今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ビトマチックⅡaは良いカメラの巻

2023年01月30日 13時00分00秒 | ブログ

カメラ市用の作業になると思いますけど、フォクトレンダー・ビトマチックⅡaが来ていました。レンズはウルトロン50mmf2付は少数派の個体のようです。しかし、ボディーサイズの割には巨大な鏡筒はどこから分解したらよいの? という感じです。画像は分解途中でまだシャッターユニットは露出しません。多段ロケットのようですが、各部品の精度と強度がすばらしく、キヤノンG17のようにグラついたりしません。まぁ、比較の対象ではありませんが、この時代のフォクトレンダーの作りは流石、西ドイツ製と思わせます。

やっとカム板が現れました。

 

 

シャッターはプロンター製で、右がスローガバナー、下がセルフタイマーです。作動が不良なので分解洗浄をして行きます。

 

前群繰り出しのレンズユニット。

 

 

この分厚い真鍮製のリングはフィルム感度表示と真鍮露出部分が距離計の連動ピンがスライドする構造。このような部品の集合体ですからカメラが重くなりますね。

 

露出計の窓レンズが接着が外れています。この窓がトップカバー面より飛び出しているので、レリーズボタンを押そうとすると窓も押してしまうので外れやすいのでしょう。

 

このように接着が剥がれています。

 

 

古い接着剤を取り除いて再接着をしておきます。

 

 

巨大なガラスの固まりのファインダー。少しバル切れがあるのは持病のようですね。

 

 

サイドのレバーを引くとフックが外れ、巻き戻しダイヤルがポップアップします。

 

フィルムを入れていないと空シャッターは切れない構造。巻き戻し後は裏ふたを開けなくとも下にフィルムが抜けます。

 

状態の良い専用革ケース付です。流石にドイツ製らしい材質、加工とも国産カメラとは比較が出来ないすばらしいカメラと思いました。ただし、一日中、首に下げていたら肩がこるでしょうね。

 

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ローライフレックス3.5Dの巻

2023年01月28日 17時00分00秒 | ブログ

ローライフレックスは2.8F(3.5F)辺りは見れば分かりますが、その前のBCDなどは良く分かりませんね。この機種は3.5Dだそうです。(店長さんにお聞きしました) 昭和30年前半の発売でしょうか? いつものようにファインダーから清掃します。フードは取り外し式にはなっていないネジ留めです。内部の汚れを清掃してミラーは周辺腐食はありますが使用可能なので清掃して取り付けます。

スクリーンは方眼入りのガラス製です。取り外して洗浄しました。

 

 

何度か分解を受けていますが、シャッターユニットのシンクロターミナルを接続するネジが無く配線されていません。ここのネジは非常に細く、通常のカメラネジでは合いません。私は腕時計もやるので探してみると、ケースに機械を止めるネジがぴったりでした。時計もやっていて良かったです。

シャッターユニット内にはセルフタイマーは内蔵されていないタイプで、セルフユニットはビューレンズの左側にセットされています。動きが悪いのでオーバーホールします。この機構のため、セルフは→ボタンを右にスライドさせると動き始めます。(レリーズボタンは押しません)

 

レリーズボタンの復帰が遅い個体がありますが、この個体もそうです。シャッターユニットを分離してリンケージを点検清掃します。

 

シンクロコンパーは3時~6時までスペースが空いています。セルフタイマーが入るところ。

 

シャッター羽根と絞り羽根に油が回っていますので洗浄から始めます。

 

 

ビューレンズを清掃した前板にシャッターユニットを取り付けます。

 

 

レリーズボタンの復帰が遅い原因はこのリングのグリス粘りでした。

 

 

チャージレバーを接続して本体にドッキングします。

 

 

過去にレンズを分解しようとして工具でクランプしたようです・・

 

 

前カバーのレンズ部内周に謎の白い粉・・なんだろう?

 

 

まぁ、清掃をして前カバーを取付けシボ革を貼ります。

 

 

ローライフレックスはムック本を見ても種類が多く完全には理解出来ません。海外と国内での呼称も違うので余計です。2.8Fになると設計が一新されますが、それ以前の流儀の完成形なのかなと思いました。

 

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56系は特殊なのだの巻

2023年01月25日 21時00分00秒 | ブログ

56系のグランドセイコー(GS)5646-7030ですけどね。秒針は動くのに長短針が動かない故障です。原因は筒カナの滑りですが、基礎キャリパーの5606Aは、普通の軸配置ではなく特殊な設計になっていて、筒カナが二番車にマサツカナとして組み込まれているので簡単に修正が出来ません。

とりあえず分解をして行きます。これが二番車です。

 

 

部品番号をお知らせしましたらオーナーさんの方でデッドストック新品を調達して頂きました。助かります。

 

では、オーバーホールになってしまいますので超音波洗浄をして組み立てて行きます。

 

香箱車の歯を清掃して組み込みます。

 

 

三番車の次に新品の二番車を組みます。

 

 

輪列が組み終わって一番受をセットします。

 

 

コハゼをセットして角穴車を取り付けます。

 

 

筒カナをセットしますが、普通の機械は側面を潰して摩擦を発生させていますが、56系ではその必要が無いので圧入ではありません。

 

