昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

昭和の恋の物語り (一)

2012-11-17 17:58:28 | 小説
再掲載作品です。 (前タイトル:風よ、伝えて! ~恋のGT~)

昨年(平成23年)、市文芸祭に出品した作品です。
市長賞(二位)を頂きました。

審査員の方に、
「真理子ちゃんのお話がもう少し欲しかったですね。」
と言われました。

三十枚という制限の中では、どうしても書き切れませんでした。
で今回は、そのことも含めて少し書き足しました。

前タイトル:風よ、伝えて! ~恋のGT~
~~~~~~~~
(一)

午前八時二十分、始業時間十分前だ。
ラジカセから流れてくるラジオ体操の声に合わせて、皆が体を動かし始める。

ご苦労なこった、と思いつつ俺もだ。
まったくかったるい。


「おい、そこ。キビキビとやりなさい!」

ジョーダンじゃねぇぞ。
くそ、もう辞めてやる! 

俺は今、仕事に嫌気がさし始めているんだ。
何でかって、それは…。

一番の理由は、仕事で使う車が軽自動車だということだ。
出足・加速・クッション、全て最悪だ。
全く腹が立つ。

何だそんなことかなんて言われたくない。
ほぼ一日を車で過ごしてる身にもなってほしいぜ。
その上に、車の乗り方で会社の上役に小言を言われてもいるし。

「もう少しおとなしい運転をするように! 
お前だけガソリン代が多いじゃないか!」

交差点で隣の車が俺を煽るから、
ついつい『ゼロヨンスタート』の真似事をしてしまうせいなのだ。

もっとも他の者は、出足とか加速とかに興味がないらしい。
走れば良いという輩ばかりだ。

だからガソリンも喰わないし故障も少ない。
そのうちの一人が、嫌みたらしくこう言う。

「君がいくら頑張って走っても、信号というものがあるのだから大した差は出ないだろうに。
そんな無駄なことに神経をすり減らすより、もっと気楽に行こうよ。

それに、そんな無謀運転をするからポリスさんに切符を切られるんだよ。
反則金がもったいないし、免停にでもなったら大損じゃないか。」


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