今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

34万台なのにPEN-FTの巻

2023年06月26日 20時00分00秒 | ブログ

公開予定のない中古店様の急ぎの作業などをしておりました。で、このPEN-FTブラックは#3436XXと良い頃の個体のはずが、ハーフミラーやファインダーの状態がかなり良くありません。また、過去にリターンミラーが剥離して、オーナーさんが瞬間接着剤で貼ってあるという個体。再剥離はミラーの破損の危険があるため、今回は見なかったことにします。ただし、ファインダーのピント調整は必要です。どうか、オーバーホール中に剥がれないように・・

30万台では珍しい駒数ガラスのの色滲み。保管が良くなかった? 駒数盤の復帰も緩慢です。

 

内部は未分解でした。

 

 

画像ではそれほどでもに見えますがハーフミラーも30万台としては悪いです。

 

 

PEN-FTは定番作業なので細かなところは書きませんが生産の最後期になってチャージギヤがリングナット留めになりました。分解が出来るメリットはありますが、なぜ最初から組立式にしなかったのか? この個体のようにリングナットが緩みやすいということです。針で動かすと簡単に緩んでしまいます。

分解するとこのようになります。幸い地板の孔の摩耗拡大(無給油で使い込まれた個体は拡大している)はありません。

 

 

保管が良くない個体ですのでプリズムのコーティングも心配でしたが、幸い大丈夫でした。

 

ハーフミラーは右の新品と交換します。34万台でこれだけメッキが飛んでいるのは珍しい。露出計が感度低下気味なので補正が出来るか心配です。

 

シャッターダイヤルの回転で1/8から1/4に回す時、少し抵抗感があるのはガバナーのギヤが切り替わっているからですが、この個体の場合は引っ掛かりが顕著です。工場で削ったり潰したりしてシャッタースピードを調整してあるカムの形状にガバナーレバーがスムーズに乗り上げて行かない感じですね。ここは削るわけには行きません。グリス塗布をしておきます。

組立はほぼ終了。これからピント調整などをして行きます。

 

 

今日の関東地方は蒸し暑くて画像を撮っての作業が出来ませんでした。セルフタイマーの作動を見ていますが、セルフレバーが若干お辞儀をしていますかね? 調整をしておきます。

 

1970年6月の製造と思われますが、私にして見たらつい最近でオートバイを乗り回していました。外観も悪くはないですが、唯一保管が良くなかった。それによって露出計は確実にダメージを受けます。この個体もかなりの感度補正を強いられました。では、後はリターンミラーの爆弾があるわけで・・

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次もメーターがぁローライ35の巻

2023年06月21日 13時30分00秒 | ブログ

続けてローライ35をやります。このドイツ製#3004XXXは露出メーターが動いていません。電池蓋も開かず工具を使って強引に開けてみると・・入ったままの電池が液漏れを起こしています。

 

トップカバーを外してみると。あぁ・・すごいことになっていますね。点検のところ、メーターは生きています。Cdsも反応はしますが針が0点に戻るのに時間がかかります。これは劣化の兆候ですが、電池の液漏れが原因ではなくドイツ製初期型に多くなっている症状です。

回路をやり直して作動を見ています。まぁ、このまま使うことにします。

 

 

電池の液漏れが原因で樹脂のメーター窓が曇っています。過去に再接着をされていて接着剤もはみ出していますので分離して研磨します。

 

裏蓋を外して点検していると、スプール部分からポロッと落ちて来ましたよ。

 

 

この部品は、168 カバープレートです。

 

 

かなりの確率で接着が外れている個体を見ますが、脱落して来るのは珍しいです。再接着をしたところ。

 

ドイツ製個体のアイビースですが、このように樹脂が溶けたように劣化をしているものが多いですね。材質は普通のABSだと思うのですが、ソフトケース内でスポンジのような材質と長期間接触をしたことによって樹脂が侵されたものかもしれません。

微妙に梨地が掛かったような表面なので、簡単にヤスリで削ってしまうと形状と印象が変わってしまうので、布に研磨剤が入った布ヤスリで軽く研磨をしておきます。

 

シャッター・レンズユニットを分解して行きます。この個体はft機ですからアメリカ向けに輸出されたものでしょうかね。

 

基本的には以後の仕様と変わりませんが、初期型はシャッター羽根を駆動するブレードリングの形状とそれを受ける後玉側の潤滑方法が異なります。

 

メンテナンスをしたユニットを本体に組み込みました。前玉を付けて無限調整をしておきます。距離リングはmを上側に組むのが国内のセオリーです。このリングの材質は溶剤に対して非常に弱い(溶ける)ですから分解時の溶剤使用は厳禁です。

