昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(五十)の五と六

2012-11-18 12:11:39 | 小説
三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
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(五)

「助役だろうと誰だろうと、去ね。」
茂作の剣幕に押された役場の守、やむなく離れた。

茂作にしてみれば、五平の用向きが気になる。
小夜子をお嬢さまと呼ぶことが気に入らない。
茂作を小ばかにしているように感じられる。

“貧乏人だと見くびりよって! 
小夜子は、佐伯の本家に嫁ぐ身ぞ。

大身上の佐伯本家にじゃ。
馬鹿にすると承知せんぞ。”

先日に大見得を切った啖呵のことなど、ころりと忘れている茂作だ。

「それで、どんなご用ですか? 
わしも色々と忙しい身でしての。」
「こりゃ、失礼致しました。
本来なら媒酌人を立ててお伺いせねばならんのですが、
そういった堅苦しいことがとんと苦手でして。」

「ち、ちょっと待った! 
媒酌人とはどういうことか!」
寝耳に水のことに、怒りで手がぶるぶると震える。
「出てけえー! そんな話は聞きたくもないわ!」




(六)

「落ち着いてください、竹田さん。
悪い話ではありませんで。
小夜子お嬢さまも、ご納得されておりますし。」

「ばかたれぇ! 納得もなにも、あるもんか! 
小夜子は、小夜子は、わしの娘じゃ!」

怒り心頭に達している茂作に、五平のドスの利いた声が突き刺さる。
「竹田さんよ、そんな風に虚勢をはるものじゃないよ。
あんた、借金があるだろ?」

「い、いや、それは……」
思わず絶句する茂作。
五平を、その取り立てかと疑った茂作。
そこを突かれると、黙るしかない。

「その先物取引の借金をチャラにしたのは、御手洗なんだよ。」
「な、な、な……」
言葉が出ない茂作、思いも寄らぬことを告げられた。

「督促が、来なくなったろうが。
まだあるぜ、竹田さんよ。
毎月の仕送り、あれも御手洗だ。

小夜子お嬢さまはご存知ないことだがね。
御手洗のお陰で、三度三度のおまんまやら晩酌が出来てるんだ。」


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