外観は、そこそこきれいな後期型のPEN-FT(B) #3445XXですよ。しかし、作動はロック状態で不動です。巻上げも出来ません。画像を見て頂くとセルフタイマーが途中で止まっていますね。みなさん、カメラが急に故障をすると、何故かセルフタイマーを巻いてしまうという癖があるんですね。このカメラは、巻上げが途中の状態でセルフタイマーを巻いてしまうと、両方が衝突して、ニッチモサッチモ動かなくなりますので厳禁です。
まぁ、その状態は応急で復帰をさせますが、故障をした原因は残っているわけです。底部を見ると・・なんじゃこれ? バネカケの角度が逆。スライディングロットのEリングが変。リード線の被覆を破ってテープで絶縁。
正規のEリングを紛失して大きなEリングを無理に縮めて着けた。折れちゃったけど・・
もちろん分解歴はあるわけですけど、かと言ってやるべきことはしていないという感じ。シンクロソケットのリード線をやり直している・・
カギバネを接着してありますが、この流儀の修理を良く見ますね。私は反対なのでオリジナル通りに分離しておきます。
画像では良く写りませんが、シャッターユニットがモリブデングリスでベトベトになっています。
リード線をテープで留めるのは正規ではありません。
では、ダイカスト本体を洗浄して組立をして行きます。
シャッターユニットを分解検証します。手前側からシャッター幕に押しキズがあります。これは前板を分離しなければ付けられないキズです。
ブレーキ軸のガタが異常に多いです。これでは正常な作動は出来ません。
34万台辺りからブレーキ軸はナットによる組立式になっています。これは、部品交換が出来ようにした設計変更ですが、代わってナットが緩むという新たな不具合を発生させることになりました。
シャッターユニット地板と部品を洗浄したところ。
ブレーキ軸を留めるナットのネジ山は二山しかないですね。硬質の緩み止めは塗布されているのですが、完全ではありません。
組み直したシャッターユニット。
本体に組み込んだところ。
作業中に誤って指や工具がシャッター幕に触れないように、すぐに裏蓋を取り付けておきます。
芯線が露出したリード線は新製しておきました。
ハーフミラーは劣化が認められますので新品と交換しました。
シャッターダイヤルや駒数ギヤなどにモリブデングリスが大量に塗布されていました。駒数ギヤ関係はごく一部を除いて注油はしません。粘りの原因。
あぁ、この個体は海外からの里帰り機だったんですね。トップ部分に打痕がありますので修正をしておきます。
結局、シャッターユニット以外にもミラーユニットの動きが良くありませんでしたね。複合的な要因が重なって故障となったものでしょう。ピント調整と露出計調整をします。
スライディングロッドのEリングは新品を付けました。正規の平和な眺めに戻りました。
フレネルのモルト貼りとリターンミラーの清掃をして作業終了かなと思いましたが、絞りのスライダー上部の剥げが気になりますね。
ちょっとタッチアップをしておきました。シゲジケ見る人も居ないでしょう。
本体は良いブラックになりましたよ。付属の20mm。少々曇りがあるんですね。今日は腰が痛いのでここまで。明日の作業です。
20mmは後玉のカビが目立ちます。コーティングを侵していなければ良いのですが・・
コーティングを痛めないように細心の注意をして清掃しました。まぁ、なんとか大丈夫かと・・
このレンズは右端レンズの内面が曇る持病がありますが、清掃できれいになりました。もしかして、この個体はカメラ本体とセットのレンズとすると、海外にあったために劣化を免れたのかも知れませんね。
変な分解も受けていてひどい状態でしたが、決して素性は悪くはない個体と分かっていました。トップカバーの凹みも殆ど気になりません。巻上げもスムーズで作動も良好な素晴らしいブラックモデルになりました。1970年3月製の個体。
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