ニコン Fはご常連さんからのご依頼です。学生の頃にDPEをお願いしていたお店はご主人がプロカメラマンで、使用機はすべてニコンFだったので、私のFTbなんか小ばかにされていました。そんなことで、恐れ多いカメラという印象がずっとあって近寄らないカメラでした。性格的に貧乏性ですからね。
巻上げレバーを巻いても巻き上がらない。オーナーさんはARリングがおかしいとのことでした。
ペンタプリズムやスクリーンもかなり汚れています。
リターンミラーもね。
右カバーを開けます。カバーの色入れも落ちています。
取りあえず清掃をして色入れをやり直しておきました。カメラが直らなければ無駄な作業です。
点検していくと・・あら~、ARリングの取付け基部が曲がっていますよ。私はFの事情は良く知りませんが、ARリングが曲がることなんてあるのでしょうか? 分離して点検すると、二か所で変形していることが分かりました。相当強い力を受けたのでしょう。
真鍮なのでクラックが入らないように慎重に修正をしていきます。まだ右が高いですかね。
明日は、21日(木)より松屋銀座で開催の「世界の中古カメラ市」の出店準備のお手伝いで出掛けます。尚、開催中は体調もあって店番はしませんのでよろしくお願いします。
今日は銀座に午前11時集合で出店準備のお手伝いをして来ました。カメラを並べてプライスタックを付けるのにレアな舶来カメラはどこに有るのか探すのに一苦労しました。通称「かるた取り」というそうです。元々、国産カメラの出品は少ないのですが、回ってみると、それでもPEN系はFT(V)が20台ほどとコンパクト系が少量を確認しました。PENではありませんが、私の手がけたカメラもありました。買っていただけるとうれしいな・・
ペンタプリズムと接眼レンズの遮光モルトが加水分解をして接眼レンズを汚しています。
このプリズムは昭和48年1月12日製造ってこと? レンズを清掃をしてモルトを貼ってから組み立てます。
キヤノンの旧F-1に慣れているとニコンFのファインダーは古い設計に感じますね。なんかカブトガニみたい。この辺りはキヤノンのレールスライド方式の方ががっちりとセット出来ます。まぁ、プロの使い方としては、ボタンで上に引っ張れば素早く外せるので実用的なのでしょうか。
シャッターは作動するようにしました。シャッター幕の状態は良く、スローも問題ありませんので(その後悪化)、テンション調整と各部の注油をしておきます。
フォーカシングスクリーンは標準のAです。しかし、フレネル面をゴシゴシされたようで清掃しましたが薄いこすれが見えます。
最初の点検で、巻き戻しダイヤルの回転がスムーズでないなぁ、と思っていましたが、パーツリストを見るとダイヤルの下にリングが入っているはずですか入っていませんでした。緩み止めのイモネジも緩んだままでしたので、過去に分解されたのでしょう。手持ちのFから調達して(画像)組みましたが、少し厚い感じです。製造時期などによって厚みが変わっているのかな?
テストでシャッターを切っていると・・何となく金属的な音がします。原因を探っていくとリターンミラーの接着が剥がれています。ミラー受けのモルトが加水分解で無くなっていましたので、リターンミラーに衝撃が加わって(ミラー面に傷)剥離したものでしょう。このまま放置するとミラーが割れるので再接着をすることにします。まぁ、いろいろ問題のあるカメラです。
ミラー先端のミラー押さえを取り去るとミラーが落ちてきました。ミラーホルダーの中央部分はプレスで陥没しているため実際の接着面は四方枠部分のみなので接着面積は小さいです。ミラー奥に1か所と先端に2か所のミラー押さえがあるため、脱落はしないので問題ないということでしょう。しかし、ミラー押さえはミラーとは接触はしていないので、接着剥離は起こりますね。今回のように。ミラーホルダーに残った古い接着剤を完全に取り除いてからミラーを接着します。
どうせなら新品のミラーに交換した方が良かったかな? もう貼っちゃったし・・
流石にプロの道具として14年間も生産されたカメラだけのことはあって、圧倒的な存在感です。重量を測ってみると、ちょうど0.7kgでした。ARリング部の曲がりは、がたぱしゃさんの言では、三脚にレリーズを取り付けた状態で倒したのでは? とのことでした。確かにそれはあり得ますね。曲がっても直ったし丈夫なカメラには違いありません。重量を計ってみると700g。私にはちょっと重すぎる感じです。
スローガバナーの画像を忘れていましたので追加しておきます。
スローガバナーを洗浄注油で組み込みました。
ミラーボックスを取付けてシボ革を接着します。
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