昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(三十六)の九と十

2012-05-19 19:31:49 | 小説



その夜、正三は叔父である源之助の前で小さくなっていた。
背筋をピンと伸ばしての正座を余儀なくされていた。

「正三。今日、役所を欠勤んだそうだな。
それも、無断欠勤だ。」
「はい、申し訳ありません。」
「まあ、いい。今さら怒っても仕方がない。
二度としないことだな。」
「はい、決して。」

「で、どうだ?昨夜は楽しかったか。
三人で、どんちゃん騒ぎをしたそうじゃないか。」
身構える正三に対し、源之助は相好を崩していた。
葉巻の煙をゆったりとくゆらせた。

「申し訳ありません、叔父さんのお名前を使わせていただきました。」
体を硬直させながら、ソファからから立ち上がって直立不動になった。






「構わんさ。いいことじゃないか、うん。
あの二人はな、これからお前の手足となって働いてくれるだろう。
どんどん飲ませなさい。
私の名前を使って、どんどん遊ばせなさい。

しかしだ、正三。お前は気を付けなくちゃいかんぞ。
酒もいい、女もいい。
しっかり遊べ、飲め。
しかし、飲まれちゃいかん。
酒で失敗した例は、多々あるんだ。」

「はいっ、心致します。」
顔面が蒼白になった正三だった。
“昨夜の女のこと、ばれているのだろうか?”と、気が気ではなかった。


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