昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

「ブルー・ふらあめんこ」 ~蒼い情熱~ (一)

2009-11-22 16:24:57 | 小説
共感していただけるか、
はたまた、反感をもたれるか、・・・・・
時代背景や事象には、多分にフィクションを交えています。

ニヒリズムに取り憑かれていた頃に書き上げた作品です。
━━・━━・━━
(一)

ひっそりと静まり返ったこの舗道には、
少年の足音の他には何一つ物音が無かった。

ほの明るく照らし出す街灯の下には、
誰かを待っていたのだろうか、
タバコの吸い殻が五、六本捨てられている。

待ち人は来たのだろうか・・・。

今日も又、
星はまばたいている。

満月になりかけの月が、
その星のまばたきの中に
一人孤独だった。

その図体の大きさの故に、
星の中に溶け込みきらない。

しかしそれでも月は、
その大きさで以て、
その星全てを威圧していた
ーその通り!
まさに月を中心として星は流れていた。

少年はタバコを口の中に一杯吸い込んでは、
すぐに吐き出し、
又吸った。

舌にピリピリと刺激を感じ始めた頃には、
吸い込んだ煙の少しを肺にまで流し込み、
鼻から抜けさせた。

少年は、
たったそれだけの仕種に、
いかにも大人になった、
と感じた。

鈍いネオンサインの光を頭上に感じると、
少年のまわりには色々の音が生じ始めた。

しかし、
少年の耳に聞こえているものは何もない。

終始黙りこくり、
唯一つの扉に向かっていた。

慣れないネクタイの結び目を気にしつつ、
スーツの衿を正し、
そしてレインコートの衿も立て直した。

濃紺のスーツに、
黒の革靴ーしかしそれは、
磨きがいのない鈍い光沢だった。

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