熱帯夜かと思ったら、朝方は涼しくて夏風邪を引いてしまいました。調子悪いです。近くの昭和記念公園の花火大会も雷雨で中止になりまして、まったく天気が安定しません。では、ボチボチやりましょう。衝動買いしたPEN-FT(B) #2873XXと国鉄にお勤めだったお父様の鉄道時計19セイコーが来ています。不動の原因を調べると、過去に時計の修理屋さんに修理以来をしたというテンプがすごいことになっています。元々は天真が磨耗しているだけだったと推測しますが、天真の入れ替えで、天輪はヤスリで削ってヨレヨレ状態。天真も斜めに入っていて、接着剤で留まっているようです。プロの時計師さんの修理とは、とても思えませんね。PEN-FT(B)の方は、衝動買いとのことですが、チェックすると、巻上げが2回巻上げになることと、レバーがスムーズに復帰しませんね。巻上げのゴリツキ、ファインダー暗いなどが気になりますが、シャッターと露出計はまぁまぁと判断します。
ただし、裏側を見ると、電池蓋が恐らくキヤノンのFT系のものが付いていますね。へぇ、付くんだぁ・・
19セイコーはテンプASSYが完全にダメですので、部品調達までFTを先にやります。トップカバーを開ける時、セルフボタンが外れない。ボタンの面取りが大きいタイプの場合は、専用のレンチでも、掛かりが僅かとなり外れないことがあります。今回は、裏業を駆使して開けました。トップカバーを開けてみると、意外に、この個体は未分解機ですね。セルフボタンが緩まないので開けられなかったということかも知れません。
巻上げレバーです。途中で戻りませんね。地板とレバーが接触しています。原因が分かる人?
アルミ黒アルマイトのレバーと地板が接触していますね。原因は・・
巻上げレバーの中心にねじ込まれているベアリング受けが僅かに浮いているのが分かりますか? 漠然と見ていたのでは分かりませんよ。
レバーユニットを全て分解したところ。本来は、ベアリング受けは硬く締め込まれて組立されていますので(単独のパーツ設定はありません)本来は緩まないのですが、中には緩んでしまう個体もあるのですね。因みに、ベアリングは樹脂のホルダーに上下6個づつのスチールボールで保持しています。
では、いつものように組立てて行きます。洗浄、注油をしたスプール軸ASSY。上部のカムは反時計周りには回転し、逆回転は板バネによりロックされて回転しない構造。
超音波洗浄をしたシャッターユニット。2回巻上げの傾向がありますので、ギヤの磨耗が懸念されましたが、意外に磨耗は進んではいませんね。
部分的に画像が増えましたので、途中省略して本体と、前板関係は完成しています。
すみません。夏風邪を甘くみました。今日はやっと峠を越えたようです。みなさんも寝苦しい夜が続きますので、寝冷えをしないようにご注意くださいね。で、FTは電池蓋を交換して完成となりますが、塗装は後ほど行いたいと思います。
とりあえず完成としておきます。最初の印象は、塗膜が光り気味で、2回巻上げ、巻上げレバー戻らず、ファインダー暗い、電池蓋規格外、等々あまり良いものではありませんでしたので、「衝動買いしちゃって・・」と思いましたが、基本は悪い個体ではありませんでした。巻上げスムーズ、シャッター快調、ファインダー明るく、露出計元気と素晴らしい個体に復活しています。付属の38mmも清掃をしてあります。
で、問題の鉄道時計19セイコーですが、過去にテンプを修復不能の状態に壊されていて再使用が出来ないため、オーナーさんに部品取り機を調達して頂きましたが・・同じ機種ですが、製造時期の違いにより、テンプの仕様が異なっており、使用が出来ない状況となりました。調達のテンプは、ピンセットのものより古い、天輪が切れているタイプです。鋼のひげゼンマイの熱歪みによる精度への影響を防止するための加工とのことです。
仕方がありませんので、部品取りとして調達をした個体を復活させることは出来ないかトライすることにします。しかし、この個体は、テンプもこの個体のものではないようで、アンクル、ガンギ車のと整合性も合いません。部品を寄せ集めて動かそうとしたが果せず手放したというところでしょう。
左は昭和28年製のご依頼機。テンプが良品であれば、なんの問題も無い機械です。右側がジャンクを組立てた機械。当初は、まったく作動はしない状態でした。アンクルの爪石とガンギの関係は全く不適、アンクルのケン先が短く、振り座に届かないので、元々のセット部品ではないのが分かります。(アンクルは依頼機を使用)テンプは天真の磨耗、ひげ玉の位置不良、ひげゼンマイの変形など修正すべき個所が沢山ありました。しばらく作動をすると、ひげゼンマイが天輪のアームに接触をして抵抗でテンプの振りが落ちてきます。時間を掛けて修正が必要です。
外装などは昭和28年製のものを使います。文字盤の材質も、製造時期によって違いがあるようです。部品取り機は一般的な印刷でしたが、この個体は瀬戸びきです。前回分解した方の指紋がベタベタと付いていましたが、焼物なのできれいにクリーニングが出来ました。白地もヤケやクラックも無く、大変良いものです。但し、落下などの衝撃では、割れる危険性があります。
ブルーの焼き針もきれいです。ケースのリュウズが収納する部分には、真鍮の腐食による緑青がありますので、清掃しておきます。
永い勤務で使用されたために裏蓋もへこみがありました。軽く修正をしてあります。
左が正規の機械。適合するテンプの入手が出来るまで、ジャンク機を代替で入れてあります。傷の多いプラ風防を研磨して一度完成としておきます。19(ジュウク)セイコーは昭和4年に鉄道省に正式採用されたとのことですので、ルーツは古いですね。戦時中は、この機械を基にした航空時計なども製造されたようです。鉄道時計ですから懐中時計マニアだけでなく、鉄道ファン(鉄ちゃん)にもコレクターが多く、状態の良いものの相場は高いようです。