今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

お客様から譲られたPEN-FT

2013年03月28日 16時18分40秒 | インポート

Dscf0441011_2 仕事のお客様から譲られたというPEN-FT #2643XXですが、巻上げ側前面に大きな力を受けたと見えて、駒数ガラス横が大きく凸になって、その反動で、前面縁が陥没しています。この部分は、デザイン上の問題で、前面に取り付けビスを打てないため、この部分が一番強度が弱いのです。凸部は、駒数板の留めビスが接触をしているためで、すでに材料が伸びてしまっていますので、修正は非常に困難です。

Dscf044201 内側から見ます。駒数ガラスの右端部分がビスの頭によって押されていますね。このビスは初期の設計では、薄ナットでしたが、設計変更により普通のスリ割りビスとなった関係で、トップカバーとのクリアランスが殆ど無い状態になっています。それによって、落下でなくとも、この部分を強く抑える力が掛かり続けると、トップカバーが盛り上がってしまいます。多くの個体に見られる症状です。修正には、駒数ガラスを付けたままでは非常に困難で、不用意に圧力を掛けると、駒数ガラスにクラックが入ってしまいます。かといって、駒数ガラスを分離するのも破壊のリスクがあって、厄介な状態です。

Dscf044102 全体のオーバーホールを実施しますが、シャッターユニットなどは特に問題ありません。この個体は、巻上げが非常に滑らかです。

Dscf044202 光学系はハーフミラーの腐食ありで交換しています。接眼プリズムは、アイピース枠用のモルトが悪さをしてコーティングは曇って手遅れです。極力、拭き上げをしておきます。

Dscf044303 メカ部は完成。特に問題はありません。

Dscf044301 トップカバーは極力修正をしておきますが、吊環部の変形が目立ちます。上からの強い力を受けて変形したことが分かります。駒数ガラス横なども修正ずみ。

Dscf044402 まぁ、それほど気にならない程度にはなりましたが、完全には元より無理なお話です。FTのウィークポイントを知って、落とさないようにお使いください。調子は非常に良い個体だと思います。付属の38mmも清掃して完成です。


セイコーマチック・SilverWave をレストアするの巻

2013年03月24日 14時09分50秒 | インポート

Dscf043401 シルバーウエーブはペットネームで、その時代の機械を使ったモデルがありますが、この個体は1962年発売(2112002)の62系「603(6201B)」を搭載した可変式リング付、強力防水型モデルです。しかし、この個体では、可変式リングが回転しない。針が緩くてインデックスと衝突して止まるなどの不具合があります。特徴のある圧着式の裏蓋を外して、機械を取り出しています。ベゼルを外すと、多くの汚れが詰まっていますね。

Dscf043501 可変式リングの構造は、リュウズの巻き芯に付いているギヤで、可変リングの裏側にあるラック(歯車)を回すというからくり。特に逆転防止機構などはないので、どちらにも回転します。しかし、この個体のは合いは、リングと白いナイロン歯車の磨耗と接着の剥離が回転しない原因でした。

Dscf043701 何度も分解を繰り返して針の孔が拡大して針が置いていかれる症状があります。過去の組立てで、きつく針を固定しようと、奥に入れ過ぎて、文字板と接触して同心円状のキズをつけています。貴重な文字板なのにもったいないことを・・・

Dscf043801 機械自体には特に問題は無いようです。超音波洗浄をして組立てて行きます。右上の「受け」は後期型の一体ものです。

Dscf043901 針孔を小さく矯正をして組んでありますので、置いていかれることはなくなりました。回転リングはギヤリングと接着をしましたが、ギヤが空回りをして回転しませんね。

Dscf044302 回転リングが回らない原因は、汎用の風防が使われていたためです。純正の風防は、内周が段付きにモールドされており、回転リングを抑える役目をしていたのでした。で、運良く純正の風防が入手出来ましたのでセットしてみます。回転リングはスリップ無しで作動しています。

Dscf044002 じつは、新しい風防で組んだ画像を撮り忘れましたので、古い風防の時の画像です。1962年発売の、セイコーでは初めて回転式リングを装備したモデルです。ダイナミックなデザインの中に、セイコーのセンスの良さが光る、良い雰囲気のモデルですね。機械は中級品のため、手巻きとハック機能が無いのは残念なところです。


