昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (九) 青春恋愛か、なるほどね

2015-01-26 11:18:36 | 小説
喉にひりつきを覚えた彼は、
「悪かった。どうだい、ビールでも飲むかい?」
と、冷蔵庫を開けた。
「そうだった、ウィスキーを買ってきてたんだ」
吉田の差し出したウィスキーに、彼は少したじろいだ。
耀子のマンションで初飲みしたその翌日、二日酔いに悩まされた彼だった。

「いや、僕はビールでいいよ。どうもウィスキーは体質的に合わないみたいだ」
「そうか、慣れれば美味いんだがな。無理強いはやめておこうか。じゃ、ビールを貰おう」
お互い、喉の渇きは激しかった。
缶を口にした途端、まるで競争するように一缶を飲み干した。

「浅田助教授の元へは、もう行ってきた。笑われたよ、思いっきり。
報いだってさ、女どもの。確かに、さんざん遊んだからなあ。
言われたよ、青春恋愛だって。
『女性に追いかけられてきた男、数多の手を振りほどいてきた男。
今度は、逃げる女だ。
追えば追うほど逃げる、捕まえたと思ってもスルリとまた逃げる。
そんな女の経験はないだろう。
ホステス? そりゃ、君の負けだ』ってさ」

「青春恋愛か、なるほどね。言い得て妙だね。さすがに、文学部の助教授だね」
「こうも言われた。
『夜の顔しか知らんだろう。一家団欒? 海水浴? 
ハハハ、それでも、夜の顔しか見てないよ、君は。
その女性自身、夜の顔しか持っていないんじゃないかなあ。
君の知る女性たちとは、明らかに人種が違う。人生を知っているからね』
なあおい。夜の顔って、分かるかい」
「そ、そんなこと、僕に分かるわけないじゃないか」
「そりゃそうだ、恋愛オンチの君に分かるはずないか」


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