昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

心象風景 第二弾:ある時の彼 (七)

2010-05-13 19:54:55 | 小説
先ずもって、
どうしてもお話しておきたい。
決して誤解をしてもらいたくない、
ということである。
筆者は、
ある朝の偶然ともいうべき事件に遭遇した男を、
瞬可的に捉えてそれを報告しているのである。


(ダッチロール)

幸か不幸か、
電車が急停車した。
線路上にバスが止まっている。

市街地を走っている電車である。
しかもラッシュ時だ。

電車の前にも後ろにも車がギッシリである。
軌道上は通行不可なのだが、
ままあることである。

信号の停止待ち―
電車の運転手の不手際故の急ブレーキか、
もしくは通常のブレーキだったのかもしれないが、
不意をつかれた彼には急ブレーキとなったのである。

さあ大変なことになった。
大きく前につんのめった彼は、
いきおい元の姿勢に戻ろうとする。

そこへ電車の揺り戻し(というべきか)が重なり、
勢い余って彼の身体は全面的に女性に預けられた。

その女性にしてみれば、
全く予期せぬ事態である。
どう対処していいかわからない―
というより、
どうしょうもない。

唯々、
彼の周囲の状態が変わるのを待つだけだ。
彼も又どうすることもできない。

唯、彼の胸に、
女性の黄色いブラウスを介して、
ふっくらとした快いものを感じていた
(全く羨ましい、失礼!)。

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