シチズン・シャインという視覚障害者用腕時計

2013年03月21日 20時07分00秒 | インポート

Dscf041502 裏ではPEN-S 3.5のリペイント準備を進めていますけど、時計を先にやります。この時計は、シチズンが60年代に開発した視覚障害者用の腕時計です。2時のボタンを押すと、風防が開いて、直接指で針を触って時間を読み取るしくみです。ちよっと、やってみましたが、私の指の感覚では読み取るのは至難でしたね。シャインは1963年から発売されて、1967年から機械はシチズンの名機ホーマーベースとなっているようで、この個体もその仕様です。個体としては、デッドストックではないかと思われるコンディションですが、当時、盲学校に大量に寄贈されたようですから、使用されなかった個体が出て来ているのかも知れません。問題は、文字板のクリアー塗装が軟化しており、指で触ると指紋が残ってしまい、アルコールではすぐに溶けてしまうことです。オリジナルが変質したものか、後年に塗装をされたものかは不明ですが、現状では、本来の使用方法では使えないという気がしますね。

Dscf041602 ちょっと誇張をした画像ですが、ボテッとしたクリアー塗料塗装ブツが大量にあって、とてもメーカー製とは思えませんが、事の真偽は分かりません。文字板が軟化している状況では、針を抜く時に文字板に接触することは出来ません。

Dscf041802 まぁ、何とか分解をしましたよ。すべて超音波洗浄をしてあります。ホーマーベースのキャリバー#3000は、普及機クラスの機械ですが、鉄道時計に採用された実績があるほど優秀な機械です。機械の構造は、シチズンとしては非常にオーソドックスな設計で、安定感を感じます。

Dscf041902 非常に組立て易い機械で、すでに組立ては終了。テンプの片振りが大きいので、ひげゼンマイを直接接触して調整をして行きます。こんなところでしょうかね。なるほど素性の良い機械だと思います。

Dscf042002 指で触れる針はステンレス製で、変形しないような形状になっています。秒針は強度的に無理ですし、必要も無いのでありません。

Dscf0421 たぶんこの個体はデッドストック未使用品と思われますので、伸縮性の金属ベルトもオリジナルのようです。視覚障害者の利便性を考慮したものでしょう。しかし、一般男性の標準より細い私の腕には緩いです。同様の視覚障害者用腕時計は、現在でもシチズンやセイコーからも発売されているようですね。現代では、音声で時刻を伝える形式のモデルもあるようですが、静粛な場所では、やはりこの形の方が良いのでしょう。

Dscf042201 時計を続けます。先日も取り上げましたキングセイコー・クロノメータですね。しかし、ワンピースケースで、裏にメダリオンが付いている個体です。日差40秒の進みと風防ガラスの接着がきれいでないということでしたが、風防はそれほどひどい状態でもないですね。それより気になったのは、クロノメータは普通のキングセイコーと針の仕様が異なっていて、黒の長針と細い秒針なのですが、この個体の秒針は、ちょっと太めですね。短針のメッキは劣化気味なのに、秒針はピカピカです。たぶん、損傷により、代替品と交換されたのでしょう。

Dscf042302 40秒の進みとお聞きしていましたが、ゼンマイ一杯で安定したところを計測すると、約+20秒ぐらいですね。片振りが出ています。

Dscf042003 この時計は、プロの時計屋さんが仕上げたものだそうです。文字板は新品と交換されているようで、ということは、交換が必要なぐらい、水気が浸入した個体であったということです。同時に風防ガラスも交換されたとのことですが、接着剤のはみ出しや白く見える部分がありますね。

Dscf042101 リングと風防ガラスを分離してみました。このガラスは、純正ではないですね。社外汎用の平面ガラスです。

Dscf042202 白く見えた部分を観察してみると・・・これはガラスが欠けているんですね。新品を使ったのであれば、このようなことはないので、別の個体から接着を剥がして貼り直したのではないでしょうか? その時の剥離の仕方によってガラスが傷ついた可能性があります。

Dscf043302 クロノメータに戻ります。社外の風防ガラスが入手できました。リングに接着をしますが、元々、文字板の1/3に水の浸入による劣化がありましたが、それに伴ってリングの内周面の磨き部分の腐食と前回、ガラスを貼り替えるときに乱暴に扱ったためにキズがあります。接着面も古い接着剤が残ったままで再接着されていましたので、表面からの体裁は非常によろしくない状態でした。よって、研磨剤を付けて研磨をしておきます。時計屋さんの作業だそうですけど、意外に雑ですね。

