昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十七)の一

2013-03-24 11:07:05 | 小説

(一)

久しぶりに車中から見る田畑、そして車中に流れ込む雑多な匂い。
懐かしさを覚える前に、嫌悪感を覚える小夜子だった。

「どうした?」

駅を降りてタクシーに乗り込んでから寡黙になった小夜子。
心なしか、顔も青ざめている。

「酔ったのか? 道が悪いからな。
運転手さん、停めてくれ。
外で空気を吸わせよう。」

「いや! このまま行って!」
小夜子の金切り声が車中に響いた。

「分かった、分かった。
それじゃこのまま行こう。

運転手さん、少し速度を落としてくれ。
ゆっくり走ってくれ。」

これほどに取り乱す小夜子を武蔵は知らない。
小夜子の金切り声など、初めて聞く。


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