大阪のご常連さんから何やら2台のPEN-F が来ています。この個体は#2421XXと1965-11月製で、もう1台は#2481XXと1965-12月製で、本当に兄弟ですね。まずは、通常のO/Hで行けそうな方から掛かります。この個体はフリマで入手されて、お友達がメンテをされたものを使用されていたとのこと。じゃあ、あまり辛口では書けませんね。ご覧のように、見える部分のモルトは交換されていますが、ファインダー本体のモルトは手付かずです。と言うか、分解していないのでしょう。とフォローをしておく。
底蓋を分離してみると、ほらね。ボトムキャップが取れているでしょ。このトラブルは非常に多いのです。みなさんも確認してください。まぁ、底蓋で押えられていますので、光線漏れはないと思いますが、フィルムの直下なのでちょっといやです。
この個体はシボ革は過去に剥離された形跡はないようですけど、何やら貼ってありますよ。この部分の前板の仕上がりに「引け」があって、かなりへこんでいます。それを修正するために専用のスペーサーを貼っていたようです。46年ぶりにばれてしまいましたね。もっとも、FTになっても、この傾向は治らなくて、黒のビニールテープが貼ってある個体が多くあります。とても精密機械じゃありません。
分解を始めたときから、水油の臭いがしていたのですが、駒数板下のギヤには過多の水油が付着していますね。お友達がされたのでしょうけど、カメラに水油はダメですよ。
しかし、その他は特に問題はないようです。PEN-Fで問題になるブレーキの利きですが、画像のブレーキリングを動かしてみることによってOリングの摩擦があるか分かります。珍しく、この個体はブレーキは利いていますね。予防的に交換しておく選択もありますが、2台来ていますので、なるべく修理費用を抑えるため交換はしません。
プリズムには少し腐食が出始めています。全反射ミラーは目視では、見にくい腐食はなく、過去の拭き上げのすり傷程度ですので、こちらも再使用としました。まぁ、古いミラーなので反射率は落ちているのですけど、プリズムも完全ではないので・・最後にターミナル接片の半田付けが剥離していましたので、再半田付けをして完成です。フリマで入手の個体としては良かったのではないですかね。
じゃ、2台目ね。この個体はオーナーさんがうちに来られるようになる前に同じ修理屋さんに2回修理に出されているそうです。上下カバーを外して点検してみると・・・プロの作業ですからやることはやってありますが、気になるのは、ネジというネジに緩み止め目的でエポキシ接着剤を塗布されていることです。ネジロックと接着剤は似て非なるもので、全く用途が違います。カメラは人間の寿命より長く生きて行けるわけで、次に修理をする人の手間も考えて作業をしなければなりません。少なくとも、私はそのように考えて作業をしているつもりです。その他、↑のカバーは剥離時に塗装が痛んだと見えて筆塗りで補修塗装をされているのが気になります。
このように、ネジのスリ割り溝にも接着剤が入り込んでいます。ネジロックであれば溶かすことは可能ですが、エポキシですからどうにもなりません。スリ割り溝の接着剤を1本ずつ掘り出して緩めるしかありません。時間も掛かるしネジも痛んでしまいます。
一台目の個体と殆ど製造時期が違わないのに、この個体のブレーキは全く抵抗感(ダンパー)がありませんね。これはやり直さなければならないでしょう。
あらら、ブレーキのOリングが七角形にカットされています。これでは殆どブレーキの機能は果していませんが、問題は、工場から出た後の加工なのかです。じつは、この手の加工をされているOリングを多数見ます。Oリングが劣化すると作動に不都合が出ますので、後天的に修理屋さんで加工されているものか、或いは工場で行った加工なのか? それはないのではと思いますが、これ以外にも色々な加工方法があって、明らかに工場での加工と思われるものもあります。このブレーキについては、構造的に無調整で組むことは難しかったであろうと想像します。
で、ブレーキを含めてメンテナンスの完了したシャッターユニット。下が交換したOリングです。七(八?)角形の頂点でしかリングに接しないので、これでブレーキ効果があるとは思えませんね。
では、本体を組立てて行きますよ。おっと、ダイカストの巻上げレバー部分と裏蓋の蝶番が何やら色が違いますね。これは、ご常連さんのお気に入りの仕様です。
ロックキー側のカバーもグレー色に塗装をしてロックキー、巻き戻し軸受にグリスを塗布して組立ててあります。
過去にプリズムは分解清掃されています。こちらのプリズムは腐食は発生していませんね。殆ど同時期の生産ですが、保存上の違いでしょうか。
組立てはほぼ終了。接眼枠の片方のラグが折れていましたので接着をして使用しました。巻上げもスムーズで調子は良好です。シャッター幕保護のため、シボ革を貼っていない裏蓋を取り付けています。
上下カバーとシボ革を貼って完成しています。「PEN-F系をペングレー色に」とはどなたでも考えつくアイディアですが、実際にやってみますとこれが簡単ではありません。F系の場合は、前面にグレーの塗装部分がありませんので、グレーのシボ革だけではボケた感じとなってしまうのです。
裏側はこんな感じ。裏側には巻上げレバー下と裏蓋にグレーの部分がありますから、意外に違和感はないでしょ。しかし、コンパクトのEE系のグレーですとサイズが大きい分ボケぎみとなります。そこで、本体とシボ革共、三光ペンの色に近い仕様としてあります。三光ペンはEE系に比べて色が濃いのです。まぁ、全てのPENをコレクションされている方が、バリエーションとして持ってみたいという仕様ではあります。作る方は意外に手間が掛かるのですけど・・・