昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十四)の五

2013-02-27 20:49:59 | 小説
(五)

「小夜子。明日、佐伯正三に会わせてやる。
いや、会って来い。会って自分の気持ちを確かめろ。

それで正三の元に行きたいと思えば、それも良し。
俺の、この武蔵の元に戻るも良し。

小夜子の意思に任せることにする。
俺も男だ。小夜子の意思を尊重してやる。

良いとも、良いとも。
婚礼家具も揃えてやろう。
何なら、持参金も持たせてやろう。」

驚きの色を隠せない小夜子に、普段以上に饒舌になった武蔵だ。

突き抜けるほどに晴れ渡った朝、約束の時間ぴったりにホテルに到着した。
運転手によって開けられたドアから降りる小夜子、凛として、ご令嬢然としていた。

うやうやしくドアマンがお辞儀をする。
重々しいドアが開けられて、ベルボーイが入り口で待っている。

「いらっしゃいませ。」
「ごきげんよう。」
とびきりの笑顔で答える小夜子だ。

アナスターシアと共に入ったホテル、思わず目頭が熱くなってくる。
知ってか知らずか、武蔵がセッティングしてくれた。
ホテル内のレストランを、予約してくれている。


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