今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

保証なしのPEN-F+レンズの巻

2016年07月14日 23時02分46秒 | ブログ

すみません、蒸し暑いのでサボりました。保証なしで購入して来たPEN-F #1577XX(1965-1月製)とF用38mm、FT用100mmです。保証なしの割にはFは素性は悪くないと見ました。レンズは汚れとお約束のヘリコイドガタがあります。

過去にプロの修理を受けていますけど、シャッターには手を付けていないですね。作動は問題ありませんが、巻き上げがギグシャグしているようです。

 

いつものように全て分解洗浄をして組み立てて行きます。あまり疲労はしていない個体ですよ。

 

スプールギヤを取り付ける時は下のロアーギヤを工具で傷つけないように注意が必要です。カニ目孔とギヤ歯が干渉するまずい設計。

 

ブレーキはゴム製のOリングが劣化をして利いていない状態です。特に固着(利きすぎる)をして悪さをしているわけではありませんので、このままでも問題はありませんが、オーナーさんのご希望で交換することにします。

 

 で、交換して組み上げたシャッターユニットを本体に取り付けました。

 

 

 何故かFTになると発生しないのですが、Fのプリズムには黒点の腐食が発生します。この個体はかなり軽微な方で、保管は比較的良好だったと推測します。

 

全反射ミラーは反射率の問題はありますが、きれいですので再使用としました。

 

 

組立が終わった底部。レリーズの作動を伝えるレリーズレバーは変更前のタイプで、バーで突くタイプ。変更後はFTと同様なG型の連結型となります。バーの長さ(クリアランス)調整はペンチ状の工具で潰してバーを長く伸ばす原始的?な方法。組立現場では調整に工数が掛かったでしょうね。それによって、ネジで長さを調整できるように変更したものでしょう。

最後にフィルムカウンターを取付けて完成です。

 

 

つぎはレンズです。標準のF用38mmですが、F用としてはレンズの状態は悪くはありませんね。しかし、ヘリコイドグリスが流化してヘリコイドガタや絞り羽根に付着して作動不良になっているというメカニズム?です。これは分解洗浄をして新しいグリスに入れ換えるしか方法はないのですね。

特に38mm、40mmなどはヘリコイドのガイドが摩耗をして、それがガタの原因にもなっている。42mmなどでは、ガイドを180度対角に2つ配置することによって精度と耐久性を上げていますね。

 

こちらはFT用の100mmです、こちらもヘリコイドガタがありますが、このレンズもカビが多いレンズです。

 

前群を分離します。絞り羽根に流化したヘリコイドグリスが付着。

 

 

このレンズは決まってこの後玉にカビが生えますね。絞り羽根の洗浄もありますから全て分離します。

 

でも、清掃すると比較的きれいに落ちるのもこのレンズ。25mmのような性悪ではありません。

 

全て洗浄組立をして完成。ガタも止まりました。このレンズはサイズ的にも手ごろで使いやすいレンズですね。私も持ってます。

 

ということで、今回は大きな問題も無く、特にカメラ本体は保証なしどころか「当たり」の個体だったと思いますね。オーナーさんは目利きだと思います。

 

 


平均的なコンディションだねPEN-FT(B)の巻

2016年07月04日 19時00分28秒 | ブログ

日曜日は梅雨が明けたのかと思うような暑い日でした。しばらく面倒を見てやれなかったFS1を走らせました。そろそろガソリンが腐る頃なのでね。混合したオイルが変質したのか、中速で失火傾向となり、キャブの分解かなぁ?と思いながらも、回転を上げ行くと何とか吹き上がるようになりました。早速、ガソリンスタンドへ寄って、新鮮なハイオクを入れてやりました。おかげで、ウォーキングが出来ず、脚の症状が悪化しました。ウォーキングと自転車トレーニング頑張らないと・・しかし、酷暑中はつらいですね。

で、ご常連さんがめでたくPEN-FTブラックを入手されたそうです。#3060XXと良い頃の個体ですね。巻上げのゴリツキはありますが、まぁまぁ標準的なコンディションの個体というところでしょうね。

 

お訴えとしては、セルフタイマーレバーの白が抜けているのとリターンミラー前に塗装剥離があるので何とかしてとのこと。

 

それより気になったのは、露出計の感度が高すぎること。過去に分解歴がありますが、チェックすると露出計とシャッターダイヤルの関係が正規になっていないようです。

 

ハーフミラーは30万台以降ですから、見難く腐食することは無いのですが、全体的な曇り(メッキの飛び)はありますね。使えない状態でもありませんが、どうするか・・

 

取りあえず、すべて分解をしてユニットの状態を確認して行きます。

 

 

保存環境が悪いと色入れの塗料は劣化し易いのです。これはやり直しておきます。

 

この時は特に問題のない個体だと思ったのですけどね。洗浄後に組み立てて行きます。

 

で、シャッターユニットですよ。私は、まずどの程度のテンションが掛かっているかをハンマーカムの動き(重さ)から感じ取りますが、「あれっ、30万台の後期型だよねぇ」明らかにテンションが弱い。ガバナーユニットを注視すると・・あ~騙された。これは初期型のユニットです。

メインスプリングが前期型ですね。前期型は22万台ぐらいまでですが・・

 

 

