昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (七十二) 新婚なのに…

2013-11-26 20:36:08 | 小説
(三)

“なによ。新婚なのに、武蔵ったら。ほんとなら、新婚旅行中の筈よ。
それを出張だなんて。そんなこと、ひと言も言ってなかったわ。

そうと分かっていれば、武蔵と一緒に帰ったわよ。
なにか、具合の悪いことでもあったのかしら。

うん、もう。どうして新婦が一人でお家に帰らなきゃいけないのよ! 
帰ってきたらとっちめてやらなきゃ。

でも、仕方ないかも…。散財させちゃったもの。
ほんとにスッカラカンになるまで使ってくれたものね。

だからよね、あんなに村中でお祝いしてくれたのよね”

柱に寄りかかりながら、今朝の出来事に思いを馳せ始めた。

“正三さんとお式を挙げたとしても、村中のお祝いがあるにせよ、これ程にはならないわよ。
なにせ子供たちが、あたしが帰るときには道端に並んで手を振ってくれたんだから。

うふふ。映画スターって、こんな感じなのかしら?
アーシアと一緒だと、いつもこんな風に歓迎され…。

ごめんね、アーシア。あなたのことを忘れたわけじゃないのよ。
毎晩、アーシアを思ってお祈りしてるのよ。忘れたわけじゃないんだから”


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