今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

KARDON PH-629/UF を修理するの巻

2019年02月25日 20時43分42秒 | ブログ

WWⅡでは日本を含めて各国でライカコピーが作られたようですが、アメリカではカードンですね。実際には戦争には間に合わなかったので、アメリカ陸軍通信隊向けに製作されたカメラがPH-629/UFとのことです。

 

シャッター幕のリボンが切れて不動になっているようです。

 

 

リボンが切れてから長い時間が経過したようで、幕もヨレているので、本来は幕交換が良いのでしょうけど、ピンホールは無いので今回は切れたリボンを交換してみます。

 

切れたリボンを取り出して寸法を測ります。

 

 

上下のリボンが平行に引くように調整をしています。

 

 

裏側。光線漏れはありません。本体は板金物なんですね。

 

 

シャッターを切って作動を見ます。

 

 

今日26日はカメラ市の最終日でしたので撤収のお手伝いに行っていて、先ほど満員電車で戻りました。よって作業は進んでいません。で、問題はスローが効かない。

 

今まで見たスローガバナーの中で一番摩耗が進んでいるかも知れません。各ホゾ穴は拡大(ホゾが痩せる)していてガンギ車はヨレって回転するし、クラッチ車は空転するし、ピンセット先のリターンスプリングは張力が無くなっていて戻らない。時計の場合でしたらホゾ穴の拡大はポンス台で叩いて絞めるのですが、さてどうしたものか・・

スローガバナーはバルナックライカのものと同様というかコピーですかね。但し、加工精度はあまり良くはない印象です。中央の4つのコロはワンウェイクラッチで一方向の回転のみロックをするようになっています。このコロに油が回ってロックしない状態でした。超音波洗浄をして、ここは注油は厳禁です。これは、PEN-FTのセルフタイマー(改良型)と同じ構造というかライカをヒントにした可能性が高いですね。

正常に作動するようにしたスローガバナーを組み込みましたが、スローレバーとカムの高さが合わず外れてコントロールできない状態でした。

 

 付属のレンズはKodak Ekter 47mm f2 ですが、少し汚れと特徴的なギヤ駆動のヘリコイドが重いです。

 

 メンテナンスをしておきます。

 

 

低温下での手袋使用を前提とした巻き戻しノブの大型化や低速側のシャッターダイヤルに突起などが目につき、バルナックライカとは違った雰囲気です。作りとしてはライカには及ばないかなぁという印象でした。

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CITIZEN DAISYのオーバーホールの巻

2019年02月24日 20時03分17秒 | ブログ

シチズン・デージー 17石という女持ち(婦人用)の腕時計が来ています。私、何が嫌いって婦人用の分解組立が嫌いです。部品点数は多くはないのですが、とにかく小さいでしょ。調べてみるとデージーの発売は1963年(東京オリンピックの年)頃だそうです。Cal.1700 で21600振り(6振動)。調子が悪いとのことです。

婦人用の機械は、大体このアーモンド形。四角いデザインのケースにも対応しやすいようにでしょうね。ですから、見かけよりももっと機械が小さいのです。キャリバー№は入っていませんね。「17J」は石の数だと思います。

 

過去に何度かO/Hを受けているようですが、長短針の位置が合っていませんね。何度も抜き差しで圧入が緩んでいるのかも知れません。

 

写っていませんがの部分に大量の油が付着しています。香箱から流れ出た可能性があります。

 

その香箱ですが、中心部が盛り上がっています。シチズンの場合、丸穴車だけでなく角穴車も左ネジを使っている場合が多く、このモデルもそうでした。それを知らずにネジを緩めようと締め込んでいるうちに変形した? さぁ、それは分かりません。極力修正をしておきます。

すべて超音波洗浄をして組み立てて行きます。

 

 

組立終了。天真とアンクルに注油をしておきます。

 

 

組み上がったままで未調整のデータ。遅れるので緩急針で無理に進み方向にしていたのでしょうか。

 

昭和51年10月発行のメーカー資料には記載がありませんでした。

 

 

文字盤と針を付けます。

 

 

紳士用の非防水モデルと同じデザインですから、対象物がないと大きく見えますね。風防ガラスは途中で交換されているのか樹脂の劣化はないので傷の研磨をしてあります。古い婦人用の腕時計は需要が無く、評価価格も無いので世の中から消えて行きますが、残してほしいと思いますね。

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NIKON Fは立派なカメラの巻

2019年02月19日 19時24分15秒 | ブログ

ニコン Fはご常連さんからのご依頼です。学生の頃にDPEをお願いしていたお店はご主人がプロカメラマンで、使用機はすべてニコンFだったので、私のFTbなんか小ばかにされていました。そんなことで、恐れ多いカメラという印象がずっとあって近寄らないカメラでした。性格的に貧乏性ですからね。

巻上げレバーを巻いても巻き上がらない。オーナーさんはARリングがおかしいとのことでした。

 

ペンタプリズムやスクリーンもかなり汚れています。

 

 

リターンミラーもね。

 

 

