「タケくうん! 電話ですよー!」
階下から、彼を呼ぶ声がする。
「タケくん、木君からですよ…。あらま、また眠ってたの。さあ、起きてちょうだい!」
肩を揺すられて、彼は飛び起きた。
「あれえ? いつの間に寝てたんだろう、おかしいなあ」
「よく眠れるわねえ…さあさあ、電話に出てちょうだいな」
時計を見ると、八時を回っている。
窓の外は、いつの間にか漆黒の闇になっていた。
「もしもし」
「おーい! 寝るには早すぎるぜ」
「申し訳ない。つい、うとうとしちゃって」
「冬眠か? もう」
「いや、そんなんじゃないよ」
「どうだい、出てこないか? 忘年会もどきを、やってるんだよ。
この後、神社で新年を迎えようって、ことになってるし」
「そりゃ、いいね。すぐ、行くよ。で、どこ?」
「あゝ、俺ん家だよ。待ってるから、すぐに来いよ」
彼が受話器を置くと同時に、母親がダッフルコートとマフラーを彼に手渡した。
「気を付けて、行ってらっしゃい。
そうそう、鍵を持っていってね。夜だけは、鍵を掛けますから」
「じゃ、行ってきます」
「あっ、タケくん。
早苗ちゃんがね、初もうでに連れて行ってほしいって」
「わかりましたあ」
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