません。シャッターユニットは油まみれというかスローガバナーにグリスが着いていますね。すべて洗浄脱脂します。
きれいになりましたね。基本的には問題はないユニットですが、シャッター幕駆動のギヤが1歯ずれていました。
電池室からのリード線は交換されていましたが、気にいらないのでやり直し。
メカの組立は完成。
ちゃんとモルトは貼ってね。
この個体はオリジナルのネジではないネジが多く使われています。なんで無くすかなぁ? 接眼枠のネジは両方規格外。特に右のネジは皿なので取付部が割れてしまっています。皿使うかね?
この真鍮ネジはPEN-Fの頃に使われていたスペシャルネジ。これなら割れないのです。
タイマーレバーがお辞儀していますね。調整ネジが緩んだのか、付け替えの可能性もあります。
新しいハーフミラーをセットして組もうとするとミラーがガタガタになります。汎用の厚い(1.7mm)ミラーを使うために板バネが取り去られていました。
この部分に付くレバーカバーが欠落していました。
あっちこっちどれだけ無くして来たんだよ。手持ちのカバーを取り付けます。
底カバーは特に歪が無いのに取付けが非常にきつい。ダイカスト本体と底カバーの嵌合は、その製造時期では適正に合わせてあるので、異常にきつい場合は交換されている可能性が高いです。
やれやれ、カメラには責任はありませんが、このような履歴の個体はオリジナルに戻すのには手間が掛かるんですよ。
おっと、セルフタイマーの作動タイムが速すぎる。Rレバーは変更後のタイプが着いていますが、この本体(25万台)の頃だと変更前のレリーズとの調整ネジがあるタイプのはず。これは30万台の個体から移植されましたね。それによって作動タイムの調整がズレているのです。取付けネジのスリ割りも痛んでいるので何度も取り外しをしたようです。このタイプは調整ネジではなく、先端のコ部分の開きで調整をするのです。
どこにトラップが仕掛けられているか分からない個体は手間が掛かります。すべてオリジナルに戻してあります。