これは在庫のPEN-Fですが、O/Hをするついでにグレー色にしてみようかと作業を始めました。先日やりましたペングレーより少し青味が強い色に調色してみましたが、ドイツのルフトワッヘン(空軍)のような黒味の強いグレーとも異なる陸軍の機械化部隊の戦車などの車両に塗られていたジャーマングレーという感じですかね。意識的に明度は上げて軽快に見えるようにしました。取りあえず本体メカを仕上げるためにダイカストと小間物を塗ってあります。どのように仕上がるのかは分かりませんが、まずまずの仕上がりとなりましたらご希望の方があればお譲りします。
PEN-FはFTよりも部品の設計変更が頻繁に行われていますが、これは全く新しい機構を採用した機械には良くあることです。特にこの#1129XX辺りは組立ては試行錯誤で、そのまま組んでも良品とならない頃の製品ですから、それから45年も使い続けて消耗したメカを調子よく作動させることには難儀します。この個体は過去に受けた修理も怪しいもので、巻上げが異常に重いと感じて、シャッターのテンションを確認してみると、案の定強く張られています。バネ力を強くすれば動くとの発想でしょう。それで治れば苦労は無いのです。ブレーキのOリングと全反射ミラーは新品と交換してあります。外装カバー類のメッキの剥離をしました。レリーズ横の段付き部分には真鍮が酸化して色が変わっている部分がありますね。梨地クロームの上からでは僅かなメッキの劣化に見えても、素材の内部まで腐食は進んでいるのです。
PEN-S 3.5の後期について書きましたが、2.8の後期だって同じなのですよ。この個体は#4535XXで1968-8月製ですがトップカバー横ビスは+で、シャツターは画像のようにハウジングは黒アルマイト、接点は改良型となっています。しかし、内部の部品に未だ変更はありません。シャッターユニットの仕様変更は全て同時に行われたわけではなく、その都度の変更であったことが分かります。前回のPEN-S 3.5の製造が44.7と記載されていますので1969-7月製(表記の仕方も変化しているのが興味深い)ですから、シャッターユニットの大きな仕様変更は概ね1968年の後半から翌年1969年の前半であったようです。
製造が新しいこともあってPEN-S 2.8としては疲労も少なく、コンディションは良いですね。中々これだけの個体は見つかりません。過去に分解を受けており、シャッターもO/Hをされていますが、非常にまじめできれいな作業ではありますが、ちょっとダメなんだな。何故かファインダーは全く手付かずで対物レンズが曇っています。なぜ清掃しなかったんだろう? 分解するとミラーや接眼レンズの接着が剥れています。この個体は裏蓋のシボ革も剥離ぎみでしたので、後期の製造ではあまり丁寧な作業がなされなかったのかなぁ? とか思います。なぜって、私も製品のシボ革を貼っていた経験がありますが、当時の貼り方は予めシボ革裏面に塗布されているゴム糊(乾燥状態)をケトンを筆で塗布して戻しながらジュラコン棒でゴシゴシしごいて圧着させていく作業で、これが個人差が出るんですね。私も下手ではなかったと思いますが、熟練した女性作業者には敵いませんでした。
PEN-S 3.5と同じ角度から写して見ます。ご覧のようにトップカバー横ビスは+です。ピントリングをよく見てください。従来は白で色入れを施されていた彫刻文字が彫刻されたままで色が入っていませんね。何となく印象が変わって見えます。これも工数節減のための省略なのでしょう。まぁ、どちらにしても、ファインダーのリンクル塗装にも剥離の無い、すばらしいコンディションの個体です。
少し前にやりましたけど、またPEN-S3.5が来ました。#1852XXと1969-7月の製造ですから後期の頃の製品です。シャッターが不調との事で、ちょつとイナな予感がします。この頃になるとPEN-S2.8から通して来たシャッターユニットに数々の変更が加えられています。画像はすでにO/Hを終えているユニットですが、見て分かる変更は外側のハウジングの黒アルマイト化や接点端子の改良などに気がつきますが、シャッター羽根を制御する部品にも改良(悪?)があって、組立ての容易さと性能の安定を狙ったと思われますが、それは新しい頃だけのことです。今となってはそれが災いとなって、部品が消耗するとO/Hだけでは性能を回復できない状況になります。この個体は、消耗が少な目でしたので今回は事なきを得ていますが・・この他、駒数ギヤの樹脂化など、コストダウンも進んでいる個体です。
シャッターリングには残念ながら腐食が認められます。腐食は深く緑青が噴いていますね。きれいに削り取ってから組み込みます。
この頃の識別点としては、トップカバー横を留めているビスが+になっていることです。昔、私がO/Hをした3.5を販売したことがありましてね。その時「ペンSのビスはすり割り(-)でトミーさんともあろう人がこんなビスを付けるとは」とクレームを頂いたことがありました。お生憎様。残念ですが、3.5の途中からは+ビスで正解なのです。ご自身の知識に自信をお持ちのマニアさんかと思いますが、すみませんが私の方がはるかに多くの個体を見て来ているのです。過去に修理をした個体の特徴は全てノートに記録しています。米谷さんも「そんな資料はオリンパスにもないよ」と言っておられました。それは公開できませんが・・・
過去にO/HをしたPEN-FT(B)がストロボの発光不調で帰って来ました。経験的にシンクロ接片の金属疲労による折れや曲がりを疑って交換をしておいたのですが、症状が再発したとのこと。「発光せずにストロボのコネクターをソケットから引き抜こうとすると発光した」とのことからソケットの接触を疑い点検をすると・・・
ソケットは中心の電極部を絶縁するための樹脂部品を画像のように菊座形にカシメて組立てられています。これが長い間の使用によるストレスで緩みグラグラの状態になっています。これにより、ストロボのソケットが外周に接触したため発光しなかったものですね。今回は再カシメと接着剤による補強をしておきますが、一度緩んだカシメ部の金属は、緩みやすいものですので、再発した場合は交換ということになります。
修正を終えて組立てています。ピンセットで銜えている部分のガタは無くなっています。ストロボのソケットを接続する場合は、丁寧に真っ直ぐ抜き差しするようにしてください。ソケットのコードを引っ張るような横方向の力を加えますと容易にカシメは緩んでしまいます。色が抜けていた●マークは色を入れておきます。