Dscf043602 研磨をしたリングに新品の風防ガラスを接着してあります。ケースにも多くのキズや打痕がありましたので、軽く研磨をしてあります。

Dscf043802 しかし、問題は機械のテンプにありました。過去にいじられて、天輪の変形とひげゼンマイの変形があります。(画像はひげゼンマイは修正後)結局、このテンプでは精度が出ないため、良品と交換することにしました。

Dscf043701 キングセイコーのワンピースケースには、風防を圧入した後でも、歩度調整が出来るようになっています。ピンセットの延長ビスを入れておきます。

Dscf04390 風防ガラスをベゼルで圧入して完成です。ちょうど、同じオーナーさんから、セイコーマーベルが届きました。「日本電信電話公社総裁1957」と彫刻がある記念品です。耐震装置も付いた、実用にはちょうど良い個体だと思いますね。ケースのサイズも、大型化する以前のボーイズサイズで、マーベルらしい好ましいものです。

Dscf043702 文字板は人気の「S」付きですが、細かなそばかすが出ているのは惜しいところです。デッドストック新品はありますが、この程度は良い方ですので再使用としています。針は、人気は太めのサーベル型ですが、この個体のものは、細い大人しいタイプですね。文字板のインデックスも対応した細いデザインです。針のめっきがくすんでいますので、軽く磨いておきます。

Dscf043803 じつは、オークションの画像ではステンレス側に見えたそうで、到着してみたら金めっき側だったと言うお話し。この当時は、殆どが金めっきケースでしたので、注意が必要です。金めっきケースは、使用によりめっきが剥離して、真鍮が腐食して行きますので、現存で程度の良いものは稀です。裏蓋の合わせ部分には、緑青が噴いていますので、削り落としてから、超音波洗浄をします。

Dscf043902 研磨洗浄をした金めっきケース。ベルトを付けるラグ部分の痛みが激しいですね。左は、おなじサイズのステンレスケースの新品です。

Dscf044101 先に完成していたキングセイコー・クロノメータとツーショット。マーベルの時代は、金時計に茶のベルトが定番でよく似合うと思います。金仕様のリューズは、ゼンマイの手巻きで酷使されていますから、ローレットが摩滅して巻きにくくなっていますね。


ジャンクPEN-S 2.8を復活実戦配備する

2013年03月17日 11時38分42秒 | インポート

Dscf042401 時計は部品の入荷待ちですので、PENをやります。

先日PEN-S 2.8をO/Hされた方が所有していたジャンクの個体を、撮影旅行の予備機として復活させることになりました。ホコリ手油まみれでチャージも出来ないジャンク機でした。すでに全て分解洗浄をしてあります。

Dscf042303 油まみれを洗浄してみれば、それほど程度は悪くないですね。しかし、この個体には、ピンセット先のM1.8ビスと↓のところにもビスがあります。このビスは何の役もしていないのです。めくらビスということですね。確かに、ダイカストの形状は何かの意味があったようですが、他の個体は、このビス孔加工もされていません。このように、ネジ加工をされてビスを入れてあるケースは見たことがありません。

Dscf042402 先日の個体と一緒で、駒数ガラスは一度剥離をしたものを、今度は瞬間接着剤で接着されていたようです。古い接着剤をそのままにして再接着をするため、駒数ガラスがトップカバーより下がってしまいます。これは、新品と交換します。その他、吊環部のへこみです。どうしても、こちら側をへこませている個体が多いのですが、巻き戻しダイヤルの落とし込みがあるため、修正は困難です。

Dscf042203 ファインダーの汚れが激しく、曇って見えますね。保護ガラスと対物レンズ2枚を分離して、拭き上げ清掃をします。画像は、清掃したレンズを接着するところ。

Dscf042304 1961-9月製のシャッターは、シャッター羽根に軽微な錆が発生していましたが、消耗は少ないシャッターです。「巻上げ出来ず」を調整しながら本体に搭載しています。磨き出した距離リングは意外にきれいですね。

Dscf042403 ホコリまみれの個体は、裏蓋の開閉キーに細かな砂が混入して「ガリガリ」になっている場合が多いです。画像が構成部品。古いグリスを洗浄してから、新しいグリスを塗布して組立てて行きます。

Dscf042501 駒数ガラスは新品に交換しましたが、レンズはカビも無く良好で、清掃で良い状態になりました。とても、最初のみすぼらしいジャンクとは思えない、きれいな個体に仕上りました。本来、ジャンクなどは存在しないのです。これで現役復帰です。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


