長編恋愛小説 ～ふたまわり・第一部～（八）の八

澄江が土間に降りたところで、
世話役連が問いかけた。
「で、どうするんじゃ？
赤ん坊は。」
「そんなもん、
決まっとります。
堕ろさせますわ、
すぐにも。」
「うんうん、
そうじゃろうのぉ。」
「澄江ちゃんは、
納得しとるんかい？」
「いやそれはまだ・・」
「やっぱり、
話はしとらんのかぁ・・」

「まぁ、この先、
子持ちではのぉ・・」
「後妻の口なら何とかとも思うが、
子持ちとなると中々に・・」
「いやいや、
澄江は我が家におらせますんで。
嫁に出すつもりは、
ありませんて。」
「じゃちゅうて、
そんなことは・・」
「そりゃあ、
料簡ちがいぞ。
茂作さぁの方が、
先に逝っちまうだろうに。
残された澄江ちゃんはどうなる？」
「行かず後家の末路は、
惨めぞ。」
「そりゃ・・・」
黙ってしまった茂作に、
世話役連は呆れ顔を見せた。