テンプのダイヤショックに注油をします。

 

 

仮に長針を取付けて動きを見ます。12時位置にセットして動いていますね。

 

 

文字盤と針を付けます。経時劣化でスペーサーの樹脂が劣化してクラックが入っています。というか折れました。接着をして再使用します。

 

二番車(マサツカナ付き)を新品と交換したことで歩度調整が変化しています。微妙なものですね。何とか調整を取って数日様子を見ます。今回は奇跡的?にデッドストックの部品が入手出来ましたので良かったです。ジャンクからの調達ですと、その部品もすでに消耗しているわけですから。

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不注意が・・PEN-FVの巻

2023年01月23日 09時45分00秒 | ブログ

激しく角をへこませて痛々しいPEN-FV #11327XXです。現オーナーさんのミスかは知りませんが、「何とか修正をして欲しい」とのご要望です。しかし、一番修正が困難な部分で、美的観点からの修正では到底お受けできません。

 

じつは、裏蓋が開かない状態でした。部分のトップカバーが上からの衝撃で下がってしまい、裏ふたが収まるスリットが狭くなって裏蓋が挟まっているからです。

 

ヘコミ面を見るとコンクリートの上に落下したと分かります。ここまでへこんでいると多少叩いたぐらいではへこみは動きません。特にクロームボディーは真鍮母材の上にニッケル層とクローム層がありますので、ブラックモデルよりも硬く、より修正が困難なのです。今回は機能的な観点から修正をしましたが、これ以上力を掛けると真鍮母材にクラックが入りますので止めておきます。修正は非常にリスクの高い作業ですが、修正工賃を頂いたことはありませんのでクレームは無しです。

シャッターユニットはチャージギヤ軸に軽微な摩耗はありましたが、その他は特に問題はありませんでした。光学系の状態は非常に良くプリズムのコーティングも完全です。

 

落下の過去がある個体の場合はプリズムなどのレンズ類にカケなどの損傷があることが多いのですが、この個体は幸い無事でした。接眼プリズムのコーティングも良好でした。

 

この個体はレンズマウントの裏に調整シムが入っていました。PEN-FTの場合、前板ダイカストの成形が中央で沈む傾向があるので、多くの場合の部分に入っていることが多いです。

 

組立完了、修正をしたトップカバーを付けます。裏蓋の開閉などに支障が無いことを確認します。

 

付属して来たボディーキャップですけど、最近はこのようなものが流通しているのですかね? 3Dプリンターで出力されたものでしょうか。ボディーに嵌める時に合わせ位置が分からず困りましたが、よくよく見るとボッチが成形されていました。成形肌が荒いので赤●などの色入れがし難いですので改良されると良いですね。カメラとしては非常に調子が良く仕上がりました。不注意のへこみが惜しい個体です。

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分解機のローライB35の巻

2023年01月20日 21時00分00秒 | ブログ

分解を受けて変なことになっているローライB35です。まず、フィルムカウンターが動かない(B35の定番)のでトップカバーを分離してみると、送り機構の問題ではなく駒数盤の「8」部分が陥没しています。これでは動けません。

 

駒数盤を外してみると・・何をしたのでしょうね? 理解が出来ません。修正をしておきます。

 

このカメラはファインダーが汚れやすいですね。カバーも無く解放されているからでしょう。フレーム枠も汚れていますが蒸着を痛めないように清掃します。

 

巻き上げも何か変です。分解してみると・・まずに対角で2つ入っている「カップリング」の1つが入っていません。この部品は予備がありません。次にギヤのタイミングが狂っています。の合マークの時↗のボッチがの位置でないといけません。

スプロケット軸の断面が半円になっていて、チャージが完了した時、フィルム面にあたる光線を遮らないようになっています。画像ですと出っ張っています。

 

古いグリスのネバリで作動も緩慢なのでユニットを分離して清掃します。前回も分解されていて、右のスプロケットギヤとの噛み合わせを無視して組み立てたのでしょう。

 

左、レリーズボタン側と本体側の接合を合わせていない状態でトップカバーを締めたようで先端部が曲がっています。右は正常な状態。

 

巻き上げレバーのリターンスプリングも変に曲げられています。曲げが大きいため、直すと折れる可能性があるため、このまま使用します。

 

仮組で調子を見るとシャッターユニット自体の動きが悪い。点検すると、各部の潤滑が切れていて、フリクションが大きいためでした。

 

徹底的に部品は樹脂化されています。ストロボのコンタクトレバーもバネと一体成型です。の隙間によってシャッタースピードがコントロールされています。

 

メンテナンスをしたシャッターユニットにヘリコイドグリスを塗布して前玉を取り付けます。

 

欠品していたカップリングは簡易型を作って製作しました。右が製作品。形状をヤスリで修正して行きます。

 

組み込みました。問題なく機能しています。

 

 

B35はローライ35の廉価版ですが、設計を簡略化するために返ってローライ35より整備性が悪いと感じるところもありますね。この個体の場合は、元々シャッターユニットに不具合があって、それを直そう? として、返って部品を壊したり紛失したり、組立間違いをして状態を悪くしていたという印象でした。安い機種だから修理も簡単ということは無いのですね。

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