(三)
大きく頭を振って否定する千勢。
どうしても知られたくないという思いが強い千勢だ。
「でも、誰か来た事はあるでしょ? たとえば、徳子さんとか」
「あ、それもありません。女子社員は、厳禁なんです。
絶対立ち入り禁止です。誤解を招く畏れがあるからと。
なにせ旦那さまの女性関係…。
とに角、一度もございません」
失言をしたと慌てる千勢。
しかし女子社員云々は、どうやら本当だろうと、頷く小夜子だ。
「でも、千勢が居ないときなんかは?」
わざと意地悪い質問をぶつけてみた。
「小夜子奥さまが居らっしゃるまでは、千勢が住み込んでおりましたから。
決してそのようなことはありませんでした」
「そう、そうなの。公私のけじめはきちんと付けてるのね。
武蔵らしいわね、確かに。でも、男子社員は良いんでしょ?」
本筋に入った。このことを聞き出すが為の、徳子の名前であった。
「はい。でも、竹田さんだけです。
あとは、加藤専務さんは度々お見えになりますが。他には、どなたもです」
千勢の口から竹田という名前が出た折にぽっと頬が赤らんだことを、小夜子は見逃さなかった。
と同時に、小夜子の胸の奥がざわついた。
小夜子すら殆ど気付かぬ程のものではあったが、途端に小夜子の機嫌が悪くなりもした。
「専務のことは言わないで! あたし、あの人嫌い!
武蔵が頼りにしてるみたいだから、仕方なく顔を合わせるけれど。
ほんとは顔も見たくないの。
だから今後一切、あたしの前では口にしないで!」
小夜子のあまりの剣幕に、青ざめた表情で頭をこすりつける千勢。
五平のことが遡上に乗ったためと、
「一切口に致しません、申し訳ございません」と平謝りをした。
大きく頭を振って否定する千勢。
どうしても知られたくないという思いが強い千勢だ。
「でも、誰か来た事はあるでしょ? たとえば、徳子さんとか」
「あ、それもありません。女子社員は、厳禁なんです。
絶対立ち入り禁止です。誤解を招く畏れがあるからと。
なにせ旦那さまの女性関係…。
とに角、一度もございません」
失言をしたと慌てる千勢。
しかし女子社員云々は、どうやら本当だろうと、頷く小夜子だ。
「でも、千勢が居ないときなんかは?」
わざと意地悪い質問をぶつけてみた。
「小夜子奥さまが居らっしゃるまでは、千勢が住み込んでおりましたから。
決してそのようなことはありませんでした」
「そう、そうなの。公私のけじめはきちんと付けてるのね。
武蔵らしいわね、確かに。でも、男子社員は良いんでしょ?」
本筋に入った。このことを聞き出すが為の、徳子の名前であった。
「はい。でも、竹田さんだけです。
あとは、加藤専務さんは度々お見えになりますが。他には、どなたもです」
千勢の口から竹田という名前が出た折にぽっと頬が赤らんだことを、小夜子は見逃さなかった。
と同時に、小夜子の胸の奥がざわついた。
小夜子すら殆ど気付かぬ程のものではあったが、途端に小夜子の機嫌が悪くなりもした。
「専務のことは言わないで! あたし、あの人嫌い!
武蔵が頼りにしてるみたいだから、仕方なく顔を合わせるけれど。
ほんとは顔も見たくないの。
だから今後一切、あたしの前では口にしないで!」
小夜子のあまりの剣幕に、青ざめた表情で頭をこすりつける千勢。
五平のことが遡上に乗ったためと、
「一切口に致しません、申し訳ございません」と平謝りをした。
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