組立完成でフィルムの巻上げテストをすると・・あら、カウンターが進みませんね。

 

 

カウンター盤の逆転を止める爪(ロッキングスプリング)が樹脂のため経時的に弓なりに変形してカウンター盤の逆転を止められなくなっているもの。

 

以後の生産ではロッキングスプリングの下に補助バネが入りますので、製作をして追加しておきます。

 

巻き上げレバーアテが欠けていましたので製作をして交換しておきました。これで完成ですね。初期型の特徴、圧板のバネ形状(複数あり)、スプール、それと内面塗装は艶消しプレーンです。

 

いろいろありましたが、基本的には非常に良い個体でした。初期型の整備済みが欲しい方はお勧めの個体です。

 

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完全O/H済らしいローライ35の巻

2023年06月20日 10時30分00秒 | ブログ

デパートの催事で完全オーバーホール済みとして購入されたローライ35ドイツ #3140XXXです。しかし、撮影をすると露出不足の真黒な写真になります。(プリント添付されました) 例によって点検をすると受光窓を指で塞いでもメーター針は中央から左に戻りません。みなさんはもうお分かりと思いますがCds不良ですね。

大人の事情で詳しくは書けませんが元の素材としては良いカメラのようです。しかし、レンズの汚れ、ヘリコイドグリスは劣化していてメンテナンスを受けたとは思えません。トップカバーを開けようとするとシボ革の一部がトップカバー側について切れていました。ということは分解は受けているということです。ローライ35では、トップカバーとシボ革が接着しているケースは稀にありますので分解された方のせいではありません。

このようなケースでは、本意ではありませんが現状で入手可能なCds素子に交換するしか手がありません。

 

Cds交換はユニットを分離して単体の状態で行います。すでに交換したところ。

 

 

針が左端まで戻るようになっています。

 

 

では、通常のメンテナンスをして行きますが、過去に分解をされた形跡は感じないけどなぁ? あくまでも私の感想です。

 

シャッターユニットもネジのスリ割りもきれいですので分解されていないようにも見えますね。沈胴の調整もしておきます。

 

構造的にチリが混入しやすいので汚れていたレンズを清掃したところ。

 

 

個体によってシャッターユニットの後ろに入っているシムの厚さは異なりますが、この個体は0.2mmのシムが3枚入っています。

 

沈胴チューブとシャッターユニットを組み立ててフィルムレールを取り付けます。

 

 

まぁ、オーバーホールの定義は人によって異なりますが「完全」は余計だったような気がしますね。

ブラックモデルについてはカバーの材質をお書きすることにします。この個体はアルミ製でした。

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極初期型? ローライ35の巻

2023年06月16日 20時00分00秒 | ブログ

少し間が空きました。じつはすごい個体を手掛けていまして手が離せなかったのです。メーカーの彫刻文字が入った極初期型と思います。シリアルはなんと#30008XX ですよ。しかも非常にきれいな個体です。あるところにはあるものですね。

一通りのO/Hはして行くのですが、問題があります。それは露出計が不動ということ。この頃の露出計はCdsが不良となっているものがありますが、そのような症状ではなく全く作動しない。点検をして行くと、あ~これかな? 電池室に無数のクラックが入っています。

トップカバーを分離して点検すると・・電池室の天井が抜けて盛り上がっていますね。初期の樹脂は劣化によって破損することがあるのか、或は規格外の厚みの厚い電池を入れて無理に電池蓋を閉めた? このような場合、接着をしても電池蓋のネジの力は強大ですので簡単に接着は外れてしまいます。

トップカバーとの間にスペーサーを入れて誤魔化しておく方法も考えましたが、大変貴重な極初期型ですので、ちゃんと直しておいた方が良いと考えました。幸い、メーターとCdsは生きていましたので、私物のストックから樹脂成形の本体を探して来ました。ただし、製造時期によって微妙にネジ規格の変更や形状の違いがありますので、それらを調整して組んで行く必要があります。当時のローライSSでしたら問答無用でユニット交換ですね。しかし、それが出来ないので作るしかありません。

電気接点や半固定抵抗を取付けて行きます。

 

 

右が今回の個体に付いていたメーターユニット。左の後のものと微妙に仕様が変わっています。

 

メーターカバーは本体と位置決め凸が合わないため後期のものを使いました。追伸針を動かすリンケージの力が掛かるので、カバーの固定は完全でなければなりません。

 

作動テストをしてみます。正常に作動します。では、他のメンテナンスを終えた本体に組み込んで行きます。

 

梅雨の晴れ間で蒸し暑くなって来ましたね。我が家の買い物専用の軽がエアコンが利かなくなっていたので冷媒ガスとオイルのチャージ作業をしていました。2シーズンはもったのですが、ガス漏れはスズキがリコールもしているようですから持病で減ったら入れるで使うしかないですね。お陰で先ほどのスーパー買い出しは快適でした。

