昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (六) 今度逢える時には

2014-12-04 08:34:41 | 小説
「ごめんね。覚悟は出来ていたつもりなのに。…ごめんね。今度逢える時には、きっと」
真理子の声が、途中から涙声に変わった。
彼はゆっくりと起きあがると、ベッドの上で正座をした。

”無理強いは、だめ! 心に、深い傷痕が残るのよ”

ユミからの教えを実践できなかった彼は、今更ながら後悔していた。
ユミの声が彼の頭の中で、何度も繰り返された。

「僕の方こそ、ごめんよ。強引すぎた。いいんだ、無理しなくても」
真理子を正視できない彼は、うなだれたまま答えた。

彼の横に座った真理子は、頭を彼の肩に預けた。
彼への想いが、より強まるのを感じた。

“御手洗真理子、、、ミタライマリコ、、、ふふふ”

彼は真理子の頭に頬を付け、髪からの甘い香りに酔いしれた。
そして膝の上で結んでいる真理子の手を、そっと握った。

「今度は、いつ帰ってくるの?」
甘えるような真理子の声に、
「わかんない」と、彼はひと言返した。
「そう…」
力無い真理子の声に、彼は言葉を付け足したいと考えた。

しかし、嘘を付くようで躊躇われた。
唯、真理子の手を強く握るだけだった。
二人の鼓動が、早鐘のように高まった。
そして、どちらからともなく唇を合わせた。


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