シャッター幕を留めているネジがスリ割(-)は初期型ですが、シャッター幕は極初期ではない。ガバナーユニットのタイプと勘案すると10万台の前中頃に使用されていたユニットです。過去に分解歴のある個体ですが、ユニットの入れ替えを受けていたということ。30万台のシャッターユニットを初期型のユニットに換装しなければならなかった事情はなんでしょう? 私なら30万台のユニットを治しますね。性能が違うのですよ。

 

 まぁ、仕方がない。幸い消耗をしていない良いユニットですから、このまま使用することにしてオーバーホールをしてあります。

 

しかし、一難去ってまた一難。ファインダーのピント調整ネジが緩んでいました。そこでリターンミラーを点検してみると・・このミラーは貼り直しをされていますね。隙間が空いていて、左側の隙間が広く、ミラーが倒れて接着をされています。ホルダー込みの厚みを計測してみると、左端は1.86mm、右端は1.73mmでした。その差0.13mmはピントに影響します。

オリジナルのリターンミラーと比較します。違いが分かりますね。厚みは1.65mmです。

 

再接着剤の種類が分かりませんので、裏ワザで剥離をしました。

 

 

オリジナルの接着カスを取り除かないまま、別の接着剤で貼ったため、厚くなってしまったのですね。一連の作業はプロの作業だと思いますが、完全な作業となっていないのです。

 

 オーナーさんによると、この個体は都内の某有名中古屋さんで購入されたそうです。古いカメラですから仕入れ前からこの状態ということなのでしょう。剥離したミラーを観察すると、純正ではなく、汎用板から切り出したものですので板厚精度、反射率も考慮して当方のミラーと交換することにしました。スキッとしているでしょ。ホルダーに対してのミラー高さを比較してください。このわずかな差でピント調整が出来なくなるのです。

 完成した新しいリターンミラーとハーフミラーも新品と交換しています。露出計の感度校正とファインダーのピント調整をします。その他、セルフタイマーレバーのロックが掛からない状態です。これはクラッチのコロが正確に動かないためで、分解洗浄で再組立としています。

ユニット交換には理由があったはずですので個体数維持のためには仕方がないことだと思いますけど、同じFTと言っても製造時期によって「予告なく改良することがあります」や、図面公差の変更を受けている場合もありますので、せめて先祖返りではなく、後継互換(はメーカーは想定)でユニットを選択して欲しいと思いますけどね。タイマーレバーなどの色入れ補修をして完成です。1969-11月製造。

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コンディションが惜しいジョンブリアンの巻

2016年07月01日 21時13分46秒 | ブログ

おなじみ、遅れて来たペンマニアさんから。。頑張ってますね。今回はPENジョンブリアンですけど、惜しいことにコンディションはお世辞にも良くないですね。まぁ、希少なモデルですので、なるべく良いコンディションとなるように。こんなストラップも純正であったのかと思ったら、神戸の大成モータース? バイクのキー用ですかね。

とは言っても、消耗は少ない個体ですが、落としちゃったのと保管が悪かった。トップカバーのメッキも劣化をして艶がありません。

 

おぉ、珍しいフィルターが付いていますよ。kenkoのDELUXEってやつです

 

 

シュー下からファインダー横に掛けて腐食がはげしいです。

 

 

保管の悪かった個体は、どうしても距離、ピントリングの腐食が進んで行きます。

 

一番肝心なレンズですが、後玉はダメですね。

 

 

後玉のコーティングは曇り易いのですが、コーティングだけでなく、ガラスも食べてしまいます。取りあえず撮影が出来る程度には研磨をしてみましたが、ピントルーペで検出してみると・・白内障の画像ですね。程度の良いものに交換した方がよろしいです。本来は本体側に付いているヘリコイドネジ部が緩んで供回りしていたようです。ピント合わなかったでしょうね。

ファインダーの分解清掃。樹脂に対しての接着強度が弱いというよりは保証外の時間が経過をしたということ。指で触るとポロポロと取れてしまいます。

 

トップカバーのへこみのほどほど修正と各部分の洗浄を終えたところ。

 

 

 

2軸を組み立てて、先にオーバーホールをしておいたシャッターユニットを搭載します。シャッターは錆びも無く良好です。ターミナルの半田付けをしておきます。

 

ちょっと問題発生。距離リング(カム板)が滑らかに動かないのです。

 

 

原因はこの腐食。鉄ではないので赤錆ではないのですが、トップカバーのシュー部から流れた液体が激しく腐食させているのです。猫がおしっこでも掛けたのでしょうかね?

 

問題のシューの裏側。すべてはここから始まった腐食です。

 

 

片耳の吊環が曲がって取り付きます。これは、元々調整用の鋼ワッシャーが入っていたものを、何度も分解を受けている時に紛失して来たのです。

 

ネジの力は強大で、真鍮などのワッシャーでは潰されてしまって用をなしません。鋼材のワッシャーを使いますが、あいにく吊環の外径ピッタリのワッシャーがありませんので、少し小さめですが・・

 

トップカバー角はほどほど修正。シューの裏側も腐食していますね。これだけ強力に腐食させる何かの液体が掛かったものと思います。

 

洗浄後、内部と裏蓋は新品のようにきれいなのですけどね。

 

 

まぁ、今回はこの状態で留めます。良好な部品の調達が出来次第、改善したいと思います。

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