で、露出計ユニットですが、製造時期によって細かな規格の変更などがありまして、細かくは書けませんが大人の事情でメーターのカバーはオリジナルの方に変更しました。ゼロ位置のオレンジ指標はガラスの分離の時に使う溶剤で必ず塗装が剥がれますので再塗装をしてあります。実際は画像よりは濃い色で調色をしてありますが、市販品なら国電中央線の101系、朱色4号パーミリオンオレンジがほぼそのまま使えるでしょう。

mzn.to/3CMHkMW

 

沈胴の摺動フィーリングが良くないので分解をして行くと・・あっ、フェルトが剥がれないよ。

 

 

以前にも記憶がありますが、極初期型はフェルトとスペーサーを接着してあるようです。なんでこんなに難しい組立をするのだろう。貼って組み立てたフィーリングが製品規格に達しない時はまた剥がすの? 前回の時にも書きましたが、この部分は内燃機関のピストンとピストンリングの関係に似ていて、ピストンリングが固着すると圧縮漏れが起きるように、フェルトが自由に動けないと長期的に見た時、摺動フィーリングが維持できないのではないかと思います。それで、以後の組立では接着しないようになったのかな? 知らんけど・・さて、フェルトに接着剤が付いていて溶剤で溶けにくいので再使用が出来るか? また問題が・・

この個体は過去に分解歴がありますが、シャッターやレンズは分解されていませんね。ヘリコイドグリスは組立時のままで完全に酸化しています。レンズも汚れが多いですが、カビは無く保管は悪くなかったようです。

 

内部は極初期型の眺めです。各部品は以後の個体と微妙に異なります。

 

 

メーターのオレンジ塗装と針の動き。シリアル№がすごい。

 

 

極初期型の中でも外観にキズが無く良いコンディションの個体です。沈胴もスムーズでレンズの回転もダンパーが利くように組みました。私も欲しい個体でした。

 

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同時期のPEN-Wの巻

2023年06月13日 17時00分00秒 | ブログ

次もPEN-W #1105XXなんですけどね。PEN-Wの生産は第18回東京オリンピックが開催(39年10月10日)されている前後に集中して生産された傾向があるのですが、この個体はコパルでのシャッター生産、昭和40年1月でオリンパスでのカメラ生産は1965年1月です。前回の個体は#1128XXで1964年12月でしたね。シリアル№はある範囲で前後することもありますし、トップカバーが製造途中で不良となった場合は欠番もあります。この個体もシャッターリングと距離リングの状態は良好ですから、それほど悪いところは無いのではと予想します。

過去に分解歴はありますが、オーナーさんからは「ファインダーが一番気になる」とのことです。見たところ途中で清掃はされていますが、フレーム枠に光線漏れがあります。乱暴に拭かれたのかもしれません。

 

駒数盤が正規の位置になっていません。トップカバー側面の調整ワッシャーが例によって無くなっています。(接着痕) 工場の組立は当然金型を直してくれと技術屋さんに言っているはずですが、組立をしていた私の経験では、技術屋さんは金型は中々修正はしたがりません。お金が掛かるからです。そのしわ寄せが組立に来ます。

分解清掃はしたのでしょうけど、本来エポキシで接着をするところをゴム系で汚らしくやってますね。フレーム枠の中央を遮光のために茶の塗料を塗ってあります。工場ではこのようなことはしませんので途中で傷つけたので修正をしたのでしょう。しかし、完全には遮光出来ていません。

ヘリコイドリングの分解時に傷を付けています。

 

 

作業は前回と一緒なので飛ばします。洗浄をした本体にオーバーホールをしたシャッターユニットを取り付けてあります。このコロは無くしている個体もあります。チャージ不良になります。

 

前回の個体ではの部分に赤がありましたが、こちらがオリジナルです。

 

 

フレーム枠はPEN-Sとはフレームサイズが異なりますので流用出来ませんので補修して使います。フレーム枠には製造時期によって製法がフィルム貼りタイプと蒸着タイプがあり、この個体は蒸着タイプです。

 

補修をしたフレーム枠の取付と対物レンズと保護ガラスをアラルダイト接着しました。

 

 

シャッターリング等のメッキの状態という私の理論が、ほぼ当てはまっていてレンズの状態はバルサム黄変も少なく、「PEN-Wとしては」悪くはありません。過去にも清掃を受けていますが再清掃をしておきます。

 

相変わらずPEN-Wの人気は高いですね。それと、みなさんから「PEN-W用フード」の再生産をご要望頂くのですが、問題は数が出ないのとコストなんですね。

 

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