右カバーを開けます。カバーの色入れも落ちています。

 

 

取りあえず清掃をして色入れをやり直しておきました。カメラが直らなければ無駄な作業です。

 

点検していくと・・あら~、ARリングの取付け基部が曲がっていますよ。私はFの事情は良く知りませんが、ARリングが曲がることなんてあるのでしょうか? 分離して点検すると、二か所で変形していることが分かりました。相当強い力を受けたのでしょう。


真鍮なのでクラックが入らないように慎重に修正をしていきます。まだ右が高いですかね。

明日は、21日(木)より松屋銀座で開催の「世界の中古カメラ市」の出店準備のお手伝いで出掛けます。尚、開催中は体調もあって店番はしませんのでよろしくお願いします。

 

 今日は銀座に午前11時集合で出店準備のお手伝いをして来ました。カメラを並べてプライスタックを付けるのにレアな舶来カメラはどこに有るのか探すのに一苦労しました。通称「かるた取り」というそうです。元々、国産カメラの出品は少ないのですが、回ってみると、それでもPEN系はFT(V)が20台ほどとコンパクト系が少量を確認しました。PENではありませんが、私の手がけたカメラもありました。買っていただけるとうれしいな・・

ペンタプリズムと接眼レンズの遮光モルトが加水分解をして接眼レンズを汚しています。

 

このプリズムは昭和48年1月12日製造ってこと? レンズを清掃をしてモルトを貼ってから組み立てます。

 

キヤノンの旧F-1に慣れているとニコンFのファインダーは古い設計に感じますね。なんかカブトガニみたい。この辺りはキヤノンのレールスライド方式の方ががっちりとセット出来ます。まぁ、プロの使い方としては、ボタンで上に引っ張れば素早く外せるので実用的なのでしょうか。

シャッターは作動するようにしました。シャッター幕の状態は良く、スローも問題ありませんので(その後悪化)、テンション調整と各部の注油をしておきます。

 

 

フォーカシングスクリーンは標準のAです。しかし、フレネル面をゴシゴシされたようで清掃しましたが薄いこすれが見えます。

 

 

最初の点検で、巻き戻しダイヤルの回転がスムーズでないなぁ、と思っていましたが、パーツリストを見るとダイヤルの下にリングが入っているはずですか入っていませんでした。緩み止めのイモネジも緩んだままでしたので、過去に分解されたのでしょう。手持ちのFから調達して(画像)組みましたが、少し厚い感じです。製造時期などによって厚みが変わっているのかな?

テストでシャッターを切っていると・・何となく金属的な音がします。原因を探っていくとリターンミラーの接着が剥がれています。ミラー受けのモルトが加水分解で無くなっていましたので、リターンミラーに衝撃が加わって(ミラー面に傷)剥離したものでしょう。このまま放置するとミラーが割れるので再接着をすることにします。まぁ、いろいろ問題のあるカメラです。

 ミラー先端のミラー押さえを取り去るとミラーが落ちてきました。ミラーホルダーの中央部分はプレスで陥没しているため実際の接着面は四方枠部分のみなので接着面積は小さいです。ミラー奥に1か所と先端に2か所のミラー押さえがあるため、脱落はしないので問題ないということでしょう。しかし、ミラー押さえはミラーとは接触はしていないので、接着剥離は起こりますね。今回のように。ミラーホルダーに残った古い接着剤を完全に取り除いてからミラーを接着します。

 

どうせなら新品のミラーに交換した方が良かったかな? もう貼っちゃったし・・

 

流石にプロの道具として14年間も生産されたカメラだけのことはあって、圧倒的な存在感です。重量を測ってみると、ちょうど0.7kgでした。ARリング部の曲がりは、がたぱしゃさんの言では、三脚にレリーズを取り付けた状態で倒したのでは? とのことでした。確かにそれはあり得ますね。曲がっても直ったし丈夫なカメラには違いありません。重量を計ってみると700g。私にはちょっと重すぎる感じです。

スローガバナーの画像を忘れていましたので追加しておきます。

 

 

 スローガバナーを洗浄注油で組み込みました。

 

 

 ミラーボックスを取付けてシボ革を接着します。

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またまたPEN-FT(B)をやるよの巻

2019年02月15日 19時25分50秒 | ブログ

今日の関東地方は寒かったです。午前中は車で外回りの仕事で午後から自転車で近くの医院のはしご。これで風邪を引いたらシャレになりませんね。で、続いてPEN-FTブラックモデルをやります。山形のご常連さんが念願のブラックモデルを入手されました。しかし、一つ前にFT(B)をやったばかりなので無意識に比較してしまいますね。ちょっと残念なコンディションかも知れません。でも、なるべくリカバリーします。ボトムプレートには打痕があります。これは修正します。それと酸っぱい臭いがします。これは電池の液漏れを起こしているのです。

あら~、本当は有害な漏れ液には触りたくないのですが、そんなことも言ってられません。

 

セルフタイマーボタンも固着していて分離出来ません。製造ロットによって肩の部分のRを大きく取ってあるものがあって、レンチが滑って回せないのです。裏技で分離しますけど・・