リサイクル屋さんのPEN-S 2.8

2013年03月07日 11時25分13秒 | インポート

Dscf041101 その前にね。関東地方は、ここ数日急に暖かくなって来ましたね。自転車には良い季節になりました。そこで、入手した自転車の修理を急ぎます。GIANTへ注文しておいたリムが入手できたので、元のリムと交換をします。このリム、かなり変形をしていて、上が新品で下が元々のものですが、ぴったりと合わせられません。アルミリムは横方向の力には弱いのですけど、どうしたのでしょうね? で、バルプ孔を揃えて、スポークを1本ずつ移動させる「お引越し」をしています。

Dscf041201 お引越しが済んだら、リム組みと振れ取りをします。荒組をしたホイールを振れ取り台に載せると、新品であっても、かなりの歪があります。ニップルを締めて少しずつ振れを追い込んで行きます。この段階では、1mm以内になっています。しかし、ニップルが古くて、なめてしまうものがあって、新品を用意しておけばよかったです。

Dscf041301 で、お仕事に戻ります。リサイクル屋さんで入手されたというPEN-S 2.8 #2236XXと、比較的初期の個体で、巻き戻し軸などは改良前のものです。本体の塗装や梨地メッキなどは劣化がありますが、全体としては悪くは無いかなぁという状態。しかし、シャッターは低速不調やレンズにカビ、ファインダーの曇りが激しいです。これからPEN-Sの作業が続く予定なのですが、最近は、安く手に入れたので修理にお金を掛けたくない。という方もいらっしゃいます。お気持ちも分かりますが、修理の工数と入手価格は関係ないのです。古い機械ですから、責任の持てる修理にはどうしても工数が必要なのです。安価な部分修理もお受けしないわけではありませんが、しっかりと責任を持ちたいので、あまりお勧めは出来ません。

Dscf041402  まぁ、表面上で見える不具合の出ている個体は、見えない部分にも不具合が隠れている可能性が高いということが経験的に多いと感じます。オーナーさんからのご指摘は無かったのですが、この駒数ガラスの位置が変だと気がついた方は熟知された方。トップカバー面より下がっていますね。

Dscf041501 裏から見てみると・・すごい接着ですね。元々は、エポキシ接着剤を使用して接着されていたものが、初期の個体ぐらいに時間が経過すると、自然に剥離をするものが多いのです。それを、適当にゴム系接着剤で接着したのでしょう。工数を掛けられない修理です。これですと、駒数針と接触する危険性が高いので、一度全て分離をして接着のし直しです。今回は、オーナーさんから新品交換のご依頼を頂いています。

Dscf041701 ダイカスト本体側はすべて分解洗浄をして組み立てています。スプールはグレー色が付いている頃の製品です。O/Hを終えたシャッターユニットを取り付けます。シャッター羽根の一枚に錆が発生していました。

Dscf041801 シャッターリングや清掃をしたレンズをヘリコイドグリスを塗布して組み込みます。

Dscf041901 駒数ガラスは新品を接着しています。↑の方の接着と見比べてください。丁寧な作業には工数が必要です。

Dscf042301 と言うことで、組立て完成ですね。フィルムレールの腐食も無くきれいです。スプロケットはアルミ製黒アルマイト処理、スプールはグレーです。

Dscf042001 PEN-S 2.8としては1962-1月製と前期の古い個体になりますが、大きな当たりやシャッターリングの腐食もないのですが、いかんせんダイカスト本体の塗装が劣化しているのが惜しいところでしょうね。ファインダーのリンクル塗装は完全に残っているので、本体の塗装をやり直せば、きれいな個体となりますが、まっ、これで良いでしょう。ご希望のレンズキャップを取り付けておきます。

Img_2228 関東地方は今日も気温が上がって良いお天気でした。そこで、クロスバイクの最後の仕上げでチェーンを交換しました。予算の関係でシマノではなくて、この車体の純正採用にもなっている、KMC のZ7をチョイス。知らずに購入したのですが、このチェーンは、一度サイズを合わせておけば、コマは手で取り外しが出来るというものでした。チェーンの洗浄などには便利ですね。最後に防犯登録シールを貼って完成。

Img_2233

ついでにルマン号も磨いておきます。タイヤもそろそろ交換しないとなぁ・・・