(十二)
彼は横たわったまま、起き上がる力もなく答えた。脱力感が彼を襲い、腕すら動かない。
「面白い青年ね。でも、麗子さん、麗子さんって、何度言ったかしら?」
軽く指で彼の胸をつねりながら、ユミは彼の顔をのぞき込んだ。
笑い顔の中に、拗ねた表情を見せていた。ホステスとしての顔が、そこにあった。
「そうですか、すみません。片想いだったんです。相手の気まぐれなんですよ。
本当のところ、ぼくなんか相手にはしてもらえない女性なんです。気まぐれなんです、きっと」
掠れるような小声で、彼は目を閉じて答えた。又涙がこぼれそうになる気持ちを、グッとこらえながら。
「どんな女性? その麗子さんって。お姉さんに聞かせて」
彼の横に添い寝をしながら、ユミは彼にせがんだ。
「お役所の偉い方の娘さんです。大きな邸宅に住んでらして、デパートからのお届け物を届けているんです。
〇〇女子大生で、フランス語が上手なんです。
何度かデートをしてもらったんですが、この間『卒業したら結婚するの。』って…。
ぼくより二つぐらい上だと思うんですが」
消え入りそうな声だった。彼の耳に、スーッと一筋涙が流れた。ユミは彼の頭に腕を滑りこませると、
「悲しかったのね、その女性が好きだったのね。いいのよ、いいのよ」
と、胸に彼を抱き寄せた。
彼は横たわったまま、起き上がる力もなく答えた。脱力感が彼を襲い、腕すら動かない。
「面白い青年ね。でも、麗子さん、麗子さんって、何度言ったかしら?」
軽く指で彼の胸をつねりながら、ユミは彼の顔をのぞき込んだ。
笑い顔の中に、拗ねた表情を見せていた。ホステスとしての顔が、そこにあった。
「そうですか、すみません。片想いだったんです。相手の気まぐれなんですよ。
本当のところ、ぼくなんか相手にはしてもらえない女性なんです。気まぐれなんです、きっと」
掠れるような小声で、彼は目を閉じて答えた。又涙がこぼれそうになる気持ちを、グッとこらえながら。
「どんな女性? その麗子さんって。お姉さんに聞かせて」
彼の横に添い寝をしながら、ユミは彼にせがんだ。
「お役所の偉い方の娘さんです。大きな邸宅に住んでらして、デパートからのお届け物を届けているんです。
〇〇女子大生で、フランス語が上手なんです。
何度かデートをしてもらったんですが、この間『卒業したら結婚するの。』って…。
ぼくより二つぐらい上だと思うんですが」
消え入りそうな声だった。彼の耳に、スーッと一筋涙が流れた。ユミは彼の頭に腕を滑りこませると、
「悲しかったのね、その女性が好きだったのね。いいのよ、いいのよ」
と、胸に彼を抱き寄せた。
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