 

カメラ虫の抜け殻がありますね。

 

 

モルトを剥離しましたら劣化した塗装は無くなりました。この個体はかなり使い込まれてからの放置期間が長かったとみえて、塗装が剥離していた丁番と裏蓋が激しく錆びています。丁番はタッチアップと思いましたが、塗る面積の方が多いので、全体のリペイントの方が早いです。

 

フィルムローラーにも腐食が出ています。相当長期に湿気の多いところに放置されていたのでしょうね。

 

丁番はリペイント、裏蓋はタッチアップです。

 

 

セットされていた絶縁座(中央上)は電池液に侵されて溶けてしまい、絶縁負荷を掛けると導通をしてしまうので下の良品と交換します。リード線は新製しておきます。

 

前回のFTと同様ブレーキナットが緩んでいます。この個体#2828XXのナットは鉄製で、前回の個体25万台は真鍮製でしたので、メーカーとしては緩みに対しての対策を試行錯誤していたように見えます。結果的にどちらの材質でも緩んでしまうということです。

かなり乱暴に扱われた個体ですが、圧板やチャージギヤの摩耗からはあまりシャッターは切られていないようです。巻上げもスムーズでかなり良い機械になりました。しかし、保管環境の悪さから露出計の感度はかなり低下していました。電子部品に湿気は大敵です。ハーフミラーの腐食も普通の28万台より悪いです。交換のため分離しようとすると外れません。ネジの緩み止めが内部に浸透しています。

とにかくこの個体は裏蓋側を無造作に置いていたようで、裏蓋の塗装や接眼枠に傷が多いです。そのまま使おうかと思いましたが軽く研磨しておきます。

 

シャッターダイヤルの色入れも色が退色しています。

 

 

シャッターダイヤルの彫刻は非常に浅く、組立後のやり直しは非常に厄介です。・ASA B を入れ直しています。

 

フランジバックの調整用ワッシャーが入っている個体がありますが、前板の中央付近が引ける傾向にあって、マウントの左側に集中しています。軽微な調整の場合は上側(11時)一か所ですが、この個体0.04mmのワッシャーが上に1枚、下に2枚入っています。ワッシャーの厚みも1種類ではありませんので、入っていた場所を正確に記録しておく必要があります。

白の色入れ塗料も完全に劣化をして艶消しや下地が透けて見えます。入れ直しておきます。

 

まぁ、こんな感じ。錆び錆びよりマシでしょ。

 

 

機械はそれほど摩耗していないのに巻上げ部の塗装剥離が進んでいるのがミステリー。フィルムレールは磨いてあります。

 

傷のダメージが裏側に集中していて、表側はそれほどでもありません。まぁ、道具ですから良い写真が撮れればカメラに傷が付こうが問題はないとも言えますが、やはり物を乱暴に扱う人と愛情を持って丁寧に扱う人とでは、おのずとコンデイションが変わって来ますね。腕時計でも同じことが言えて、「どうしてここまで傷を付けられるか」と思う時計と出会うこともあります。愛情を持って接しましょうよ。

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25万台のPEN-FT(B)の巻

2019年02月11日 16時19分39秒 | ブログ

そろそろカメラをやらないと叱られそうなので・・PEN-FTブラックモデルですね。25万台なので悪くはありませんね。巻上げもゴリツキは少ないので未分解機にしては珍しいと思ったのですよ。

 

アクセサリーシューが長期に付いていましたね。実際にはもっと黄ばんでいます。色入れし直さなくて良いかな?

 

未分解機と思いましたが、そうではありませんね。例の駒数板です。曲がっているでしょ。だから最初に外して最後に取り付けると言ってるでしょ。

 

アクセサリーシューが長期に取り付いていたので応力でアイビース枠が割れてしまいましたね。

 

光学系は良くありません。ハーフミラーも交換です。

 

 

では、ダイカスト本体を洗浄して組み立てて行きます。

 

 

点検するとブレーキナットが緩んでいます。過去の修理もここが原因のようです。しかし、一度緩んだネジはどんなに強く締めても緩んでしまいます。このまま放置すると、突然巻き上げが固着します。

 

これがブレーキのハンマーリング。PEN-FはゴムのOリングでブレーキ機能を果たしていましたが、PEN-FTではメカニカルなリングに回転方向の自由度を与えて、慣性のハンマー効果により衝突のショックを軽減する方式となっています。

 

その他、シャッターバネの掛かり位置が標準よりも一段弱い調整でしたが、テンションは出ているためそのままとします。前板関係の清掃も済んでいます。

 

ファインダーのハウジング。レンズに軽微なカビ痕が残ります。古いモルトを清掃して貼り直します。

 

結局、あまり保存状態は良くなかったのでしょうね。ハーフミラーは腐食が進んでいましたのでアイビース枠と共に交換です。

 

 昭和54年11月に電池交換をしたようですね。

 

 

トップカバーの洗浄のついでにPEN-FTの色入れをやり直しておきました。きれいになりましたね。

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